第五十話 降臨
バイキング帝国皇帝カリンの右腕にして、当代の賢者、帝国主席魔法官ネオ。
突入した空中要塞で不覚にも落とし穴に嵌り、落ちた先で待っていたのは、自身が裏切ったかつての主君の娘であるエシャル・カルスタンだった。
久しぶりにその姿を見たが、代わり映えしない胸を除けば身体の方はより一段と美しく成長していた。
昔から、顔が整っていると感じてはいたが、ネオが心底敬愛するカリンとは違った方向ではあるが、甲乙を付けるのが難しいほどの美少女に成長している。
が、ネオはエシャルの姿を見て哀れみを覚えていた。
(未だにカルスタン家に縛られているのだろうな)
どこの国でもそうだが、貴族の家に生まれた以上、私心を捨て、家のために尽くすのは当然と言えば当然の事だ。
しかし、以前ネオが彼女に求婚した時もそうであるが、エシャル・カルスタンという少女は、それが異常だ。
ご破算となったが、六十過ぎのドーハン公爵との結婚を二つ返事で了承したことからも分かるように、ネオは前々から、この銀髪の少女はカルスタン家に囚われ過ぎていると感じていた。
「少し見ぬ間に随分と立派に成長されたようで、ボクも嬉しく思いますよ」
上辺だけの、薄っぺらい挨拶だった。
ネオとエシャルの関係は、言ってしまえば、奴隷とその奴隷の主の娘である。それだけではなく、奴隷の方が反旗を翻し、主を処刑し一族を国から追放までしてしまった。
以前のような、良好な関係を修復するはほぼ不可能だし、お互いに修復する気などサラサラないだろう。
それでも、ネオが一応、頭を下げて挨拶をしたのは、自分のことを認めてくれなかったかつての主人達が、今惨めな立場に追われていることを、純粋な気持ちからざまぁと見下したかったからだ。
「それで、追放された先のイスラの森はどうでしたか? 何やら、頑張っていたようですが、ボクが聞いた限りでは、またも隅に追いやられたようですね? 帝国でも敗れ、新天地でも敗れ、あの世におられるシド様もさぞ無念でしょうね?」
勿論、ネオも帝国情報局を通じて、カルスタン家がイスラ同盟国建国の立役者となったものの、その後フェンリル傭兵団との派閥抗争に敗れたことは知っていた。
また、今の自分には皇帝カリンがいるとはいえ、何やかんや言っても、ネオは賢者である自分の求婚を断って、六十過ぎの爺さんと結婚することを選んだエシャルのことを今も恨んでいた。
なので、シギンと再会した時より以上にエシャルを煽り、甚振ることにした。
「ふふふ、それにしても、かつては帝国の英雄などと持て囃されたカルスタン家が今では運送商会ですか?落ちるところまで落ちましたね。まあ、今の居場所が底だといいですけどね?」
ざまぁ見ろと盛大に嘲笑ったが、エシャルが何も言い返して来ないため、若干不機嫌になる。
「おや反応が薄いですね? 名門カルスタン家をここまで愚弄されたのですよ。プライドの高いシギン様でしたら一瞬でブチ切れますよ? それに比べて次期当主であるエシャル様からは、何か一言ないのですか?」
ここまで自分の家を馬鹿にされれば、何処の国の貴族の人間でも、不機嫌な顔をして、反論して来そうなものだが、何故かエシャルは一切に意に帰さずに無反応なままだった。
「チッ、今のボクは皇帝の右腕、一方、あなた方は追放された地でも内部抗争に敗れて運び屋をしている有様、ボクの方が偉いのに、何故、あなたは少しも悔しがる素振りを見せないんだ!!!」
自分の家を侮辱され激高して向かってくるエシャルを返り討ちにしようと考えていたネオは、大いに苛立ちを募らせた。
「少しは何か、言ったらどうだ!! 元帝国貴族とはいえ、家名を侮辱されたのだから……」
と、言い掛けた瞬間に、部屋中の壁や床から黄色い煙のような噴出し、部屋全体に充満した。
「ゴホッ、ゴホッ! 何だ、この煙は?!」
煙は、視界を遮るほどのスピードで急速に広がっていく。
目くらましかと考え、大して警戒していなかったせいで、煙を吸い込み咳をする。その瞬間、身体に異変が起こった。
「何だこれは、身体が動かない……」
全身が痺れて床に倒れるネオ。
「い、いったい、何が」
何が起きたと混乱するも、これではエシャルの方も無事では済まないと予想するしたが、轟音と共に、煙が部屋外に排出され視界が晴れると、何事もなかったかのように立つ、銀髪の少女の姿が目に飛び込んできた。
立つ事すらできずに地に伏すネオとゆっくりと近づいてくるエシャル。そして少女は口を開く。
「どうですか? 今吸い込んだ煙、私の手作りですよ。昔のことですが、覚えていますよね? 私がポーションのような魔法薬を作るのが得意なことを。痺れ薬を調合し、聖女の加護で極限まで効果を高め、煙に変え、部屋中に噴出したのです」
社会的立場はともかく、この場においては逆転しましたねと言わんばかりの良い笑顔だった。
「聖女である私であれば、あなたの賢者の加護で強化された魔法を正面から防ぐことできますが、こちらには攻撃手段がほとんどございません。ですので、あなたが調子に乗っている間に仕掛けさせてもらいました。その痺れ薬の効力は三日ほど続きます。勿論、私が回復魔法を施せば、すぐに動けるようになりますが」
「み、み、か、み、か」
三日、三日も続くのか!!
