表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/66

コンソラータ

  今話題の占い師『コンソラータ様』は、真っ赤な布を頭からかぶり、いばらのようなデザインの冠をその上からつけていた。

その冠は繊細な作りで、真ん中に大きな青いアメジストが輝いて、赤い布との対比が素晴らしかった。


そして、黒いドレスは光沢があり、赤い布の反射で濃いえんじ色にも見える。

ところどころに刺された刺繍のデザインもいばら……まるで、線の細い体が、いばらの枝に巻かれているようで、どこか痛々しかった。


「お待たせした」


響いてきた声は中性的で落ち着いた美しい声だった。


顔を上げた時、赤い布から大きな瞳が見える、緑色のそれは何もかもを見透かすようで、思わず体が震えた。


「ビュフェ夫人、またお会いできて光栄です」

「こちらこそ、コンソラータ様」

「ロゼ嬢、あなたも、お元気ですね、ますます美しくなった」

「コンソラータ様にそんなふうに言われますと……」


続きが言えなくなったロゼを見ると、顔が真っ赤だった。


「して、あなたは?」


コンソラータは緑の瞳で私をじっと見つめる。


「この子は夫の姪、リリアーネですわ」


マダムの紹介で私はカーテシーをする。

考えてみれば、この人は流浪の占い師、こんな風に貴族たちに『様』を付けて呼ばれていることに不思議な思いを抱いた。


「そう……姪御さん……」

「どうぞお座りになって」


マダムはメイドにお茶をお願いして、皆で着席した。


「どなたから見ましょうか」


コンソラータはマダムを見つめた、ロゼが軽く手を挙げて自分を指さす。


「私からお願いします、コンソラータ様」

「では、そうしましょう」


お付きの人のうちの一人が机の上にクッションを置き、その上に水晶の玉を置く。

磨き抜かれた大きな玉は、日差しを受けてきらきらと輝いた。


「ロゼ嬢、何を占いましょう?」

「ああ……ええっと!」


ロゼは両こぶしを握り締めて、腕を上下に振って、まるで幼子のように慌てていた、私は思わず笑って彼女の背をさする。


「ありがとうリリアーネ! では……では、恋占いを……」


そう小さな声で呟いてから下を向き、そっとマダムを見上げた。

マダムは笑いをこらえつつ優雅に微笑んでうなずいた。


「では、娘の恋の行方をお願いしようかしら?」


コンソラータは輝く水晶を見つめ、そして、右手から炎を出した。

ちいさな青い炎は彼女の手のひらで生き物のようにうごめき、やがて玉に吸い込まれていった。

私は初めて見るそれに度肝を抜かれ、思わず前のめりになった。


「そうですね、ロゼ嬢の恋……悪くありません、努力次第で認めてもらえるでしょう」


ロゼは両手で口を押え、小さく「うぁあ」とつぶやいた。


「ですが、お互いの努力は必須です、あなただけでなく、お相手も。とくに、お相手は何も持っていないようですね、今のままでは、いけない。あなたはよくお相手を支えていかなければなりませんよ」

「はい」


ロゼは真剣な顔でうなずいた。


「ですが、あなた方にはよい理解者がいるようだし……ねえ、ビュフェ夫人」

「ふふ……そうでございますね」


マダムは優し気な笑みで娘を見つめた。


ロゼには、好きな人がいて、結ばれようとしているのだと、その時はじめて知った。

話の成り行きからそれは、縁談ではない、恋愛なのだろう。

だけど、貴族の恋愛は……。


「では、お次は?」

「では私」


マダムは私を見て片目をつむった。

可愛らしい仕草に、ロゼとの血のつながりを感じる。


「ビュフェ夫人、何を占いましょう」

「ええ、私は、別宅の件をお願いしましょう」

「別宅」

「ええ、東の森の中に別荘地を購入いたしましたの。湖のほど近くですわ」

「よい景勝地ですね」

「とても美しいところですわ」


コンソラータはこくりとうなずいた。


「いつごろ工事をすればよろしいかしら」

「わかりました、占いましょう」


コンソラータは今度は額に手を当て、人差し指に青い小さな炎を出すと、ぽってりとしたかわいらしい小さな唇をとがらせて、ふうっと吹いた。


炎は風に乗り、水晶に吸い込まれる。

水晶は瞬間真っ青に変化した。

辺りが一瞬青く光った。


「方角も、場所も大変よろしい。工事の時期は来春がよろしいようですね」

「まあ、よかった」

「マダム、少し気になるのですが」

「なんでしょう?」

「マダムは水の力と親和性が高いようです。もしかして水魔法がお使いになれますか?」

「ええ、私はそれほど魔力は高くありませんが、少しなら」

「そうですか、水のそばにいると体も休まり力がみなぎるはず。ぜひ、折々にその別荘地へ足を運んでみられることをおすすめしますよ」

「まあ……ありがとう」


マダムは輝くような笑顔を浮かべた、その笑顔はロゼと似ていた。


「そして、あなたね」


コンソラータは私をじっと見つめた。



お読みいただき、ありがとうございます。

イイネやブックマークなど、応援をよろしくお願いいたします☆

励みになります☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