18.爆発、そして嫌な仮説
今回、ちょっと短めです。
「これは‥‥‥?」
数分後、爆発音の現場と思しき場所に辿り着いたレイコルトとエレナは目の前に広がる光景に思わずといった様子で声を漏らした。
周囲の木々は爆風によって根元から軒並みへし折られ、地面には巨大なクレーターが形成されている。まるで、その場に巨大な隕石でも落下したかのような凄惨たる有様だった。
抉られた地面からは僅かに黒煙が巻き上がっており、辺り一帯には爆発の余波で木片や土砂などが散乱している。
「魔法、じゃないわよね‥‥‥?」
「そうだね。こんなに大規模な爆発を引き起こす魔法ならしばらくの間は魔力の残滓が残り続けるはずだし、何より僅かに火薬の臭いもする。あきらかに人工物によるものだよ」
魔法は威力や規模が大きくなればなるほど、その場に残す痕跡も如実に表れるようになる。特に上級魔法以上ともなれば、三十分以上は魔力の形跡が残り続け、使用者の力量によっては一時間近くその場に留まり続けることもある。
しかし、この場に残されているのは純粋な破壊の力のみであり、魔法を使用した形跡すら感じられなかった。
「それにしても一体誰が‥‥‥」
エレナは困惑の表情を浮かべながらも、注意深く周囲を見回す。だがそこに人影らしきものはなく、また、破壊された木々の中に血痕のようなものも見受けられなかった。
「まさか、昼間にレイが言ってた私たち以外の誰かの仕業?」
「断定はできないけど、その可能性は高いかも。でもそれならなんのためにこんなことを‥‥‥」
レイコルトは険しい表情で思考を巡らせる。
(昼間は魔物の無差別な虐殺。そして今は木々の破壊。あまりにも目的に一貫性が無さすぎる。まるで──)
「レイ! 見て! あそこに誰か倒れてる!!」
「えっ!?」
思考の海に沈んでいたレイコルトは弾かれたように顔を上げると、エレナの指さす方向へと視線を向ける。
十メートルほど先の茂み、周囲は夜の帳に包まれており、目を凝らさないと見失いそうになるが、確かにそこには人影らしきものが見えた。
「行こう、爆発の余波に巻き込まれたのかも」
「えぇ!」
二人は周囲を警戒しながらゆっくりと近づいていく。距離が縮まるにつれて伏している人物の輪郭が明確になっていき、大まかな様態が把握できた。
(三人か‥‥‥)
顔まではハッキリしないが体つきから判断するに全員男性らしく、目立った出血もないことから意識を失っているだけのようだ。──が、
「ねぇ、あの三人とも士官学校の制服を着てない?」
「──ッ!? てことはクラスメイトの誰かが‥‥‥!?」
二人は慌てて駆け寄ると、うつ伏せに倒れていた男子生徒の顔を覗き込む。
「──ッ!? そんな‥‥‥!!」
「嘘でしょ‥‥‥!?」
直後、二人の口から思わず驚愕の声が漏れ出した。
なぜなら、倒れていた三人はちょうど昼間レイコルト達に絡んできたレクスの取り巻き二人と荷物持ちをさせられていた男子生徒だったからだ。
「どうして彼らがここに‥‥‥」
「分からない。でも一旦私たちの野営地まで運びましょう。目立った外傷はないけど、体の内部にダメージがあるかもしれない」
「そうだね」
エレナの言う通り、もし怪我をしているなら応急処置が必要だ。レイコルトは片膝を着くようにしゃがみ込んでから、取り巻きの腕を自身の肩に回した途端──、ピタリと動きを止める。
(待てよ、だとしたらレクスはどこにいる? 彼らと一緒に行動していたなら必ず近くにいるはずだ。なのにどこにもいない‥‥‥)
「どうしたの、レイ?」
エレナが心配そうに声を掛けてくるが、思考の海に沈んでいる今、その声すらもどこか遠くに聞こえる。
(そもそもこんな時間にここで何をしようとしていた? 本当に彼らは爆発に巻き込まれただけなのか?)
あらゆる疑問が頭の中で渦を巻き、レイコルトの心を不安で塗り潰していく。
脳は冷静に思考を巡らせているはずなのに、心臓は早鐘を打ち、じっとりと嫌な汗が背中を濡らす。
(もしかして僕は何かとんでもない思い違いをしているんじゃないか‥‥‥?)
無差別に虐殺されていた魔物、その現場に落ちていた謎の紙とマーク、一貫性のない行動。そして、爆発に巻き込まれた三人とレクスの行方。
──『師匠の情報網を使ってもダメってことは、相当自分たちの存在を隠したいんですかね?』
──『うーん、実はそうでもなくて、あいつら襲った村や集落には必ず教団のシンボルを残していくんだよ。まるで自分たちの存在を知らしめるように。まぁ、それでも尻尾を掴ませないから余計に質が悪いんだけどね』
脳裏に浮かんだのは入学試験の日。士官学校の理事長室でセリーナから聞かされた言葉。
(まさか‥‥‥)
その時レイコルトの頭に浮かんだのは、何の根拠もないただの直感でありただの仮説。しかし、仮にその予感が的中していたとするならば──
「‥‥‥ん?」
ふと、レイコルトは肩に担ごうとした取り巻きに微かな違和感を覚える。
──あまりにも軽すぎないか?
今レイコルトにかかっている体重はせいぜい四十キログラム程。いくら彼が細身とはいえ、あまりにも軽量すぎる。
それに、僅かに鼻孔をくすぐるこの臭いは──
「──ッ!!」
その瞬間、背筋をゾクリと冷たいものが走り抜けた。
レイコルトは慌てて抱えている取り巻きを突き飛ばすと、《魔力強化》を施した脚力でエレナの元に駆け戻る。
「エレナっ! !」
「え?」
スローモーションのように流れる景色の中、強引にエレナを抱き寄せたレイコルトは半ば飛び込むようにして近くの木陰へと身を投げ出す。
最後にレイコルトの鼻が火薬の臭いを知覚した途端、世界が熱と衝撃に包まれるのだった。
ドオオオオォォォォオオオンッ!!
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