姫神さまがお昼寝する前のこと いち
いつも誤字脱字チェックありがとうございます!
「え、姫神さまって元は人間なんですかー!?」
何気ない日常の、何気ない会話に黒猫クウちゃんのビックリがあった。
「そだよ? あれ!言ってなかったっけ」
「聞いてないですー」
おやつの生クリーム大福をもぐもぐしながら、姫神さまはこてりと首を傾げた。
隣ではお茶をいれながら玉ちゃんが頷く。
「言ってませんし、そもそも誰も知りませんよ」
「あー、そうだね。大分昔のことだし」
聞きたいと目をキラキラさせる双子龍の華鈴と華南に、姫神さまはにこりと微笑んだ。
「じゃあ、みんなには話しておこうか」
姫神さまが、どうして姫神さまになったのか。そのルーツを。
姫神さまは元は人間の女の子だった。
普通の家庭の普通の子。学校に通い友達と遊んで、勉強しなさいって怒られる、そんな普通の。
16歳になる時、進路決めの時。姫神さまは勉強がそんなに好きじゃなかったし、当時は進学は本当に勉強好きでお金持ちの子がするものだったので、姫神さまは就職するつもりだった。
その頃、近所の神社で子供にいじめられていた猫を助けたことがあった。成り行きだっただけなんだが(道のど真ん中でやらかすなよ)猫はたくさんあつまってるし、邪魔ったらなかったのさ。
後日、猫神さまの遣いがやってきた。猫の恩返しかと思えば、求婚だと。マジか。
いじめられ茶トラ猫は、あの神社の神様だったのだ。笑えんオチだな、と姫神さまはスルーした。
お断り一択の姫神さまと、結納(受けてないのにもってきやがった)の豪華な品々に目が眩んだ両親。当然バトった。
勝ったのは姫神さまなのに、両親が勝手に誓約書だかにサインしやがった。激おこである。
迷わず有金持って逃げ出した姫神さまだったが、両親と親戚達のコンボで町を離れる前に捕まってしまった。
そのまま嫁入りである。どこの花嫁が簀巻きに猿轡で嫁ぐというのか。ありえねー、と姫神さまの怒りはマグマの如くグラグラ煮立っていた。
人から神の眷属になるには、その身を俗世から切り離し、神力を身体に満たさなければならない。
個それぞれのことなので、何日なのか何年なのかやってみないとわからない。みんな違って当たり前、器が違うのだから。
神力のお風呂に浸かっている間に嫁の心得とか神とはなんぞとかを学ぶわけなんだが、なんせ嫁入りに大暴れした姫神さまである。簀巻きを解かれた瞬間に、逃げ出そうとまた暴れたため、猫神さまの一族の長、白虎さま預かりとなっていた。
女は女同士、と白虎さまは奥様の妖狐の長白蓮さまに丸投げした。
白単に緋袴、小袿の真っ白な白蓮さまは、しばらく姫神さまを観察するように眺めていた。なんせ大暴れした姫神さまは、神様の前だというのにぶっすぅーとぶぅたれていたのだから。
「そなた、なぜ嫁入り時に暴れていたのかえ?」
それは、神様達からの、初めての問いかけだった。
今回もよろしくお願いします。