未来永劫守りましょう。
彼はルイという名前だった。
稀に見る美しい瞳の青年で、人々は彼を神に愛された子供と呼んでいた。
彼は健やかに成長し、ときに波乱に巻き込まれ、ときに波乱を引き起こし、ときに人生の荒波に揉まれ、ときに美しい恋をして、立派な青年になった。
彼は多くの人が羨むものを持っていて、どこにいても人気者だった。
しかし、彼には一つ、誰にも言えない想いがあった。
それは彼がまだ少年だった頃。
多くの人がまだ彼の美しさにきづかなかったこところ。
彼は一人の少女と出会った。
少女はセナ。盲目のお姫様。
ルイはセナ姫に恋をした。
誰よりも恵まれ、王族よりも王族らしく、しかし王族ではなかったルイは、姫様に恋をした。
それは、ルイが誰にも伝えられない密かな想いだった。
戦火は街を焼き、人々は逃げ惑う。
多くの命が失われ、目をおおって蹲り、嘔吐くほどの血の匂いが、街を覆いつくしていた。
青年は城へ走る。
青年は脇芽も振らずに走り続ける。
視線を上げた先には火の手が上がる城が見えた。
その美しい顔を歪め、その美しい柳眉を大きく吊り上げ、酷く恐ろしい表情をつくって、青年は、ルイはひたすら城を目指した。
行く手の炎をかき分けて、仲間の死体に後ろ髪を引かれながら、ルイはただ愛する人の元へと向かう。
「セナ姫!!」
扉をあけて叫ぶ。その声に小さな影が反応した。
蹲っていた顔を上げて「……ルイ?」と、青年の名を呼んだ。
ルイはまろぶように走って彼女を抱きしめた。
「大丈夫です。もう大丈夫」
安心させるようにルイはセナ姫を救い出した。
「ねぇ、ルイ。お父様はなくなったの?」
「はい。残念ですが」
「お母様は? お兄様は?」
「…………」
「お父様は、立派な王だったわ。優しくて、時々厳しくて……なのに……どうして?」
ルイは答えられない。代わりにそっとセナ姫の肩を抱きしめた。
「姫。姫だけは、姫だけは私が守ります。未来永劫。必ず」
「──ルイッ」
肩口で涙する華奢な少女。
その肩を抱きしめて。ルイは優しく微笑んだ。




