縁側でお昼寝したい
花粉の季節がやって参りましたね。……ちくせう。
この世界には神も妖も存在する。
ただ、神と妖の境界線は曖昧だ。
だが、神と崇められれば力は増すし、頼られればなんとかしてやりたいと思う。
等価交換、もちつもたれつ、お互い様。
みんな、そうして生きている。
「ただいまー」
「お帰りなさいませ」
見た目は小さなお社は、程よく日が差す雑木林の中にある。
丘の上にあるので、見晴らしはいいが足腰にはちと辛いところ。
なので、お年寄りのために、入口の鳥居の下に小さな祠がある。そこに祈れば、声は届くよー、と姫神様直々に説明されたおばあちゃんは、毎朝祠にお参りしては孫自慢をしていく。
みんな元気なら、それでいい。
さて。
小さなお社だが、中は広い。摩訶不思議な空間だが、人ではないので誰も気にしない。
眠そうにしながら帰った姫神様を出迎えたのは、心配そうな様子の玉ちゃんである。
子供のような身長、1メートルくらいだろうか。二本足で立ち、白単に緋袴という、巫女さんスタイルをしている。
しかし、頭部は猫。キジのハチワレ猫。しっぽもキジ。シマシマしっぽがゆらゆら揺れている。かーわーいーいー。なにここ、天国?
「あ、玉ちゃん。カタついたからね」
「そう、ですか」
なんとも言えない雰囲気の玉ちゃんは、それでも姫神様に礼をとった。
「私のことにお時間をとらせて申し訳ありませんでした。ありがとうございます」
「気にしない気にしなーい」
あっけらかんと笑う姫神様は、玉ちゃんの頭を撫でると奥に向かう。
撫でられた玉ちゃんは、気持ち良さげにゴロゴロと喉を鳴らしながら後に続いた。
「「きゅう」」
姫神様の部屋で出迎えたのは、二頭の雛龍。三十センチほどの大きさの、白龍である。属性を現すのか、鬣としっぽの先がオレンジから赤へのグラデーションになっている。
紅い眼が嬉しげに細められた。
「ただいまー、華鈴、華南」
なでりなでりと両手で挨拶したあと、定位置の座布団に座る。脇を雛龍に固められながら、玉ちゃんが座るのを待った。
「お留守番ありがとねー、ミイちゃん、ケイちゃん」
「「みぁあん」」
神守見習いの双子猫は、三毛の柄がシンメトリー。まだ二本足では立てないので巫女服は着ていない。二匹がくっつくとハートの模様が背中に現れるのが、とてもかわいい。
「はーい、おやつですよー」
パタパタと部屋に入ってきたのは黒猫のクウちゃん。黒猫は縁起が悪いとか宣うどこぞの阿呆から貰い受けてきた神守だ。
かわいいじゃないか、黒猫。てか、猫はみんなかわいいわ。なんだその胡散臭い迷信は。
「わぁ、生クリーム大福だぁ」
「いなりやさんとこのですよー」
「買いに行ってくれたの? ありがと、クウちゃん」
いなり屋さんの生クリーム大福は、こしあんに生クリームが入ってる一口サイズで、一番人気の商品なので、並ばないと買えないのだ。
クウちゃんはわざわざ並んで買ってきてくれたのだろう。お礼の気持ちをなでなでしておく。
みんなで美味しく頂いていると、ちりんと鈴が鳴った。
「はーい」
パタパタとクウちゃんが玄関に向かっていく。働き者さんだ。
「……あのー、お客様です。えーと、玉さんに」
戻ってきたクウちゃんは、困惑気味にどうしましょう、とたずねた。
「お客様って誰?」
モグモグりながらの姫神様をメッ、しながら玉ちゃんが聞き返す。
「あのー、ミケさんです。喫茶店の」
「「は?」」
今カノが前嫁に用って、え、なにこれ修羅場?
次回、これがホントのキャットファイト!? (笑)
嘘です。多分。