最終話 穏やかな日々
三年後。 バイキング帝国北部、国境上空。
「お頭! 後方から帝国軍の巡洋艦が二隻接近中!!」
「ちっ、もう来たか!!」
どこまでも続く大空を三隻の空飛ぶ船が突き進んでいる。
後ろから追ってくる二隻の帝国から逃げるのは、一隻の空賊船だ。
三年前の魔王戦争で、世界は大きく変わった。
特に技術的な進歩は著しく、大陸のほとんどの国家が空鯨船を所有するまでに至り、大空時代の幕が切って落とされた。
だが、光ある所に影もあり、空を翔る船は、軍だけでなく民間にも広く普及したが、同時に犯罪組織にも流れ、空賊という新たな存在をも生み出した。
そして今、帝国籍の商船を襲撃し金目の物を奪ったマグマート空賊団の船は、その代償に帝国軍から追われる羽目に遭っていた。
軍の対艦用バリスタの性能は、空賊側のバリスタの性能を大幅に超える。
射程内に入れば、一溜りもないので、部下達の顔には焦りが見えるが、団員を指揮する頭は、しつこい帝国軍の追跡に舌打ちをするも、そこまで焦ってはいなかった。
「野郎共、もうすぐ帝国の領空を出る。そうしたら連中の追跡も終わりだ。それまで粘れ」
流石の帝国軍と言えど、国境の外に出てしまえば、手を出すのは不可能。
それが分かっている頭の顔には余裕の笑みがある。しかし、飛び込んできた部下の方向を聞いて、顔をしかめる。
「頭! 追って来ていた帝国軍の艦が引き返していきますぜ」
「何だと?!」
いつもは、自国の領空ギリギリまで追って来ていた帝国軍が、何故か、領空よりかなり手前で引き返していった。
「よし、帝国の連中、俺達には追いつけないと理解したんだな」
「これでマグマート空賊団の名も世に知れ渡るぜ」
尻尾を巻いて撤退していく帝国艦を眺めながら浮かれる部下達。
その矢先、驚きの一報がブリッジにもたらされる。
「お、おい、右を見ろ! し、島が、空に島が浮かんでいるぞ!」
見張りの言葉通り、右前方に巨大な島が空に浮かんでいる光景を目の当たりにして、初めて見る光景に先程まで浮かれていた部下達は、言葉すら出せないほど驚いた。
「ククッ、そういうことか。こりゃ、運がいいぜ」
そんな中、ただ一人、頭だけが、笑い声がブリッジに響いた。
「か、頭は、あれが何か知っているのですか?」
「ああ、空中要塞ギャラルホルンだ」
頭の一言で、船内がざわついた。
「あ、あれがそうなのですか?!」
「スゲー、初めて見たぜ!!」
「じゃ、あそこにあの大魔王ユーリ・メルクリアを倒した最強の勇者がいるのか」
「連合軍諸共、帝都に壊滅的な打撃を与えたという兵器はどれだ?!」
「そうなのか? あれは、無数の魔物を取り込んだ魔王の仕業だと聞いているぞ」
「じゃあ、旧共和国の都市を空爆した帝国の大艦隊を滅ぼしたのも魔王なのか?」
子供のように大はしゃぎする部下を横目に、真剣な眼差しで空飛ぶ要塞を見ていた頭は、大声で今後の方針を告げた。
「よし野郎ども。これより、あの空飛ぶ島に飛び込むぜ!!」
今代の勇者カナメ・アマダが魔王メルクリアを滅ぼした神剣と共に、この世界に持ち込んだと噂される空中要塞ギャラルホルン。
魔王戦争と呼ばれるあの戦争自体、詳しいことは世間に広まっていないが、その中でもあの要塞は、全くと言っていいほど、神秘のベールに包まれている。
それでも明らかにされていることは三つ。
要塞内には、空鯨船や各種兵器など、現代技術を遥かに超える技術や、世界中の富を全て合わせてもなお上回る金銀財宝があること。
魔王戦争の最後の舞台であり、勇者と使徒が、魔王を倒した地であること。
そして、使徒や国家と関係を断った勇者アマダが、一人で富に囲まれた生活を送っているということだけだ。
圧倒的な武力、高度な技術力、有り余る富。
空賊でなくとも、あの空飛ぶ要塞をわが物にしたい者は多いことだろう。
