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第六十四話 黄昏

 ユグド王国近衛騎士団、竜騎士レヴァン・ゼーレス。


 統合軍元帥、剣聖ガルダ・ザルバトーレ。


 バイキング帝国皇帝、武闘家カリン。


 同じくバイキング帝国主席魔法官ネオ。


 旗頭となる勇者が未だに姿を見せない状況下で、世界を脅かす脅威である魔王怪獣メルクリアを倒すため、これまで互いに争い合っていた者達が、遂に手を取り合った。


 だが、強大な敵を前に心を一つにとは、残念ながら行かなかった。



「おい、また来るぞ。躱せ! 躱せ!!」


「右じゃ! もっと右!! 早く動け、あの巨大な手で殴られたら、一発でお終いじゃぞ!」



「前から気になっていたんだが、この竜、攻撃能力低くねえか? つーか、攻撃している所を見た事がねえぞ。背中に人間を乗っけることしかできないのか?!」


「鈍いのお、ウチのネオくらい俊敏に動けんのか?!」



 竜騎士レヴァン・ゼーレスが使役する赤き竜ファブニールの背の上で、好き勝手言うのは、皇帝カリンと剣聖ガルダ・ザルバトーレの二人である。


 味方陣営のガルダはともかく、加護の使用による反動で、動きが悪くなってきていた皇帝カリンは、激しい戦闘中に竜の背に乗ることで身体を休めることができるようになったにも関わらず、レヴァンに感謝の言葉一つなく、クレームを浴びせ続けていた。


 当代の竜騎士レヴァン・ゼーレスは、そんな二人の態度に苛立ちを募らせるも、周囲を飛ぶ煩わしい蚊を叩き落とそうと猛攻を仕掛けてくる魔王怪獣の攻撃を回避するために、必死になって己の愛竜に操っているので、反論する暇すらなかった。


 とはいえ、悲しいことに、この光景は、繰り返される魔王との戦いではありふれたものだった。


 何故なら、竜騎士の役目とは召喚した竜に、勇者と七人の使徒、即ち勇者パーティを乗せて、戦地まで送ることだからだ。


 竜騎士という仰々しい名前のせいで、誤解を受けているが、その実態は単なる運び屋である。


 その哀れな真実を知らないレヴァンは、遂に激怒した。


「うるさいぞ!!! そんなに文句を言うなら、今すぐ降りろ!!」


 よほど鬱憤が溜まっていたのか、本気であることを示すために、わざわざ、ファブニールの身体を揺らして警告する。


 しかし、それでも同乗者二名は素知らぬ顔を貫くが、流石にこのままではマズいと感じたのか、自分の仕事をすることにした。


「お! 熱線だな。俺に任せろ!!」


 ガルダは、自分が持つ剣聖の加護を発動させ、山すら一撃で吹き飛ばす魔王怪獣の熱線を消し去る。


「少しは体力も回復したし、ボチボチ反撃と行こうかのお」


 カリンも、ファブニールの背から砲弾のように飛び出して、怪獣の脇腹に重たい一撃を入れた。


「ハイ・エアロ・ジャベリン!!」


 またカリンの一撃に歩調を合わせて、単独で飛行していた賢者ネオも一発で複数の空鯨艦を沈める極大魔法を放つ。


 このように、統合軍側が防御と回避を、帝国側が攻撃を担当して、しばらくの間攻防が続いた。


『GYAAAAAAAAAAAAAA!!!!』


 そして、怪獣の悲鳴を上げさせることに成功する。


 苦しそうな顔を見せる怪獣を眺めながら、四人はようやく手ごたえを感じた。だが、四人共、その顔に余裕の表情は浮かんではいない。


「ここまでしても、この程度のダメージか……」


 一番多くダメージを与えているカリンが苦々しく唇をゆがめる。


 魔王怪獣の大部分を覆う甲羅は堅牢で、痛みは与えられても、これで倒せるとはとても思えないからだ。


「まじぃな~。決定打に欠けるぞ」


「ファブニールも、これ以上全力飛行を続けるのであれば、長くは持たない」


「ボクと陛下の攻撃を受け続けているのに……」


 帝国艦隊や空中要塞ギャラルホルンでも、進行を遅らせるのが精一杯であった怪物を相手に、たった四人でよくぞこれほどまで苦しめたと誇っても良い戦果だ。


 しかしながら、世界屈指の強者達と言えど、ここが限界だった。


((((勝てない))))