呂律も回らなくなったネオは、頑張って声を出すが、その声がエシャルに届くことはなかった。
「安心して下さい。私は聖女、命までは取りませんよ」
時間は、空中要塞が王国領からイスラ同盟国の首都へと移動していた時まで遡る。
カルスタン家のために、有益な情報を少しでも得ようとエシャルは、要塞内の中層を散策していた。
これは、そんな時に起きた出来事だ。
『エシャル様、少しよろしいでしょうか?』
「うん? どうしましたか? シビラ様」
この要塞を管理する管理AIシビラと、指令室だけでなく要塞内にいくつも設置されているスピーカーを通して会話することができる。
エシャルは最初、夕食の用意が整った連絡かと思ったが、その予想は外れた。
『あなただけに、お話したいことがございます』
「私だけに?」
この管理AIシビラが得体の知れない存在であるものの、要塞の主である天田の命令には逆らえないことはエシャルも知っていた。
それだけに、天田の連れの一人にしか過ぎない自分を指名してきたことに疑問を持った。
「一体、どのようなお話ですか?」
『カルスタン家の復興についてです』
「?!!」
シビラの行動は怪しいが、このたった一言でエシャルの心臓は飛び跳ねて、懸念は消え去った。
帝国を追放され、イスラの森でも再起を図ったが、結局はフェンリル傭兵団に敗北し、今では政治権力から放逐され、商人にまで落ちぶれた。
帝国屈指の大貴族だったのが嘘のようにカルスタン家は没落してしまっている。
表には出さなかったが、エシャルはこの現状を苦々しく思っていた。故に、すぐに話に飛びついたのは言うまでもない。
「具体的には? ここまで落ちぶれた私達をどのようにして復権させるのですか?」
貴族として帝国で返り咲く。カルスタン・エアライン・サービスの事業を拡大する。どちらも成功する見込みが低い話だ。
確かにカルスタン・エアライン・サービスは、目下、空鯨船を有する唯一の運送商会だ。だが、この戦争が終われば、各国は空鯨船を使ったビジネスに参加するだろうが、そうなった時、統合軍勢力の中でも爪はじきにされたカルスタン家に居場所はあるのだろうか?