だが、あの要塞が出現してから三年が経過したが、それを成した者は一人もいない。
「ですが頭。あの要塞に近づく船は全て撃沈されていると聞きますぜ」
とある小国の王様が艦隊を率いて挑み、全滅した例を出した部下を鼻で笑い、他にも不安な顔を見せる部下達を大声で鼓舞した。
「危険は大きい。しかし、アレを俺たちの物にできれば、後は思うがままだ。世界征服だって夢ではないぞ」
魔王メルクリアや帝国ですら、成しえていない世界征服という言葉に目を輝かせる空賊達。
「そうだな! あの巨大な要塞を手に入れれば、欲しいものは何でも手に入る!!」
「金も! 女も! 力も! この世の全てを掴むぜ!!」
「よっしゃ! やってやるぜ!!」
さあ乗り込むぞと沸き立つ空賊たち。
だが、その歓声は大きく、見張りの声をかき消してしまった。
「こちらに向かって何か飛んで」
次の瞬間、船内は灼熱の炎に包まれた。
バリスタしか知らない空賊たちの常識を超えた場所から放たれたミサイル、魔弾テンペストは一撃で空賊船を撃沈させた。
魔王戦争。
統合軍の旧ローラン伯爵領侵攻から始まった戦争は、世界を大きく変えた。
魔王メルクリアの討伐後、帝国と統合軍勢力の間に、休戦協定が結ばれ終結したものの、戦争により多くの国が傷つき疲弊した。
それでも次の戦争に備え、世界は再編される。
帝都が壊滅し、多額の予算を投じて建造した切り札のラグナロク艦隊を失ったバイキング帝国は、一時的に弱体化したが皇帝カリンの主導の下、復興が進み、合わせて軍事力も増強された。
最も古く三強の一角であったユグド王国は、王都や上層部のほとんどを失い、さらに生き残った王族や貴族が王位に就くことを拒んだため、一時的な分裂を経て、最終的には莫大な経済援助を行った共和国に吸収され、歴史から消えた。
そして、帝国の空爆により多大な被害を被ったティルヘルム共和国とイスラ同盟国は、早期復興のために統一し、反帝国派の国々も巻き込んで新国家、イスラ合衆国を建国した。
合衆国建国にあたって初代大統領ガルダ・ザルバトーレは、皮肉にもユーリ・メルクリアがやろうとしていた経済援助による侵略を採用した。
様々な悪行と共に、メルクリアの正体が魔王だったと事が知れ渡った今でも、旧王国や帝国からの魔王崇拝をやめろという要請を無視して、旧共和国系を中心に、彼を慕う者は政財界から民衆まで非常に多い。
しかし、仮に魔王を憎んでいても、魔王が最大の脅威と認識していた帝国に対抗するために、魔王の残した遺産を使うのは仕方がないという声は旧王国からも挙がっていた。
それだけ、統合軍勢力はメルクリアの才覚に支えられていた。失ってその大きさに世界中が気がついた。それだけの話だ。
ともあれ、こうして世界は、帝国と合衆国の二つの勢力に分かれた。
世界の盟主の座を手にするために、開戦も時間の問題との声もささやかれている。
だが、両陣営の指導者たちには、開戦できない理由があった。
バイキング帝国帝都。
この日、皇宮にて御前会議が開かれていた。
「今年度の経済成長率は、戦前の水準まで回復しました」
「奴隷待遇の改善策により、工場生産も大幅に向上が見られます」
「帝国艦隊司令部からは、新主力巡洋艦の全艦隊への配備が完了したとのことです」
幼女という見た目だけが弱点だった玉座に座る女帝は、三年で一気に成長し、大人の女性に近づいた。世界の半分を手中に収める支配者の風格も身に付き、臣下たちの忠誠はより一層深まった。
「陛下。ご決断を!!」
「国力だけなら合衆国が上ですが、向こうは旧共和国を中心とした中小諸国の集まり」
「言わば烏合の集団。陛下の下、全臣民、心を一つにした我が帝国の敵ではありません!!」
戦前以上に回復した今、帝国に敵う者などいないと勢いづく列席者たち。
