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12.黒ローブ、そして地下監獄

 投稿が遅くなって申し訳ないです(-_-;) 


 ついでなんですが今日から二週間ほど投稿が止まります。理由はシンプルにテスト勉強のためですね。学生としてのクエストが終わり次第投稿を再開する予定です。(多分更新頻度は上がる、はず‥‥‥)

 アルカネルの中央に天高く聳え立つ王城の真下。


 地下一千メートルを超える深さに作られた地下監獄とは法を犯した者の中でも特に罪の内容が重い者、もしくは通常の牢獄では到底管理できないほど危険な人物を外界とは物理的に遮断するために作られた場所である。


 ここに投げ込まれたら最後、人としての一切の自由と尊厳は奪われ、排泄や入浴といった日常動作まで徹底的に管理される。


 その圧倒的な閉塞感により精神に異常をきたす者も少なくはなく、与えられるごく少量の食事と水が刻々と消えゆく命の灯火をじわじわと長引かせ、囚人に生かさず殺さずの苦痛を与える空間。それが地下監獄。


 そんな、陽光の欠片一つ届かない地下の最奥に構えられた独房。ミスリル製の格子とカビの生えた石壁で四面を覆われたその空間には一人の囚人が収監されていた。


 囚人の名は、ゼノン・グリフィス。


 かつては『王国の覇者』とまで呼ばれ、最強の名を欲しいままにした魔道士の一人。しかしそんな輝かしい栄光の城にヒビが入ったのは七年前。突如として発生した魔物進行(スタンピード)を迎え撃つために参戦したゼノンは戦いの最中に利き腕である右手を欠損。


 それでもなお戦い抜き、多くの味方を失いながらも王都に帰還した数少ない魔導士であったが、利き腕を失ったことで実力は最盛期の半分以下にまで激減。その後は砂城の如く崩れ去る栄光の玉座に何とかしがみ付こうと奮闘するも、すでに大衆の興味は次代の玉座の担い手へと移っており、凋落したゼノンに居場所などあろうはずもなかった。


 その後は鬱憤を晴らすかのように酒に溺れ、女に狂い、賭博で幾度となく財産をすり減らす日々。そこにはもはや『王国の覇者』とまで呼ばれていた男の姿はどこにも存在してはおらず、大衆の記憶からもゼノン・グリフィスという名前も栄光も完全に風化しきっていた。


 そんな中とうとう三年前。当時の王国建国祭にて『王家の紋章』を盗み入った大罪人へとその身を堕としたゼノンはこの地下監獄に投獄され、今なおその身をこの独房に拘束されていた。


「‥‥‥‥‥‥」


 薄雲がかかり、怪しげな月がぼんやりと浮かぶ夜。じめじめとした湿気とカビの臭いが漂う牢の中、特殊なワイヤー鋼線を何十にも編み込んだロープで両脚を椅子へと縛り付けられたゼノンの耳にカツン、カツン、と一定のリズムを刻んだ足音が届いた。


(看守の奴ら、じゃねぇな)


 その足音に、ゼノンはピクリと眉を揺らす。


 この地下監獄に収容されたゼノンが耳にする音といえば看守の見回りと他の囚人たちによる罵声や悲鳴、そして時たま聞こえてくる囚人たちの暴動の音ぐらいだ。


 だが、そのどれでもない。


 異質な足音はこちらに向かってくると、やがて、カツンカツンと鳴っていた足音はゼノンが収容されている牢の前でピタリと止まった。


「‥‥‥誰だ、テメェは?」


 胸元まで伸びきった無精ひげと、ぼさぼさで艶の失った金髪をザラリと揺らしながら視線を正面へと向ける。


 ここ数年、ろくに持ち上げていなかった首の骨はそれだけでズキズキと鈍い痛みを訴えてくるが、そんな痛みに眉を顰めることすらせず、ゼノンは鉄格子の先に佇む人物へと鋭い視線を浴びせかけた。


 目深に被った黒ローブはその人物の全身をすっぽりと覆っており、性別はおろか、素顔すら窺い知ることは出来ない。しかし僅かに覗く口元からは愉悦の感情がありありと滲みだしており、それがなおさらゼノンの神経を逆撫でた。


「おいおい悲しいなぁー、せっっかくこの俺様が昔のよしみで会いに来てやったっていうのによぉ」


「‥‥‥悪いが知らねぇな。テメェみてえな平気で人を裏切るような外道はよ」


「ああん? 言ってくれるじゃねぇか。三年前、みっともなく酒に溺れ、女に愛想尽かされた挙句、ついには国民(ゴミ)共にまで見捨てられた負け犬を拾ってやったのは誰だったけなぁ?」


「ハッ‥‥‥、随分と恩着せがましいじゃねぇか。そのせいで俺は今こんなざまになっちまったってのによ」


「そんな自業自得、俺様には関係ねぇよ」


 黒ローブの人物は吐き捨てるようにそう言うと、囚人服を身に纏っているゼノンを下から上に、そしてまた上から下へと舐めるように視線を巡らせる。


 囚人服の袖に包まれた左腕には魔力の流れを阻害することで魔法及び固有能力(スキル)の発動を妨害する拘束具が付けられている一方で、右腕を覆う袖に膨らみは存在せず、だらりと垂れ下がった黒白のボーダーがより一層痛ましさを助長していた。