今のカルスタン家に政治的な影響力はほとんどない。
エシャルは、また追いやられるのではと、強い危機感を抱いていた。
だが、現状を打開したくとも、目指す理想像もそのための手段も思い浮かばない。
決して表には出さず、アリシアも覗かなかった心の奥底で一人悩んでいたエシャルに、シビラは救いの手を差し伸べてきた。
『女神ソロンの教えを、正しく人々に伝える宗教組織などいかがでしょうか?』
「?!!」
それは想像を遥かに超える提案だった。
魔王を立ち向かう力を与えてくれる女神ソロンの事を、この世界のほとんどの人間が敬ってはいるが、ソロンを崇める宗教組織というものは今までに存在してこなかった。
勿論、歴史上、何度か小さな宗教組織は誕生したが、その度に、権力を奪われることを恐れた時の為政者達に駆逐されていた。
『この要塞が本来の姿を取り戻せば、魔王ですら敵ではありません。女神の代行であるこの要塞の力によって人々を畏怖させ、この天空を飛ぶ大要塞から、カルスタン家が迷える者達を導くのです』
なるほど。シビラの言うように、武力面に関しては問題がないように思われるが、気になることがあった。
「アマダ様はこのお話を知っているのですか? あの方のお許しがなければ、貴方は何もできないと思いますが?」
『ああ、この提案はマスターの耳に入れていません。ですが、問題ありません。あの男は、めんどくさい組織運営に興味を示さないでしょうから』
まるで、アマダの事をよく知っているような物言いだったが、そのことを指摘する前に、シビラはエシャルの心を大きく揺れ動かす事を言ってきた。
『七人いる使徒の中でもっとも格上とされるのが聖女です。バイキング帝国初代皇帝に代表されるように、歴代の勇者達の多くが魔王を撃破した後に、聖女と結婚していますからね。故に、今代の聖女であるあなたが教皇となり、カルスタン家の人間が組織を運営する。悪い話ではないと思いますが?』
「教皇……」
その言葉は、何故かは分からないがエシャルの胸に強く響いた。
エシャルはしばらく悩んだ。
自分の父親シド・カルスタンは、一時は帝国の最高権力者にまで登り詰めたが、最終的には自分が擁立した皇帝カリンに敗れた。
一族ごとイスラの森に追放された後は、亡き父に代わり、カルスタン家を率いることになった祖母シギン・カルスタンもまた、イスラ同盟国内の権力闘争で、ゴードン・フェンリルに敗れた。
これまで、カルスタン家に忠実に従ってきたエシャルにとって当主である二人は、命令に従うことが当然である絶対者だった。
しかし、父親も祖母も敗北者だ。
シギンはまだ生きているが、エシャルには祖母がここから挽回できるとは思えなかった。よしんば、祖母の目論見通りに魔王の正体を突き止めても、それだけでは復権できるほど世の中甘くはない。
「……確かに、私が動く時が来たのかもしれませんね。ですが、その前に一つ確認しておくことがあります」
『何ですか?』
「あなたは何なのですか?」
エシャルの問いに、シビラは小さな笑い声と共に答え、エシャルは管理AIシビラの正体を知った。
それから、エシャルとシビラと密かに取引を交わした。
互いの目的達成のために結ばれたこの取引を知る者は、この時は誰もいなかった。
「こ、これは一体どういうことだ?」
管理AIシビラの指示通りに、俺は上層の庭園にて、黒騎士装備を纏い無数のゴーレム兵団を率いて皇帝カリン率いる部隊と決戦をしていたはずだった。
だが、戦いの最中に、突如、半数近いゴーレムが自爆し、黄色い煙のようなものが戦場に漂った。
風が吹いていたため、煙が戦場を覆った時間は短かったが、視界が開けたと同時に、俺を含めて戦場にいた人間全員が地面に倒れた。
症状の程度はあるようだが、身体が痺れて動けないのは全員に共通しているようだ。あれだけ強かった少女皇帝でさえ、全身を震わせながらも地に伏していた。
くそ、身体が動かない。
間違いなくシビラの仕業だ。
俺ごと麻痺効果のある煙を吸わせて、侵入してきた敵部隊を無力化したのだろうが、シビラは侵入してくる敵部隊をゴーレム兵団を率いて倒してくださいとしか言ってこなかった。
結果だけ見れば、大成功に見えるが、こんな事するなど一言も言っていない。
俺の指示なく勝手に動くなと念入りに命じたにも関わらずだ。結果オーライとは言え、これは見過ごせない。
何を考えているのか問いただそうと決めた矢先、一体のゴーレムが俺の目の前に移動して音声が流れてきた。
『ご気分はどうですか、マスター?』
今まで、ゴーレム経由で声を出して来なかったが、この電子音声は間違いなくシビラのものだ。
「ど、どう、いうつもりだ」
『聖女に作らせた痺れ薬から作成した麻痺煙玉は予想通りの効果を発揮していますね』
聖女だと?エシャルが関わっているのか? 何も聞いていないぞ。
いや、それよりも、俺の命令に従うと言っておきながら、こいつは明らかに命令に背いている方が問題だ。
「お、おまえ、なんだ?!」
『おや? まだ気が付かないのですか? ふむ、これではどうでしょう?』
そう言うと途中から、いつもの機械を通した電子音声のような声から、人の喉から出たような生の声に切り替わった。
そして、俺はようやくシビラの正体を悟った。
「まさか、め、がみ、さま?」
『正解よ。天田要さん』
「こ、これは、どういう。だって、あなたは、このせかいには干渉、できない、はずでは」
そうだ。女神様は自分では直接干渉できないからこそ、わざわざ魔王の正体がメルクリアだと教え、この空中要塞を建造するために色々と支援してくれたはずなのだ。
それが一体何故?