だが、熱狂的な雰囲気の臣下とは異なり、皇帝カリンと主席魔法官ネオは少し冷めた目をしていた。
その理由は、酷く慌てた様子で会議室に入ってきた兵士の言葉で判明する。
「ご、ご報告します!! 帝都の南方の空に、空中要塞ギャラルホルンを確認。まっすぐこちらに接近しつつあります」
この言葉にすぐに反応したのは、若くして艦隊副司令官に就任したホーキー中将だった。
「第二艦隊に出撃命令を出せ。世界の中心である帝都の空に、土足で踏み込んだならず者の勇者を成敗しろとな」
ホーキー中将の勇ましい発言に列席者たちが盛り上がる中、ネオは周囲には聞こえないように小声でカリンに尋ねた。
「アレ、止めなくていいのですか?」
「この場にいる連中のほとんどがあの要塞の力を直接見たことがない。ホーキー中将は優秀な奴じゃが、どう足掻いても勝てない存在がいることを知っておくのは良い勉強じゃろう」
カリンの言葉通り、空中要塞ギャラルホルンの力を知らない兵士で編成されていたホーキー中将直下の第二艦隊は、接近中のギャラルホルンに戦いを挑み、手も足も出ず敗北した。
幸いにも、ホーキー中将の見極めが早かったことで八割近くは撤退でき、要塞側も近くを飛んでいなければ向こうから手を出さないため、帝都周辺の空域に軍民問わず、飛行禁止命令を出すことで、被害は抑えられた。
だが帝都民のほとんどが、帝国艦隊が惨敗し、要塞が帝都上空を通過するという屈辱的な事態を指を咥えて黙って見ることになった。
やがて要塞が空の彼方に消えた後、絶句している列席者たちに向けて、やや自嘲気味にカリンは言った。
「分かったじゃろう。アレが、空を飛んでいる限り、戦争などできんよ。何せ、あの要塞だけでも世界を滅ぼせるのじゃからな」
イスラ合衆国首都。
上院議員用の執務室で、秘書からの報告を受けた部屋の主アリシア・オルトリンデ上院議員は、敵国の兵士とはいえ死人が出たというのに、どこか嬉しそうな顔を見せた。
その顔を見て秘書エシャルが声を漏らす。
「嬉しそうですね」
「そりゃ、そうでしょう。私はあの方の元に行くために、議員をやっているんですから」
満面の笑みで肯定したアリシア。
アマダの元に辿り着くために、国家の力が必要だと考えたアリシアは合衆国の政界に進出した。
この決断は当初、旧ユグド王国側が自分たちの政治基盤を残すため差し出したお飾りだと思われたが、周囲に知られていない人の心を読める忍者の加護は、情報こそがもっと価値のある政治面で無類の強さを発揮した。
こうして恋いに焦がれる少女は、精神的な弱さを克服し、政財界の多くの人間の弱みを握り、元々、家柄と器量も良いので、あっという間に合衆国で五指に入る政治家となった。
しかも、彼女の補佐にはあの聖女エシャルもいるので、合衆国軍最高司令官を務めるレヴァン・ゼーレスと並び、次期大統領候補の一人とまで囁かれている。
「私もですが、追い出されたのに、よくそんな顔できますね。いつまで初恋の男を、追い掛けているのですか?」
その美貌でファンも多いアリシアに恋慕する男がいると知ったら、男性の支持者が激減するなと思いながら、ぼやくエシャルにアリシアはきついカウンターを返した。
「貴方だって、私についてくれば、あの人の元へ戻れるかもしれないと考えて秘書をやっているんでしょう? 貴方の存在も私の票に直結しているんだから、私だけ責めるなんて酷いわ」
「………。」
「あの人からのアドバイスを聞いて一度立ち止まったはいいけど、いくら考えても特にやりたいことがないから、欲望に素直になって、もう一度、あの人と一緒にあの空のお城で暮らした」
「もういいです!! 私が悪かったです。ごめんなさい」
心を読まれ、顔を真っ赤にしたエシャルは、手で恥ずかしそうに顔を隠した。それでもバレバレながらも心の中で愚痴を零す。
