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占い  王妃視点

「コンソラータ、あなたは、私が欲しい答えを言ってはくれないようね」


私の声は自分が思うよりも不機嫌に響いた。

そして思う、私はいつから、こんな調子で話すようになったのか?と。


軽やかに微笑んで友人たちと語らっていた、そんな若き日の時を、一瞬思い出した。


「恐れ入ります王妃様、私は占い師でございます。……そうおっしゃられましても……占いの結果をお伝えしているだけでございますよ」


年若く美しい彼女は、濡れたような翡翠色の瞳で私をまっすぐに見つめた。

言葉と相反し、少しも悪びれていない。

その堂々たる姿に、私は思わず息をのみ、彼女に見惚れた。

女性の私から見ても魅力的なこの子を、漁色家の夫には決して近づけさせてはならないと感じた。


私は視線をなんとか彼女から離し、テーブルの上に置かれた水晶を見つめた。


「本当なのね……私には手にすることができないと」


コンソラータは小さく息をついて、もう一度水晶に手をやり、見つめた。


「あくまで、占いではありますが……王妃様。ーー首飾りは王妃様の元へは来ないと出ております、付け加えますと、今現在どこにあるかも、私の水晶には映りません。ーー首飾りはそもそも竜の涙の結晶を用いて作られたものと、我々庶民は聞いております、間違いございませんよね?」


彼女の強い瞳に抗えず、視線を外せないまま、うなずいた。


「竜の涙の結晶や、妖精王の珠、精霊の贈り物などは、それぞれ、その所在を自分で決めるのです。そのものが意思を持ち、誰の手の中にあるかを決定するのです」


私は冷めた紅茶の入ったカップをソーサーに戻し、思わず手を握りしめた。


「……やはり、血縁ということか」

「ただ、血縁があれば良いというものではありません。その者がそれを持つにふさわしいかどうかを見極めるのです」


コンソラータは、頭に飾る茨の冠を指さした。


「王妃様、この茨の冠も同じようなものです。これは代々私の家系のみが被るものです。王家に伝わるいくつかの冠と、同じ職人が作ったと聞き及んでおりますが……これもまた、資格のない者は、手にすることすら出来ないもの。私の前は、曾祖母がこれを被り、占いをしていたと聞いています。私は2代を経てようやく跡継ぎと認められたのです」

「……どう、認められたとわかったのです?」


開かれたバルコニーから、そよそよと風が入り、コンソラータは美しい黒髪を揺らした。

その頭にある茨の冠は、王妃のティアラとは違って、どこか禍々しさも感じるようなものだが、繊細な技で作られたと一目でわかる上質さ、そして軽そうな作りに反して、重さを感じるような存在感、それらが彼女の美しい黒髪と合わさり、この世ならざる美を感じた。


「まだ、言葉も喋れぬ赤子の私の手の中に、この冠が現れたそうです。母は私を産んですぐに事情により亡くなり、私はその友人に育てられておりましたが、その冠を見て、私の血筋がコンソラータの血筋だとその方は初めてわかったようですよ」


そう、コンソラータというのは彼女の名前であるが、個人名ではない。

脈々と受け継がれる占いの才に秀でた者のみが冠することのできる、称号のようなものだ。


話によると、彼女の母はその占いの才能がなく、平凡に生きたということか。

流浪の民ゆえ、調べることは無理なようだが……コンソラータがおよそ100年ぶりに現れたという噂は、確かにここ10年ぐらいのことだ。

彼女の話はつじつまがあう。


「なるほど……そなたのその茨の冠にも、やはり竜の涙のような宝玉が組み込まれているのだろうか?」


私の声は少し掠れていた。

これ以上何を聞いても、無駄だとわかっているのに、彼女に魅了されているかのように目が離せなかった。


「いえ、これは先代のコンソラータ、つまり私の曾祖母が当時の王から送られたものです。こまかな宝石が散りばめられてはおりますが、それが何であるかは、口伝でも伝えられておりません。ただ、祖母も母も手にすることができなかったものであると思うと、特別な思いは感じますね」


彼女はそう言い、薄く微笑み、冷え切った紅茶を一口飲んだ。


顔も、声も、中世的。

背は一般女性と変わらないが、この迫力は何なのかと、圧倒されている自分が情けなく思った。


「……私があきらめる材料となるには、根拠がなさすぎる話ではありましたが、役には立ちました。ーー占い料は、侍女が支払います。私がここへ呼んだことも、何を相談したかも、内密にしてくれますよね?」

「もちろんでございます」


彼女はお付きの者に水晶を片づけさせ、自らも椅子から立ち上がって、美しい礼をした。

仕草は淑女のものなのに、その様は騎士であるかのようで、強さを感じた。

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