 強者であるが故に、自らの敗北を悟る。


『GYAAAAAAAAAAAAAA!!!!』


 魔王怪獣が再び天に向かって吠える。すると、小さな切り傷とはいえ、全身に付けられた傷口が塞がっていく。


「ハハハッ、あの防御力に加えて、再生能力まで持ち合わせているのか……」


 ミサイルやバリスタを物ともせず、女神の加護を持つ使徒達が何度も出せない大技で、ようやく手傷を負わすことができるという状況下で、傷口を瞬く間に治す再生能力まで有しているのを目撃して、流石の四人も心が折れかける。


 と、その時だった。


 ファブニールの傍を浮遊していたネオ共々、彼らを白い球体が包みこむ。


「何だ、これは?!」


「この魔法はホーリー・フィールドか?!」


「それに、これほどの高度なホーリー・フィールドを張れる人間は、この世に一人しかいない」


 突然の高レベルの防御魔法に驚く一同に、更なる衝撃が襲う。


「嘘だろ!! なんだ、この魔力は……」


「あの怪物の魔力量も、馬鹿馬鹿しいほど高いが、これは奴以上だぞ」


 かつて感じたことがないほどの膨大な魔力のする方に目を向ける。


 視線を向けた瞬間には、何もなかった青い空が、ゆっくりと透明のマントを脱ぐかのように、その姿を晒す。


「アレは……空飛ぶ島か?」


「いや、城? 都市でしょうか?」


 初めて空中要塞を目にしたガルダとレヴァンからは、その正体が掴めずに戸惑いのようなものが感じられたが、あの要塞でかつてないほどの屈辱を味わった帝国の二人は口を閉じ、敵意だけを漲らせた。