「昔は温室育ちのフワフワした感じの、ただのお嬢様だったのに、このままでは将来、絶対悪女になるわね。めんどいわ〜」
「はいよ。砂糖とパン、それと随分前に頼まれていた本」
「ありがとよ。婆さん」
辺境の田舎街の店で、品物を受け取った俺は、代わりに金貨を渡した。
すると、お婆さんは小さな声で囁きこんな事を聞いてきた。
「上客だから、詮索したくないんだけど、アンタ、山奥に小屋を建てて一人で暮らしているんだってね。あの山で採れる物なんて大した物は無い筈なんだけど、この金はどこから出ているんだい?」
これはまた答えづらい事を聞いてきたな。
どう答えるのが怪しまれないかなと悩んでいると、店の婆さんは何故こんな事を尋ねたのかを理由を述べる。
「新聞を見たかい? どうやらあの狂戦鬼ロカが率いる空賊団がこの地方で活動してるらしいの。それで衛兵から、怪しい奴がいたら連絡してくれとお達しがあってね。アンタを疑いたくはないんだが、金の出どころが分からん以上、疑いたくなっちゃうんだよ」
ロカが空賊に転職していることに突っ込みしたくなったが、今は自分の疑いを晴らす方が先決だ。俺は適当に、自分は元貴族で命を狙われているから貯金を切り崩して生活しているという嘘話を話し、この場は納得してもらった。
あの戦いから三年が過ぎた。
要塞はソロンに任せ、俺はようやく掴んだ辺境の地でのスローライフを満喫していた。
一部の生活必需品や娯楽品は偶に街で買い、残りの必要な物質は、築城の加護とソロンからの空輸で賄っている。
欲を言えば、漫画やゲームなどの日本の娯楽品が欲しい所だが、仕事に追われず、生活費を稼ぐ必要もなく、厄介なトラブルに巻き込まれない、憧れの穏やかな日々は最高である。
街を出て、人里離れた山奥に小屋を向かう途中、ポケットから築城の加護で作成した板状の通信端末を取り出し電話を掛けた。
『はいはい、こちらソロンです。何でしょうか?』
「温泉を掘りたくなったから、いつものように無人船でゴーレムを送ってくれ」
金貨もそうだが、ソロンにはこのようにして透明化できる無人の空鯨船で物資を送って貰っている。とっても便利だ。
『了解よ。他には?』
「最近、何か変わったことはあったか?」
『襲って来た空賊を撃破したことと、帝都の上空を遊覧飛行したことくらいね』
「……空賊はどうでもいいが、帝都上空を遊覧飛行って何をしているの?」
『ちょっとした牽制よ。制空権の確保が重要な時代に、空の上に制御不能な強大な存在がいると分かるだけで、人間同士の争いを抑制できるの。もしまた戦争が起きたら大陸の端っこにあるその地も戦乱に巻き込まれるのよ。私の地道な努力を感謝してよね』
「はあ」
まあ、戦争が発生するリスクを抑えられるのであればいいか。それにあっちが目立てば、その分良い囮になるだろう。
あれだけの空飛ぶ城を持っていながら、俺が地上で悠々自適なスローライフを送っているとは誰も思うまい。
なので、頑張れとエールを送ると通話を切った。
しばらく歩き、気が付くと、山奥の小屋が見えた。
「ただいま」
俺以外に誰も住んでいないでの言っても空しいだけだが、習慣として身についているので声を出す。
すると、おかしなことに返事が返ってきた。
「おう、戻ったか。おかえり」
「……………?! お前、ユーリ・メルクリアか?!」
人ん家で、コーヒー片手に読書しながら、くつろいでいる魔王を見て思わず身構えた。
「お前、死んだんじゃなかったのか?!」
鳥肌が立ってきた俺とは対照的に、魔王は落ち着いた様子で本を閉じた。
「残念ながら、あの時のアレは死んだのではなく、天界への強制召喚だったようだ。神剣で斬られたことで向こうから干渉が可能になったと言っていたよ」
「は?」
「そして、天界で女神マキナに『君には素質がある』とスカウトされてね」
