第六十五話 最終決戦3
圧倒的な存在を放つ魔王メルクリアを前に、先程まで睨み合っていた歴戦の使徒達は、一度も言葉を交わす事なく瞬時に行動に移した。
「メガ・フレア・バースト」
最初に動いたのは、賢者ネオ。
最強の魔法使いが放つ灼熱の炎がメルクリアを襲う。
中隊程度の人数を一瞬で消し炭にできるほどの高熱と炎が魔王に放たれるも、この程度の炎では防御姿勢を取る必要もないと言わんばかりに、メルクリアは何もしなかった。
事実、皮膚の一部に僅かばかりの火傷の痕ができたが、痛みも露ほど感じない素振りを見せる。
そればかりか、桁外れの再生能力により、数秒後にはその火傷の痕も消え失せた。
だが、ネオの放った攻撃をきっかけに使徒達の攻撃が始まった。
「行け! ファブニール!!」
竜騎士レヴァンは、己の愛竜に命令を下す。
しかし、人間サイズとなったメルクリアを遥かに超える巨体から繰り出される竜の一撃をメルクリアは動じることなく、片手で防いだ。
「これでお終いか?」
「いや、まだだ」
最高級の魔法武具を身にまとっているレヴァンは、自ら直接剣を振るう。今なら、片手は使えない。絶好をチャンスを逃さんとレヴァンの一閃が光る。
「捉えた」
「それはどうかな」
レヴァンの攻撃を対処するため、メルクリアは自分の右手を変化させる。長剣並みの長さとなった鋭利な爪がレヴァンの剣を受け止めた。
完全に攻撃を防いだとニヤリと笑って見せる魔王。
だが、その直後、巨大な鎌が魔王を背後から襲う。
「竜騎士さん。そのまま魔王さんの動きを止めていてくださいな」
巨大鎌の持ち主は、狂戦鬼ロカ。
エシャルとの戦闘で身体の随所に生々しい傷跡がみられるが、そんな状態だからこそ、ダメージが増えれば増えるほど強くなる狂戦鬼の加護は、本領を発揮する。
ロカにとって、他国の人間であるレヴァンはそこまで気を遣う必要のない相手だ。
だからこその全力全開。
ファブニールの出した一撃をも超える一振りで、レヴァンごとメルクリアを両断するつもりで鎌を振るった。
自分も巻き込まれることを察したレヴァンだが、両手が塞がれている今ならば、ロカの攻撃は通るだろうと、覚悟を決める。
しかしながら、それだけの覚悟を理解してるからこそ、魔王メルクリアは少し哀れみながら、こう言った。
「その程度では、余には届かない」
ファブニールを抑えているメルクリアの左手の爪が、右手と同様に長く伸びる。
右手以上に、長く鋭く伸びた爪は、そのまま、ファブニールの身体を串刺しにした。
それから、ファブニールの巨体を持ち上げて、迫りくるロカの体にぶつけた。
動作自体は簡単明瞭だが、恐るべきは、その速さ。
ファブニールの身体を貫き、ロカにぶつけるまで、一秒とかからなかった。故に、ロカは自分の身に何が起こったのか分からないまま、ファブニールの巨体に押しつぶされ意識を失った。
「ファブニール!!」
それはレヴァンも同様だ。
彼は、己の愛竜が一瞬にして何かの鋭いものによって串刺しになったのを目撃し、叫び声を上げた。
その直後、自分の剣を抑えていた魔王の左手が伸びたを認識し、ファブニールと同じように、全身を貫かれて意識を刈り取られた。
進化した魔王の爪は伸縮自在であり、動作確認を終えた魔王は、何事もなかった程の気軽な様子で両手の爪を元の長さに戻す。
だが、世界屈指の強さを持つ竜騎士と狂戦鬼を作業のように瞬殺した光景を目撃し、皇帝カリンは、近くにいた聖女エシャルに向かって声を荒げる。
「エシャル・カルスタン!! 早く私の傷を癒せ! このままでは皆殺しにされるぞ!!」
怪獣形態のメルクリアとの戦いで加護による反動でダメージが蓄積していたカリンは、自分の身体を治すように、エシャルに要請した。
超大国の皇帝と言えど、今の魔王から生き残るためには、かつて追放した者の手を借りざるを得ないとプライドを捨てた発言である。
カリンの傍にいる賢者ネオは、面白くないと感じつつも、この状況下では止む負えまいと目を閉じて容認した。
