表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175  作者: Nora_
9/10

09

「学校では普通ですよ、安心してください」

「そうか、教えてくれてありがとう」

「いえいえ、そのかわりにこうして貰っているんですからね」


 ジュースを奢るという約束だった。

 これは香菜が教えるかわりにそうしてほしいと頼んできたわけではなく、無償で教えてもらうのは申し訳ないから言わせてもらったんだ。

 茉莉が普通に学校でも来てくれればいいのだが、残念ながらそうではないから誰かを頼るしかないというのが現状だった。


「宏一、ご飯食べよー」

「おう」

「今日風心は茉莉と食べるみたいなので私も一緒に食べていいですか?」

「当たり前だろ、自由に参加してくれ」


 でも、いまこうしてここにある弁当は依然として茉莉が作ってくれたものだ。

 話そうとはしないのに毎朝作ってくれて、出る前に渡してくれる。

 終わりそうで終わらないで済んでいるのは茉莉のおかげだ、感謝しながらいただくことにしよう。


「本気なら積極的にアピールすればよかったのにね」

「血の繋がった兄妹なんですよ?」

「関係ないよ、それに結局しなくてもいまみたいに傷つくぐらいなら動いた方がいいでしょ?」

「うーん」

「茉莉ちゃんはもったいないことをした、それで終わってしまう話だね」


 もったいないことをしたとも言えない気がするが。


「さてと、というわけで茉莉ちゃんのところに行ってくるよ」

「もしかして……」

「あ、狙っているわけじゃないからね、茉莉ちゃんや風心ちゃんとも喋りたいというだけだよ」


 前坂は積極的に三人と一緒にいるというわけでもないし、意図的にそうしているようにも見える。

 時間つぶしのためというわけでもないだろうが、そこまで大事な存在達というわけでもないのかもしれない。

 まあ、まだまだ出会ったばかりとも言えてしまう時間しか経過していないから普通のことなのかもしれないが。


「宏一先輩は私のです、私が急にそう言ったらどう反応します?」

「冗談はやめてくれよと言うだろうな」

「えー、少しは動揺してくださいよ」

「風子がなにもしてきていなかったらな、なに言っているんだよと反応していたよ」

「なるほど、じゃあ頑張ったら違かったんだ」


 それはそうだろう、なんにもされていないのに好きになることなんてできない。

 俺みたいな人間であれば尚更のことだ、って、風心もあんまり変わらないがな。


「後悔はしていませんけど、頑張ってみるのもありだったかもしれませんね」

「俺は普通に相手をさせてもらっていただけだが」

「いつも一緒にいてくれればそれだけで影響を受ける子もいますよ」


 俺も同じ、だからそのことについては言わなかった。

 弁当はいつもと同じで美味しかったからそちらに意識を向けておいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