そう言いながら、メルクリアは背中を向けるとそこには一対の白い翼が生えていた。
「こうして天使となったわけだ。もっとも、まだ研修中でね。九階級ある天使の序列中では一番下の新米だよ。だが、九つある天使の階級を昇り詰めれば、世界の管理者である神になれる。その神にも三つの階級あって、その上に最高神がいるそうだ。ワクワクしないか?」
仕事をこなし、どんどん出世したのか目を輝かせるメルクリア。
どうやら彼は魔王以上の天職を見つけたようだが、ブラック臭が漂う天界には近づきたくないので、ちっとも羨ましいとは思わない。
「それで何の用だ? まさか復讐をしに来たんじゃないだろうな」
「ああ、もうあの時の事は気にしていない。そもそも、もう国も、この世界もどうでもいい。私は他の世界も知ったからね。これからはもっとスケールの大きい仕事をしたいんだ」
面白い、かつてのソロンと似たような事を言っている。
よかったな天界、君達は最高の逸材を見つけたようだぞ。
心の中で、精々頑張ってくれと応援すると同時に、きっとソロンの奴は抜かれるだろうなと呑気に考えていると、突然、メルクリアは爆弾発言をした。
「今日は、暫定的にこの世界の管理者となっている女神マキナの遣いで来た。マキナ先輩から君に直接、伝言がある。この世界の文明レベルが3に突入したから、直に魔界から悪魔が襲来してくる。本来なら、国を跨いで影響力を持つ教会の聖騎士などが対処するんだが、この世界は教会の誕生を待たずに文明レベル3に上がってしまったからかなり厳しいらしい。でも君と元女神ソロンが頑張れば何とかなるってマキナ先輩は言ってた」
……おい待て?!
「それと、悪魔達は、ゲート通って世界中のあらゆる場所に出現して人間を襲う。多分、この辺境の地にも出ると思うぞ」
ちょっと、待て、何て言った?!
聞いてないぞ。魔王を倒して終わりじゃなかったのか?
そもそも、本来なら魔王倒すのも俺の仕事じゃなかったんだぞ!!
もっと詳しい説明をプリーズ!
せめて、何かチート能力や特典もくれ!!
「じゃあ、私はこれから別の世界にあるトウキョウとかいう都市の近くにあるネズミの国とやらで行う社内イベントに参加しないといけないからもう行く。そう言えば、マキナ先輩が何百年に一度くらいはこう言った催しをしないとみんな辞めていくから、その分超楽しいとか言っていたんだけど、ネズミの国ってなんだろうか? 喋るネズミとかが住んでいる国なのかな?」
そこは知ってる!?
超知ってるぞ!!
ユグド王国が糞に思える程のめっちゃ楽しい夢の王国だぞ!
「恐らく、次戻るのは二年後くらいになると思うけど、曲がりなりにも、俺を倒した君がいるなら大丈夫だろう。おいしいお菓子でもお土産に持って帰るよ。では後はよろしく」
いや案内するから俺も連れてって。
と思わず言い掛けたが、声が届く前に、中空に現れた小さな門をくぐってメルクリアはこの場を後にしてしまった。
チートな特典はなく、代わりにネズミのイラストが入ったお菓子をくれるそうだが、受け取りは二年後。
さらに。あの感じでは女神マキナもネズミの国入りだろうから、二年間は、天界からの支援も期待できない。
その間、魔界の悪魔達が攻めてくるらしい。
やってられるか!!
一人残された俺は、怒りの叫び声を上げた。
はあああああああああああああああああああああああああ?!!!!!!!
いつになったら、スローライフができるんだよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
ちくしょうううう!!
完。
これにて完結です。
当初の予想以上に長い連載になりましたが、感想や誤字修正などの皆様の応援が本当に励みになりました。
これまで応援して下さった読者の皆様、本当にありがとうございます。
次はSF物を書きたいと思います。