しかしながら、目の前で救いの手を求めるかつての仇敵を前に「はい、それでは」と瞬時に行動に移せるほど、エシャルは二人を許してはいなかった。
先程は、女神ソロンの指示で仕方なく助けてやったが、魔王の力がここまで増大し勝ち目がないに等しい今となっては、一族を貶め入れた仇敵が魔王の手により殺されるのであれば、それはそれでいいのでは? と考えていた。
「何をしている?!」
「そうだ。陛下がここまで頼んでいるんだぞ。早くしろ」
カリンとネオが、早く傷を癒せと自分に縋って来る様を見て、エシャルは、心の中に長年掛けて積み重なってきた復讐心が少しずつ満たされていくのを感じた。
万全の状態で挑んでも勝てる可能性はゼロに近いのに、満身創痍の今の状態では、時間稼ぎももならないと、察していたカリンは、復讐のために自分を見捨てる素振りを見せるエシャルを見て、かなり焦り始めた。
そんな光景を見て、魔王メルクリアが口を開いた。
「どうした? 掛かって来ないのか? 余の力を骨の髄まで堪能してから、あの世に行けるように、聖女の力で全快するまでならば、待ってやるぞ?」
それは、自分が負けるとはこれっぽちも考えていない、紛れもない勝者の笑みだった。
もっとも、元ゼラシード商会の情報部部長であったメルクリアは、皇帝カリンとカルスタン家の確執を知っている。
なので、魔王を前に仲間割れを見せる使徒達を見るもの一興だと、愉悦の表情を浮かべ、しばし、動きを止めた。
「ハァハァハァ」
忍者の加護を持つアリシアは、空中要塞ギャラルホルンの庭園を全力疾走で走っていた。否、何も考えず、必死になって戦場からの逃亡を図っていた。
(無理よ。無理、無理!! あんな怪物を相手に私なんかに何ができるというのよ)
庭園にメルクリアが、姿を晒したその時に、アリシアは、背中を向けてあの場から逃げ出した。
幸いにも、怪獣形態から人間形態になったことで、彼女が持つ人の心を読む忍者の加護が再び機能し始めたが、だからと言って戦闘力皆無の公爵令嬢であるアリシアにできることは何もない。
それどころか、心の底から使徒に対して何も脅威を抱いていない魔王の本心を知り、あの場にいたら、絶対に殺されると確信してしまった。
今のアリシアの心の中を占めるのは、魔王に対するどうしようもない恐怖だった。
魔王と戦う使命を帯びた使徒が魔王から逃げるという恥ずべき行為に心が痛むが、彼女は、他人の心を読むことができる加護を与えられただけの普通の少女だ。
そんなアリシアは逃走中、せめて、他にも魔王に背を向ける者がいれば精神的に楽なのにと、心の底から願っていると、後ろから自分を追い抜く速度で、見知った顔が迫って来るのに気が付いた。
「天田様!!」
(無理無理、もう勝てない!! お終いだ!!)
復活した魔王メルクリアの姿を見て、これはもう絶対に勝てないと悟った俺は、即座に逃走することを選択した。
これまでも、ピンチな場面は度々あったが、今回ばかりは、勝ち目はゼロだ。
(使徒達よ。俺がこの要塞から逃げるまで、時間を稼いでくれ)
心の中で、使徒達の健闘を祈る。いや、本当にお願いします。
等と、情けないことを考えていると、前方にアリシアが走っているのを見つけた。
どうやら、俺よりも先にメルクリアから逃げ出したらしい。
使徒なんだから戦えと、一瞬だけ思ったが、彼女の戦闘力はゼロに等しいので、口に出すのは止めた。
「アリシア。お前も逃げたのか?」
お前もという部分を強調して言ったおかげか、アリシアは少しだけ申し訳ない顔をしつつも、うんうんと頷いた。
「はい! あんな化け物に立ち向かうなんて、私にはできません!!」
「だよな! いくら何でもアレは無理だ」
自分だけ逃げることに後ろめたさを感じてはいたが、同じ考えの同志がいたのは、喜ばしい。
後は逃げるだけ、いざ行かんと、気持ちを入れ替えた矢先、近くのスピーカーからソロンの怒声が響いた。
『おい、こらぁ!! 何を逃げ出そうとしているのよ。戦いなさいよ!!!』
うるさい女神だ。神の癖に、勝ち目がないことに気が付かないのか?