 空中要塞ギャラルホルンの指令室で、俺はソロンから待ちに待った報告を受けた。


『待たせたわね。ラグナロク砲チャージ完了よ』


「待ってました!! よし、上層庭園エリアにいるエシャルに連絡を、結界魔法であの四人を保護しろと」


『それは別にいいけど。剣聖と竜騎士はともかく、帝国の二人を助けるのはどうなの? ここで消えてくれた方が、都合がいいんじゃないの?』


 自分が加護を与えた人間だというのに、ソロンの奴は随分と酷いことを言っている。


 まあ確かに、物言わぬ怪獣と成り果てたメルクリアと一緒に、イスラ同盟国の首都を焼き払った元凶もまとめて始末してしまうべきなのかもしれない。


 ただ、戦争の行方は知らないが、ここで彼らを消してしまうと帝国側で戦争責任とかを取る人がいなくなる。


 彼らには、ここで一瞬の内に終わるのではなく、法廷の場で裁かれ長々と苦しんで欲しいので、ここは生かす様に指示を出した。


 もっとも、誰よりもあの二人を憎んでいるであろうエシャルがどう動くかは分からないが。


 などと少々心配したが、スクリーンに、四人全員をエシャルの結界が覆うのを確認できたので、ほっと一安心した。


 良かった。エシャルの奴、俺の指示に背いて見殺しにするんじゃないかと思ったぜ。


『要塞を覆っていた透明化を解除。ラグナロク砲、発射最終シークエンスに移行』


 ソロンのアナウンスと共に、ラグナロク砲の発射準備が整った。中央の大型スクリーンには、こちらを激しく睨む魔王怪獣が映し出される。


 魔王を討つ。


 これまで勇者にしかできなかった歴史的偉業だ。


 興奮しないと言えば嘘となるし、大規模破壊兵器を討つ直前というこの緊張感をもう少し味わいたいとも思う。


 しかし、今でこそ獣程度の知能しかないとは言え、あの怪獣の元となったのは、あのメルクリアだ。


『砲身への魔力エネルギー充填率100% 最終確認終了。合図があれば、いつでも撃てるわ」


 余計な事をされる前にとっと片づけよう。


「討て」


『ラグナロク砲発射!』


 最後に怪獣の口元が歪んだようなものを見た気がしたが、すぐに画面全体が青い光に包まれてから砂嵐になった。


 そして、画面が回復して、焦土と化した燃え尽きた大地と雲を突き抜けて上昇する巨大なキノコ雲を目撃した。


「どうなった?」


 画面が回復しても、これでは何も分からない。


 状況的に考えて、ラグナロク砲を再度撃つことは不可能なため、今の攻撃で蹴りを付けなければ、こちらの敗北は確定となる。


 俺は恐る恐るソロンに結果を尋ねた。


 すこしの沈黙の後、落ち着いた口調でソロンは淡々と解析結果を述べた。


『目標の消滅を確認。おめでとう、魔王メルクリアの討伐を確認したわ』


 勝利。


 それも、結構崖っぷちの辛勝だ。


 にも関わらず、歓声を上げる気分にはならなかった。


 俺はユーリ・メルクリアの生い立ちを詳しくは知らないが、魔王の力を隠しながら、軍人の身から大企業の幹部を経て、共和国の大統領にまで登り詰めた偉人の域にいる人間ではあることは知っている。


 だが、彼は魔王で裏で悪事も一杯働いていた。彼の行動によって悲しんだ者も大勢いる。


 しかも、今後はともかく、今の段階では、彼は魔王に立ち向かう英雄と見なされているというとんでもない詐欺師だ。


 俺も、二度目の邂逅時に、命を狙われ臆病者だと見下された事もある。


 それでもだ。


 彼が死んだからであろうか。


 言葉にはできないが、心の奥底では彼の事をどこか尊敬していたんだなと思い、静かに目を閉じて冥福を祈った。




 キノコ雲が少しずつ晴れ、そこにはもう何もないことが分かると、本当に倒したんだと実感した俺はぽつりとつぶやいた。


「そうか……。これで全てが終わったんだな」


 だが、長い戦いが終わり、感傷に浸っていた俺の耳に、スピーカーからソロンの声が響く。


『いや、終わってないわよ。むしろこれからが、本番じゃないの?』


 その言葉と共に、画面が切り替わる。


 映し出された光景は、思わず目を逸らしたくなるほどのものだった。


 要塞の上層、ダグラス船長達の空鯨船が着地した反対側の庭園の一角に七人の男女がいる。


 聖女、狂戦鬼、忍者、竜騎士、剣聖、武闘家、賢者。


 本来であれば、勇者と共に魔王を討つはずだったソロンに選ばれた七人の使徒達なのだが、今代の使徒達の人間関係は歴代最悪と言っても良いだろう。


『これまでの使徒達も、最初は仲が悪かったわ。敵国の騎士団長同士や、親の仇のような間柄の連中もいた。でも、魔王を倒す冒険の中で交流を深めて、互いに認め合って最後は笑顔を見せていたわ』


