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第六話 黄金の瞳(7/7)
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冷たい雨がそれぞれの顔を濡らしていた。
アモンの魔力に呼応して、天から黒き落雷が落ちて二人を包んだ。激しい爆裂音と共に、その衝撃は大広間に居た全ての者も巻き込んで吹き飛ばす程のものだった。
落雷の衝撃に投げ出されたセイル。
程無くして全身を襲う痺れに耐えながらよれよれと顔を上げると、アモンの居た場所へと駆けていた。
爆心地の様に黒く焼け焦げた大地の中心には、全身に煤を着けて白煙を立ち昇らせる男が一人立っている。
もう一人は、上半身が消し飛んで何処かへ消えてしまっていた。側に真っ黒の下半身らしきものだけが横たえている。互いに黒焦げになったその姿にはまるで判別が付かなかった。
「アモン――!」恋する乙女は涙を溜めてそう鳴いた。
立ち尽くし、しばらく静止していた黒焦げの男は、「ゴハァ!」と息を吹き返して、開いた口元から煙を上げる。
そして男は振り上げた。黒く、割れかけた右の拳を。
忌々しそうに歯噛みする白い歯が、黒いキャンバスに表れている。