「ふざけるな!! あんな化け物どうすりゃいいんだよ!!」
元々、魔王は勇者が呼び出せる神剣か、ラグナロク砲以外では殺すことはできないとされていたのに、それらの不死能力に加えて、大きさは人間サイズとは言えは、今のメルクリアは怪獣形態の時と同等の魔力と身体能力と防御能力、一撃で艦隊を消し飛ばした熱線、超速再生能力まで持つ。
勝てるイメージが全く湧いてこない。
「しかも、もう要塞内への侵入を許しているんだぞ! どう足掻いたって勝てる訳ないだろうが!!」
せめて、まだ要塞の外にいれば、時間を稼いでラグナロク砲を使用するという希望も残されていたのだが、今はその選択も取れないのだ。
こうなったら、俺に残された選択肢は一つのみだろう。
「ソロン、これからアリシアと一緒に、ダグラス船長の空鯨船の所に行って脱出するから、船が要塞から十分に距離を取ったら、この要塞を自爆させろ」
まさか、敵に攻め込まれて、拠点を自爆させるというお決まりの手段をすることになるとは思わなかったが、もうこれしか打てる手はない。
隣でアリシアが、目を丸くしている。
まあ、確かにかなり惜しいが、この要塞を自爆させれば、流石に、今の魔王でも倒せるだろうという判断だったのだが、何故か、元とは言え、世界の管理者である女神様は猛反対した。
「ふざけないでよ!! そんなことできるわけないでしょう!!!」
「もしかして、自爆機能はないのか?」
「あるわよ。確かに、この要塞の動力部をジオ・エクスニウムごと暴走させて自爆すれば、可能性は低いけど、今の魔王も倒せるかもしれないわ。……でも嫌!!」
「何で!! それで倒せるかもしれないんだろう?!」
『だって、今の私の精神は、この要塞の全システムを管理するキューブと一体化しているのよ。キューブが破壊されれば、私も死ぬの!! いくら貴方が私の主でも、こればかりは従えないわ!!』
なんだこの女神。長年に渡って勇者や使徒を焚き付けておいて、自分が死ぬのは嫌なのか。なんて器の小さい神だ。
俺は自分の事を棚に上げて、ソロンに罵倒の言葉を浴びせた。
しばらく不毛な口論を繰り広げていると、恐る恐るアリシアが声を張り上げる。
「あの~。こうしている時間も勿体ないと思うんですけど」
もっとな意見だ。自爆したくない我儘女神に付き合ってやる余裕はないだろう。
自爆の件は保留にして、一先ず要塞から退避することを決め、ソロンとの会話を中断して、その場を後にしようとすると、大きなため息をついて、スピーカーと介して、ソロンが観念した。
『分かったわ』
「何が? この要塞を魔王の棺にする決心がついたのか?」
『違うわ。この手だけは、本当は使いたくなかったけど、自爆以外で、魔王を倒す方法を教えるわ』
「要塞を残したまま、アレを倒せる方法があるのか?」
『あるわ』
そんな方法があるならば、もっと早く言えと怒鳴ったが、ソロンが教えてくれた方法を聞き、彼女が躊躇った理由が分かった。
「……なるほど。確かにできれば使いたくない手段だな」
『でしょう? 魔王を倒した後に問題が残るからね』
それでも、それが一番最善な方法だと俺も思う。
勝ち目と分かれば、恐怖も薄れていく。
俺は逃走&自爆作戦を止め、目的の場所へと急いだ。
全ての準備を整えて、再び戦場近くの茂みに戻ると、戦いは大詰めを迎えようとしていた。
「どうした、これで本当に終いか?」
戦場に立つのは無傷の魔王メルクリア。
対する使徒側は、ロカとレヴァンとネオが倒され、残るはカリンとエシャルとガルダの三人となっていたが、残りの三人も満身創痍で、チート級の治癒能力を持つはずのエシャルが治癒魔法を使う事ができないほど追い詰められていた。
「これはヤバいな。もう一分と持たないぞ」
「そうですね」
