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1.白とピンク、そしてバイオレット

第三章始まりました~!!!

 レヴァリオン王国。それは五つの国で構成されている巨大な大陸、通称『レステル大陸』の中央に位置する大国であり、かつては軍事力という面において大陸最強を謳うほどの強大な王国であった。


 『かつて』、と枕詞が着く理由。それは今からおよそ七年前に突如として発生した魔物進行(スタンピード)によって王国内に存在していた半分以上の魔導士たちが、その命を散らしたことに起因していた。


 わずか一日で大陸最弱の国に成り下がったレヴァリオン王国。本来であれば周りの国々にあっという間に取り込まれてしまっていても何ら不思議ではないこの国が、七年前と変わらずに存在できている理由。それには主に二つの理由があった。


 一つ目は、レヴァリオン王国自体が歴史的に見ても非常に価値のある文献や建物、遺跡を多く保有しているということ。というのもレヴァリオン王国は千年前の大英雄『アレス』が生誕した大地であり、彼の残した数々の伝説が今も尚語り継がれ続けているのだ。

 

 そのおかげもあってかレヴァリオン王国は周辺諸国から非常に重宝されおり、この七年の間で他国に攻め入られたことは一度もなかった。

 

 そして二つ目の理由が、低迷していた軍事力の驚異的な回復力だ。いくらレヴァリオン王国が周辺諸国から重要視されていたとしても、それと軍事的脅威は別物だ。いつ、他国からの侵略があるか分からない以上、戦力の増強は急務である。そのことを理解していた王家は首都のアルカネルに、世界初の魔導士育成教育機関──『アルカネル魔導士士官学校』を設立させたのだ。


 王家の目論見は見事に功を奏し、現在では最盛期ほどではないにしても他国と比較しても十分すぎる程の軍事力を取り戻すまでに至っている。


 そんな栄光と衰退が目まぐるしく移り変わっていく大国の首都、アルカネル。その地にて一人の少年が、石畳で綺麗に舗装された道を駆け抜けていくのだった。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ふぅ‥‥‥」


 まだまだ、陽光が鋭く地面に落ちる明朝。日課である朝のトレーニングを終え、額に浮かんだ汗をトレニーングウェアの袖で拭った少年は肺から深い息を吐いた。


 この国では非常に珍しい黒眼黒髪に本人も少し気にしている童顔気味の顔つき。加えて同年代と比べても小柄で細身な体格もあいまってか、実年齢よりも一回りほど幼く見られがちなその少年──レイコルトは、視界に差し込んでくる柔らかい日差しを手で遮りながら、僅かに瞳を細めた。


「うーん、ちょっと張り切りすぎたかな?」


 誰に聞こえるわけでもなくそう独りごちるレイコルト。実はつい前日まで過度な運動や魔力の行使を禁止されていた身であり、こうして日課のトレーニングが再開できたのは実に五日ぶりなことである。その原因となったのが、ネウレアの樹海での一件。『アルカネル魔導士士官学校』の行事の一環としてネウレアの樹海を訪れたレイコルト達であったが、その場で未知の組織『魔王教団(ディルヴィア)』と遭遇。最終的には何とか奴らを退けることに成功したものの、その代償として魔力切れと出血多量のダブルパンチを貰ってしまい、数日間死線を彷徨うことになったのだ。


 意識を取り戻してからも数日間の絶対安静を余儀なく言い渡されたレイコルトであったが、つい前日、ようやく医師から完全回復の印を押してもらったことで、さっそくトレーニングに勤しんでいたというわけである。結果として、オーバーワークというほどのものでもないが、療養期間中に溜まっていた運動への欲求が、無意識のうちにレイコルトの体を過剰に駆り立てていたようだ。


「とりあえず今日はこのくらいにしておこうかな?」

 

 レイコルトは最後に大きく深呼吸すると、ゆっくりとした足取りで来た道を戻り始める。すっかり日も昇り、気温も上昇を始めているがそれでも心地よいと感じるほどに今日はいい朝だ。


 歩き始めること数分。居候させて貰っているセリーナフレイムハートの自宅に帰ってきたレイコルトは質素ながらも細かい部分まで手入れの行き届いた庭を抜け、玄関の扉を押し開ける。

 

 入ってすぐに見えるリビングを突っ切ってレイコルトが向かったのは浴室だ。流石に全身汗だくの状態で家の中を闊歩するのは少々(はばか)れるし、何より同居人が良しとしないだろう。


