アランの憂鬱の確信 〜王様のお忍び〜
「遊んで愉しむ。祭りとはそういうものであろう?」
と、さも不可解気に問われ、一衛兵でしかないアランは困惑した。
確かに、祭りとは本来楽しいものだ。羽目をはずすこともある。しかしそれは、あくまでも私的に参加している時に限ってのこと。
現在、急遽街に降りると言い出した国王に、運悪く捕まり連れ出され、護衛をすることになってしまったアランには、その余裕もなければ許されてもいないのである。
なにより、目の前にいる国王自身も視察という仕事でここに来ているはずだ。
それがなぜ「あちらの売店にはなにがある?」「花売りか? では半分買おう」「少し向こうを見てくる」などと言ってあちこちフラフラしているのか。
そんなことが気になって、思わず口出ししてしまったアランに、王が返したのは「祭りは楽しむものじゃないのか?」という言葉だった。
それはそうだが、仕事中では?と問うのは流石にはばかられ、アランは王の隣に立つ専属騎士に助けをもとめた。
視線の先で、騎士がうんざりした顔をする。
なるほど、いつものことなのか。そう思ったアランに再び王が言った。
「俺はお忍びで来ているわけだから、お前も好きにして良い」
などと言われて、アランはさらに飛び退くほど驚く。
そうはいかないだろうと、思わずにはいられなかった。
そこで、専属の護衛騎士が堪らずといった様子で声を上げた。
「恐れながら陛下、我々は陛下の護衛を仰せつかり、随行させて頂いております。それ故、陛下のお側にてお守りすることが、何より我々の望む所にございますれば。陛下に置かれましては、何卒御勤をお忘れなきよう」
などと、これはもはや慇懃無礼では、とアランが思うような台詞を専属騎士が言う。
アランが驚くなか、王が呆れた様子を見せる。
「そうしかつめらしいことを言うな。今日は無礼講だろう」
「陛下、そのように仰られては……」
王と専属騎士が言葉を重ねる。
唐突に王がアランを見た。二人のやり取りにたじろいていたアランは動きを止める。
「俺が許す」
あまりにも真っ直ぐなブルーの瞳に射抜かれて、アランは無意識に「はい」と答えた。
視界の端で専属騎士がため息を吐くのが見えたが、気にならなかった。
王が道を闊歩していく、その背を慌てて追いかけながら、アランはこの王についていくのだと、そう心に強く思った。