茂みに隠れ潜んで様子を伺い、使徒側の敗北がすぐそこまで迫っているのを察し、俺は、恐怖を堪えてここまで付き合ってくれたアリシアに問い掛けた。
「それで、奴は?」
「私達がここに隠れていることには気がついています。ですが、身を隠している私達と正面から戦っている使徒の方々と比べると、優先順位は低いようで、使徒の方々を始末した後に相手をすると心の中で言っています」
「やっぱり、舐められているか。そうか、ありがとう」
若干、悲しい気持ちが込み上げてくるが、油断しているのであれば、最大限利用させてもらおう。
俺は、片手を挙げて、庭園内のあちこちに設置されているカメラで、この場所を観察しているソロンに合図を送った。
するとすぐに、要塞側面の発射口から、メルクリア目掛けて十発以上のミサイルが発射された。
追尾能力を持つ魔弾フェイルノートだ。
ターゲットに命中するまでどこまでも追い掛け、命中すれば、空鯨艦一隻を容易く撃破できるほどの爆薬を積んでいるが、自分に向かって飛んでくるミサイル群を見ても、メルクリアは「その程度の攻撃が効くと思っているのか?」という顔をしている。
怪獣形態のメルクリアに対してもほとんどダメージを与えられたなかったので、彼の態度は当然だが、ソロンの援護射撃は俺の期待に十分応えてくれた。
「天田様、魔王の意識が、飛んでくるミサイルの方に逸れました」
直撃したところで効果なしと分かっていたとしても、目の前の使徒ですら敵と思っていないメルクリアにとって、この世界には存在しないミサイルという兵器は大変珍しい物のようだ。
魔王は知的好奇心から、相対する使徒達から目を逸らし、空を見上げる。
しかし、この千載一遇のチャンスを前にしても、エシャル達は動けない。
単純に爆発に巻き込まれたくないのと、魔王の意識が他所に向いていたとしても、自分達では有効打を与えられないのがよく分かっているからだ。
俺は、この状況を待っていた。
身に纏っている黒騎士装備に力を込めて、俺は大地を蹴った。
まず、ミサイル群がメルクリアに直撃する。
魔王は逃げも隠れもしない。
彼は真っ向からミサイル攻撃をその身に浴びた。
だが、この場にいた全員が予期していたように、何事もなかったかのように、魔王は無傷だった。
俺は、ミサイルの着弾によって生じた煙の中を突き進む。
身を隠せるほど煙に覆われているわけでもないため、部分的に視界が遮られたからと言って、俺の接近に気が付かないほど魔王は無能ではない。
魔王の爪が伸びて、顔を覆う兜が吹き飛ばされた。
頭部へのダメージはかすり傷程度で済み、額から血が流れるのを感じたが、歩みを止めずに、そのまま魔王の元へと突き進んでいく。
兜が消え、露わとなった俺の顔を見た魔王が、明らかに失望したかのような顔付きで告げた。
「先程から、身を隠してこそこそしている臆病者は誰かと思っていたが貴様か。ふん。どうして貴様がここにいるかは知らんが、スローライフなどという下らない野望を抱く軟弱な貴様には、欠片の興味もない」
そこで、魔王の興味は尽きてしまったようだ。
俺が接近中にも関わらず、再び視線をエシャル達の方へと移す。
この瞬間、俺は勝利を確信した。
徹底的に油断を誘うために、小物に見えるように演技をする。
「魔王、覚悟!!」
鞘から抜いた剣の名は、魔剣ダインスレイブ。
あらゆるものを溶解させるほどの熱を宿した魔剣だが、魔王メルクリアはこちらを一切向かずに、片手で魔剣の刀身部分を掴んで止めてしまった。
「……少し熱いな。それで?」
馬鹿にしたような口調で、こちらを見ずにメルクリアが尋ねてくるが、この時点で俺は、柄から両手を手放していた。
そして、瞬時にアイテムボックスから新たな剣を取り出す。
「どこから出したか知らないが、剣を変えたところで……」
言葉の途中であったが、恐らく気が付いたのだろう。