 最後まで言わなくてもソロンの言いたい事は理解できる。


 これまでの使徒達は、魔王を倒す冒険の中で最終的には仲良くなったが、今回はそれが当てはまらない。


 あの四人は最後の最後で少しだけ共闘したが、他の三人やその他大勢の人間の中には、憎しみしか残っていない。


 帝国と統合軍勢力との戦争の中で多くの悲劇が起きたからだ。


 ユグド王国王都での大虐殺。


 イスラ同盟国首都及び共和国各都市への空爆。


 連合軍と魔王軍の侵攻による帝国領への被害。


 帝都へのラグナロク砲の使用。


 挙げればきりがない。この戦争に多くの人間が巻き込まれたし、戦争は未だに継続中だ。


 仮に終結したとしても、賠償金やら何やらと、後始末のことなど考えたくもない。


 元々、帝国とその他の国々との間に戦乱の兆しはあったとはいえ、反帝国派の旗頭として引き金引いた張本人は、たった今ラグナロク砲で焼き払われた。


 死んだ奴に全ての責任を押し付けるには限度があるし、そもそも統合軍勢力そのものが魔王の支配下にあった事実は残る。


 皇帝の身柄は抑えたが、統合軍側の指導者が魔王で黒幕だったので、冷静に考えると、一方的に法廷の場で断罪するのは無理がある。


 もうどこから手をつければいいのか、それすら分からない。


 とはいえ、問題は山積しているものの、俺がすることは何もない。


「俺はもう統合軍とも同盟国ともユグド王国とも無関係だ。後の事は他の人間に任せよう」


『最低な発言ね』


 外野がうるさい。


 それにしても、イスラ同盟国の議長から降りていて本当に良かった。


 ユグド王国近衛騎士団員、黒騎士も王都襲撃時に死んだことになっている。


「最悪、世界中から糾弾されたとしても、この空飛ぶ要塞に籠れば誰も手が出せないだろう」


『それはそうだけど、エシャルとロカとアリシアと貴方と一緒にこの要塞に乗り込んできた船の連中はどうするの? それにエシャルの方はどうするのよ?』


 ソロンが思い出したくもないことを思い出させてきた。


 ロカやアリシア、ダグラス船長達はともかくとして、あの四人を助けるには、聖女であるエシャルの力が不可欠であった。


 そこで、ソロンに唆されて教皇の座を約束して俺を裏切ったエシャルとロカの戦いを止めるために、ソロンに、戦いを止めるように命じた。


 文句を言いながらもソロンは、女神ソロンと天田要との間に、休戦が決まったなどと適当なことを言って、エシャルとロカとの争いを一時中断させ、更に女神の名の元に、あの四人を助けろと指示まで出した。


 なので、シギン婆さんから託された遺言も全て保留状態で、エシャルは今も、一族再興のために、ソロンの言葉に従っている状態である。


「あ~あ~。もう考えたくもない。エシャル関係は全部任せた女神様?」


『いやよ。そもそも、問題を解決せず、棚上げにしてきた貴方に問題があるわ』


「それでも、エシャルを唆して裏切らせたのはお前だろ?! 責任取れ!!」


『どの口が言う。議長を辞めて、責任逃れをしているアンタだけには言われたくないわ」


 お互いに責任の擦り付けをしたが、しばらくすると、互いに無意味と悟った。



 何はともかくとして、最大の脅威であった魔王は死に、帝国も統合軍勢力もこの戦争で大きく傷ついた。


 邪魔者は消え、遂に念願のスローライフが始まるのだ。


 そのためにも、面倒ではあるが最後の仕事をするとしよう。


「それじゃ、スローライフを始めるために、あの連中を追い出すか」






 使徒達がいる庭園の一角に足を運ぶと、そこは一触即発の危機的状況にあった。


 魔王怪獣が滅び、本来の敵を思い出したのか、先程までの共闘を完全に忘れて、帝国側のカリンとネオ、帝国に敵対或いは恨みを持つエシャル、レヴァン、ガルダが無言のまま殺気をぶつけ合っていた。


 その光景を少し離れたところで見守るのは、何やら嬉しそうな顔をしているロカと、あたふたしているアリシアだ。


 ロカは知らんが、心が読めるアリシアは、この状況下では胃がとても痛いことになっているだろう。


 考えて見れば世界を代表する地位にいるあの七人全員と面識があるとはいえ、あんな空気では俺だって、近づきたくもない。


 なので、誰かに気が付かれる前に、本能的にそっと茂みに身を隠した。


 関わりたくないという気持ちから隠れてしまったが、彼らが、あの場で睨みを効かせて、ドンパチやっていないのは、スピーカーを通して、ソロンにこの要塞の主である俺がここに行くことを伝えたからだ。