 しかし黒ローブの感情は一ミリたりとも動かない。


「しっっっかし、まぁ、何とも惨めな有様だなぁ、おい。『王国の覇者』なんて呼ばれてた男が今や最底辺の監獄で汚い下っ端看守どもと駄弁るほかに能がなくなったっていうんだからよ。人生何があるかわかんねぇなぁ!!」


「‥‥‥言いたいことはそれだけか? ならさっさと失せろ。お前の顔を見てると反吐が出そうだぜ、この外道野郎が」


「クククッ、いいねぇ、その威勢は相変わらずで安心したぜ。だが俺様がここに来たのは何もテメェを笑いに来ただけじゃねぇ」


 黒ローブの言葉に、訝し気に眉を顰めるゼノン。


「今年の建国祭、再び『王家の紋章』が大衆(ゴミども)の目に曝されることになった。そこでだ、テメェには三年前と同様、その『王家の紋章』を盗み出して貰う」


「ハッ! 何を言いだすのかと思えば、テメェこそ見ないうちに随分と頭が腐ったみてえだな。この俺に二の舞を踏めって言うのかよ?」


「いや、今回の作戦は完璧だ。『王家の紋章』を盗み出す手はずはもちろん、警備隊の配置、構成、その他諸々含めて徹底的に調べ上げさせた。だからテメェが心配することなんざ何もありやしねぇ。俺様の言うことにさえ従っていりゃあ、何もかも上手く行くってわけだ」


「‥‥‥」

 

 言葉の端々からにじみ出る自信にゼノンは思わず押し黙る。確か三年前も似たようなことを言って失敗したはずだが‥‥‥。


 それでもなお目の前の黒ローブが自分の計略に絶対の自信をもっているのそれだけ念入りに準備を施したということなのだろうか。


「‥‥‥断る、と言ったら?」


「端からテメェに選択肢なんてねぇよ。負け犬なら犬らしく、ご主人様の言うことに従え」


「‥‥‥チッ」

 

 舌打ちを一つ零すゼノン。しかしそれを肯定と受け取ったのか、黒ローブの男が無造作に腕を軽く振るったその刹那──


 ──ギィィィィィン!!!

 

 ガラガラガラッ!! と金属が擦れあうけたたましい音を響かせながら、ミスリル製の格子がいとも容易く斬り落とされ独房に大きな穴を空ける。


 さらにまるで散歩でもするかのような足取りで独房の中へと足を踏み入れた黒ローブは、ゼノンの足と腕に巻き付いている拘束具も同様に断ち切り、ゼノンを椅子の上から解放した。


「ほらよ、これで晴れて自由の身ってわけだ。せいぜい役に立ってくれよ、()()()のためにな」


「‥‥‥」


 無言で応じたゼノンは解放されたばかりの足腰に力を込めるとゆっくりと立ち上がり、黒ローブと向かい合う。


「で? まずは何をすればいいんだ?」


「ククッ、そうだな。とりあえずは──」


「おいっ!! 誰だ貴様!!」


 突然背後から響いた鋭い声に、黒ローブとゼノンはピタリと動きを止めてそちらへと視線を向ける。


 そこにいたのは厳つい面相に鍛え抜かれた体つきをした看守が二人。おそらく先ほどの金属の騒音を聞いて駆けつけてきたのだろう。


「なっ!? 囚人番号46!! 貴様、どうやって拘束具を!? それにそこの黒ローブ、お前は誰だだ!! 答えろっ!!」

 

 看守の二人はゼノンの四肢を拘束していた拘束具が外されていることに気が付くと、即座に腰から杖を引き抜き、臨戦態勢を取る。


「おいおい、そんなに騒ぐなよ。今は真夜中だぜ? ご近所さんへの迷惑も考えろよ、なぁ?」


 黒ローブは余裕綽々といった様子で看守たちを挑発すると、ローブから覗く口元に怪しい笑みを零す。


「黙れ! 何者か知らんが、ここに立ち入った以上、生きて帰れると思うなよ? 我ら王国騎士団の一員として、貴様ら賊を成敗する!!」


「おぉ~怖い怖い。そんなに睨むなよ。思わずチビッちまいそうだ」


 黒ローブは手振りで看守たちを軽くあしらうと、ゼノンに視線を向ける。


「ってことで‥‥‥おい()『王国の覇者』さんよ。早速出番だぜ。あいつらをブッ殺せ」


「黙れ。俺は俺の為だけに動く。テメェらの指図は受けねぇ」


「ククッ、まぁそう言うなよ。これはあの日から続く()()()とお前のこの国への復讐だ。せいぜい楽しもうじゃねぇか」

 

 黒ローブの言葉にゼノンが答えることはなかった。しかし代わりにその口元に不敵な笑みが浮かべられたことを黒ローブは見逃さなかった。

 

 翌朝、地下監獄にて王国騎士団十数人分の遺体が見るも無惨な状態で見つかるという前代未聞の怪事件は、交代で巡回していた騎士団員によって発見された。 


 当然、執政院や王城内でも大きな騒ぎとなったのだか、直近に王国建国祭を控えていることから、厳重な情報統制が布かれ、事件の詳細が国民にまで行き渡ることはなかったという。

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