顔色を変えて驚愕していく様を見ながら、新たなに取り出した黄金の剣が、魔王の脇腹を切り裂くと同時に鮮血が飛び散り、癒えぬ傷を与えた。
初めて、魔王に致命的な一撃を与えることに成功した。
斬られた場所を抑え、吐血しながら驚きの表情を浮かべたまま、魔王は声を漏らす。
「グハッ、……そ、それを呼び出せる者は始末したはずだ。なのに、貴様如きが、何故その剣を持っている?!」
その問いを聞き、俺の脳裏に先程のソロンとの会話が蘇った。
「それで、どうやったら、奴を倒せるんだ?」
「簡単よ。機関部エリアに行って、ジオ・エクセ二ウム鉱石をアイテムボックス内に収納すればいいわ」
ジオ・エクセ二ウム鉱石とは、この要塞が有する最大戦力であるラグナロク砲の動力源になっている鉱物の事だが、怪獣形態時のメルクリア倒すために使用したばかりで、内包する魔力はほとんどないはずである。
「自然回復には半日以上掛かるんだろう? 今、アイテムボックス内に収納しても、何かあるとは思えないが?」
魔力が満タンの状態ならばまだしも今の状態では役立たずのはず、そう思った俺にソロンは、とても重要な情報を教えてくれた。
「貴方まだジオ・エクセ二ウム鉱石をアイテムボックス内に収納していないでしょう? ジオ・エクセ二ウム鉱石はね、新たなレシピを解放するためのキーアイテムなのよ」
言われて見れば、ゴーレムと麻痺ガスを用いて、ソロンが帝国からジオ・エクセ二ウム鉱石を強奪したため、俺のアイテムボックス内には一度も収納した事はなかった。
「お前の言う通りだが、レシピが一つ解放されたところで奴をどうにかできるとは思えないんだが。それにジオ・エクセ二ウム鉱石を使用して何か作るんだろう? それじゃあ、もう二度とラグナロク砲は撃てなくなるんじゃねえの?」
何を考えてるか知らんが、特殊な鉱石を一つ収納したくらいで、あの化け物に勝てるはずがない。
そんな不安を抱く俺に向けて、ソロンの放った一言は、たった一言で俺の不安を吹き飛ばすほど衝撃的なものだった。
理解に苦しむ顔をする魔王に見せつけるように、俺は黄金の剣を掲げた。
「考えてみれば、どうして俺は疑問に思わなかったのだろう? 莫大な魔力を秘めているとはいえ、勇者の召喚する神剣でしか殺せない筈の魔王を、ラグナロク砲という兵器で倒せることについてを」
歴代の勇者が魔王を倒すために、召喚したとされる神剣。
呼び出す資格を持つ者は、勇者のみだが。
そもそも、その神剣は、どこで作られ、どこからやって来るのか?
この世界の誰も知らないその秘密をソロンはあっさりと教えてくれた。
『地の底から採れる星の結晶をベースに神が生み出した剣が、神剣なの。でも、危険な代物だから普段は、亜空間に封じておいて魔王を倒す時だけ、その時代の勇者のみが呼び出せるようにしてるわけ』
つまり勇者が既に倒されてしまった今の世界でも、亜空間とやらに神剣はあるようだが、今重要なのは、そこではない。
重要なのは、神剣のベースとなる星の結晶についてだ。
星の中心部である地下奥底で、途方もないほどの長き時間を掛けて生成された奇跡の物質、星の結晶。
神々の世界では星の結晶と呼ばれるそれを、この世界ではジオ・エクセ二ウム鉱石と呼んだ。
『貴方が持つ築城の加護の本来の持ち主であるマキナ先輩は、神剣造りの達人。故に、キーアイテムであるジオ・エクセニウム鉱石をアイテムボックスに登録すれば、神剣のレシピも解放されるわ。他に必要な素材も全てこの要塞に揃っている。レシピを解放すればすぐに作れるわよ』
頭の中に蘇ったソロンとの会話をメルクリアに教えてやる義理はない。
それでも、せめて、最後にこれだけは言っておいてやろう。
「俺の勝ちだ」
満面の笑みを浮かべ、俺は黄金に輝く剣を振り下ろした。




