拝啓-私の勇者様〜物言わぬ贈り物〜
拝啓 勇者様
お元気ですか?
困ったことはありませんか?
いつもあなたを想っています。
あなたと出会った、あの日から。
覚えていますか?
初めて出会ったあの日、あなたは私にこうおっしゃいましたね。
「ずっと、ずっと、会いたかった」と。
あの喜びは今でも忘れられません。
私も会いたかった。そう返したかったのですが、うまく言葉にできませんでした。
けれど、今私の本心をお伝えするならば、どうかどうか私の元へ再び戻ってきてほしい。そればかりなのです。
私も、あなたに会いたいのです。
もし、何か困ったことがあったら、もし、私にできることがあれば、手紙をください。きっとお役に立って見せます。
それでは、親愛なる勇者様、どうか健やかに。
追伸
あなたの代わりに会いに来た偽物の勇者がいました。
あなたと似ていたのは目の色だけ。
ですから目だけいただきました。身体はお返しします。
勇者は手紙を握りしめて苦悶の表情を浮かべた。
ギリッと音がするほどに握りしめた手は、怒りで震えている。
目の前で泣き崩れる女。
女が見を預けている、物言わぬ身体。
真っ青な海の色をしていた、美しい両の瞳を失って、その身体は帰ってきた。
「死んでくれ。死んでくれ。頼むから死んでくれ。これ以上人を殺さないでくれ。俺が、お前のもとに行くまで──────魔王」
勇者に恋した魔王の手紙を、勇者は破り捨てた。
残酷な世界