「うーっ、やっぱりちょっと無理しすぎたかなぁ?」


 遅れてやってきた筋肉の疲労感に軽く顔を顰めながら、脱衣所の扉を開けた途端──





「えっ──?」


「あ‥‥‥」


 まず、目に飛び込んできたのは白。陶磁器のようにキメ細かく滑らかな肌は、雪原に広がる新雪をありありと彷彿とさせ、思わず息を呑むほどに美しい。


 次に視界を彩ったのは、ピンク。女性の中でも比較的小柄といえる背丈とは対照的に、その存在を大きく主張する二つの果実は彼女に蠱惑的な魅力を付け加えており、否が応でもレイコルトの視線を釘つけにさせる。豊満な双丘を覆うのはレースがあしらわれたピンク色のの下着であり決して露出度が高いわけではないのだが、どこか背徳的な印象を与えるそのデザインは男の欲望を刺激して止まない。

 

 そして最後に視界に映り込んだのは、宝石のアメイジストを想起させるバイオレット色の瞳。普段からあまり感情を覗かせない彼女も流石にこの事態は予想外だったようで、その双眸は驚きと困惑に揺れている。どうやら目の前の少女は風呂から上がってきたばかりらしく、しっとりと濡れたサラサラな白髪や僅かに上気して桜色に染まった頬、さらには石鹸の清楚な香りがレイコルトの鼻孔を優しくくすぐり、脳内は一瞬でショートする。


 本来ならすぐにでも回れ右をして扉を閉めるべきなのだろうが、悲しい男の性かな。深い谷間に吸い込まれる水滴や、きゅっと引き締まったウエスト周りなど、ばっちり数秒にも渡って凝視してしまった後に──


「──っ///]


「うわぁぁぁぁぁぁああ!!!!! ごめん!!!!」


 全ての状況を理解した少女──シラリア・セルネストが羞恥で瞳と口元をキュッと細めた次の瞬間、早朝のアルカネルにレイコルトの悲鳴と謝罪?が盛大に鳴り響くのだった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「本っ当にごめん!  まさか人がいるだなんて思ってなくて‥‥‥」


「い、いえ。その‥‥‥わたしも鍵を閉め忘れていたのが悪いので‥‥‥」

 

 十数分後。人が二人で生活するには十分すぎるほど広いリビングルームには、何ともぎくしゃくとした雰囲気が漂っていた。


 木製のテーブルを挟んで真向かいに座り合うのは二人の男女。片や先ほどからそわそわと落ち着かない様子で視線を彷徨わせる黒髪の少年、レイコルト。片や最近ではもはや見慣れたモノトーン色のメイド服に身を包んだ白髪美少女ことシラリア・セルネスト。


 そんな二人の関係性を一言で言い表すならば主従という言葉がピッタリくるだろうか。


 出会った当初こそ、どこか他人行儀で物理的にも精神的にも距離感のある彼女であったが最近ではそんな様子も軟化してきており、レイコルトにも大幅な信頼を寄せてくれるようになっていた最中(さなか)に先ほどの一幕である。レイコルトの罪悪感が膨れ上がるのも無理はないだろう。


 今でも彼女の上気した頬や、羞恥に潤んだ瞳、ピンク色の下着に包まれた豊満な胸と真っ白な谷間がレイコルトの脳裏にしっかりと焼き付いており、まともにシラリアの顔を見ることが出来ずにいた。


「あ‥‥‥あのご主人様?」


「は、はいっ!?」


 突然声を掛けられたことで声が上擦ってしまい、そのことが更にレイコルトの心を羞恥で染め上げていく。


(はぁ、穴があったら入りたい‥‥‥‥‥‥)


 申し訳なさや恥ずかしさやらで、一人頭を抱えていると──


「──フフっ」


「え?」

 

 ふと、レイコルトの耳へと届く小さな笑い声。視線を持ち上げるとそこには、白色の手袋に包まれたしなやかな指を唇に当て、普段の薄氷のような表情に微かな笑みを浮かべたシラリアの姿があった


「いえ、すみません。ただご主人様がそこまで気に病むことはありませんよ。確かに少々、いえ、かなり驚きはしましたが、わたしは怒っていませんから」


「ほ、本当?」


「ええ。それに、先ほども申し上げた通り、鍵をかけ忘れたわたしにも非があります。ですので、」


 そこで一度言葉を区切ったシラリアは、途端にズイッとこちらに身を乗り出してきたかと思うと、ピンと立ち上げた人差し指をレイコルトの唇に押し当て──


「ここは一つおあいこさま、ということでいかがでしょうか。ご主人様?」


「───ッ!!!???」


 ドクンッ!


 と一際激しく波打つ鼓動。その可愛くも、どこか妖艶さを感じさせる彼女の意趣返しは、レイコルトの心臓をしばらく落ち着かせてくれそうにはなかった。

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