 いつまでもここに隠れているわけにはいかない。


 覚悟を決めて立ち上がろうとした矢先、その声は響いた。





「余に立ち向かうべき者達が争う所を見るのは痛快だが、余が死んだから身内同士戦っているのであれば、度し難い。貴様らが戦うべき相手は、ここにいるぞ」




 聞き覚えのある声だ。


 しかし、声の主は死んだはずだ。


 恐らく、あの七人も同じ思いで、そんなまさかという衝動に駆り立てながらも、俺を含めて全員が声のする方へ目を移す。


 庭園の淵に、まるで、これからその者の時代が始まることを暗示しているかの如く、地平線の彼方に沈む太陽を背に一人の男が佇んでいた。


 初めて見た時、印象的だった黄金の髪は漆黒に染まっていた。


 下半身にはズボンを履いていたが、上半身は裸で、皮膚は雪のように白くなっていた。


 何より、人間サイズの生物が持つことなど不可能と思えるほどの膨大な魔力。


 その圧倒的な存在感は、天界で一瞬だけ本気を出した際に見せた女神ソロンにも匹敵すると俺の本能が告げた。


 そう感じたのは俺だけではなく、つい先程まで、互いに敵意を向けていた使徒達も、その圧倒的な存在に完全に飲まれ、言葉一つ発せずにいた。


 黄昏が舞い降りる。


 辺りは薄暗くなり、人の顔が見分けにくくなるが、彼を間違う者はいない。



 男は、ラグナロク砲によって死んだとばかり思っていた魔王メルクリアは、この要塞よりも高い位置に浮ぶ雲に向かって左手を広げる。



 左手から魔法陣のようなものが展開し、その数秒後、広大な庭園全体を暴風が吹き荒れ、真っ赤な熱線が放たれた。


 空に輝く星々を撃ち落とす勢いで放たれた熱線は、雲の中心部を吹き飛ばし、巨大な穴を開ける。


 こちらは、熱線の余波から身を守ることで精一杯だというのに、メルクリアの方は何やら満足気な顔をした。


「素晴らしい。これならもう組織内で暗躍したり、配下を率いて敵を滅ぼす必要もない。余一人で全て事足りる」


 その言葉に嘘偽りはない。


 俺から見ても、今のメルクリアであれば、一人で何でもできるであろう。


 絶望的な状況に陥っているのを感じながらも、ラグナロク砲に焼かれて死んだはずのメルクリアに一体何が起きたのかという疑問を抱いた。


 その答えは、すぐに本人の口から明かされた。


「この空飛ぶ要塞が放った閃光を受けた時、あの姿になって初めて死を感じたことで、限界を超える魔物との融合により消失した自我が蘇った。そして、あの閃光によって身体が焼かれるのを感じながら、余は最適の姿を模索した。力を残したまま、十万を超える魔物とそのまま融合し肥大化した余分な部分を削ぎ落して、こうして人間サイズまで身体を縮めることに成功したのだ」


 最悪だ。


 つまり、今のメルクリアは、あの知性の欠片もない怪獣時と同等の力を持った人と言ってもいいだろう。


 桁外れの防御力と再生能力を持ちながら、巨大な図体と鈍重な動きのせいで付け入る隙がまだあったが、こうなったら、もう手の施しようがない。


 ここに文字通り歴代最強の魔王が誕生した。




 一通り説明したメルクリアは、絶望しきった使徒達の顔を見て、ニヤリと笑う。


「余は物語でも見かけるご都合主義的な展開は嫌いだが、実際に当事者となると、中々、どうして悪くない。魔王を殺せる唯一の武器である神剣を召喚できる勇者は既に始末した。残る敵は使徒と女神のみだが、それら全てがここに集結している」


 勇者が既に死んでいることを俺は知ってはいたが、使徒達は知らなかったため、今の言葉で顔はより一層険しくなる。


 そして、メルクリアは最後に、こう宣言した。



「今日、余に歯向かうことができる可能性を持つ邪魔者は悉く死に絶える。貴様らを殺し、この要塞の奥に隠れ潜んでいるであろう女神も殺す。その後、女神が用意したであろうこの要塞を、世界を支配する余が居城として使うことにしよう」




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