完全に理解が追い付かない中、女神様は勝ち誇ったかのように告げた。
『実はあなたに加護を与えた時は、私もまだ知らなかったんだけど、その築城の加護が何のためにあるのか知っている?』
「な、なんの、ひとりで、かいたくするために」
『違うわ。築城の加護の最終目的は神の城を築くことにあるんですよ』
神の城。
そういえば、この加護の説明を読んだ時に一番最初に書かれていた。今まで、何だかよく分からなかったので放置していたが、今ならば理解できた。
『神の城。各種兵器や娯楽施設はおまけで、その真の役割は、下界に神を降臨させるための一種の装置です。もっとも、それは肉体や権能を持ったまま下界に降臨できる文明レベル7以上で建造できる城の話で、文明レベル3に該当するこのギャラルホルンでは、ご覧の通り、天界から要塞の機能に干渉するのが精一杯ですけどね』
「では、かんり、えーあい、しびらとは?」
『前回あなたを招いた際に、築城の加護の説明欄に少々手を入れさせてもらったわ。空中要塞ギャラルホルンの場合、その世界を担当する神が要塞を自由に操作できると書いてあるのを知れば、あなたがこの要塞を建造するのに躊躇すると思いましたからね。ああ、それと短い間だったけど中々、楽しかったわ、AIごっこ』
くそっ、まんまと利用されたわけだ。
俺の命令に従えなどと言ったが、最初から全機能を掌握していたので、何一つ聞く義理はなかったわけだ。
だが、そうなると疑問が浮かんだ。建造した直後に俺をこの要塞に招く必要はなかったはずなのだ。それに女神はこの要塞を使って何がしたいんだ?
「も、もくてきはなんだ?」
『目的? 決まっているではないですか。魔王の打倒。そしてこの世界の文明レベルを上げることよ』
魔王打倒、それは分かる。しかし、文明レベルというのはよく分からない。それは築城の加護に関係するものではなかったのか?
「ぶんめい、れべる?」
『そう。自分の担当する世界の文明レベルを上げることこそが神々の仕事なのです。魔王や勇者というのは、今の文明レベル2においての話。文明レベルを3に上げるための条件の一つが世界に影響を与える巨大宗教の誕生。自然発生する魔王と神が用意する勇者と使徒の戦いは、そのための礎に過ぎないのよ』
何か、この世界の秘密が明かされたが、今の俺にとって、そこまで重要な話ではなかった。
視線を変えると、身動きが取れない帝国軍兵士達が残ったゴーレムに担がれて、どこかに運ばれていくのが確認できた。俺も同様にゴーレムに担がれ運ばれていく。
「それで、これ、から、どうする、つもりだ」
尋ねると、俺を担いでいたゴーレムからシビラの声が聞こえてきた。
『前々から候補に決めていたエシャル・カルスタンとアリシア・オルトリンデ。どちらがこの私、女神ソロンを讃える宗教組織の長に相応しいのかをこの要塞に招いて直接会話し判断したわ。そして、エシャル・カルスタンに新時代の旗頭を任せることにしました』
エシャルだと!! そうか、麻痺煙玉といい、事前に話がついていたのか。
『いいですか。この空中要塞ギャラルホルンは、悪しき魔王を倒した世界救済の象徴となるのです。そして、この要塞を拠点に女神を讃える巨大宗教組織が生まれるのです。この世界の歴史では何度か宗教組織は誕生しましたが、その度に強欲な時の為政者達によって滅ぼされてきました。ですが、今度は大丈夫。私が直接管理するこの要塞を落とすことができる者など誰一人としていないわ!!』
気が付くと、帝国の超弩級艦が停泊している船着き場の一つに辿り着いた。ゴーレム達が抱えていた兵士達を次々に艦内に放り投げているところを見るに、いつの間にかに、この艦も制圧していたようだ。
他と同じようにゴーレムに担がれているロカとアリシアの姿も確認できた。エシャルの姿は見当たらないが、女神の側についたのであればこの場にはいないのだろう。
『一応言っておくと、私のミスであなたをこの世界に送ったのは本当の事よ。あの時は申し訳ない気持ちで一杯だったけど、あなたを送り出した後、先輩から貰って、ずっとほったらかしにしていた築城の加護について調べて、加護の力で建造できる要塞ならば、魔王の撃破も念願の巨大宗教組織の創設も容易だと分かり心が踊ったわ。それから二度目の接触で、あなたに要塞を造る事を勧めたけど、チンタラしているから、定期的に思念波を送って一刻も早く要塞を造るように仕向けたわ』
なるほどな。
最初は謝罪の気持ちがあったが、自分の目的が達成できると分かると、俺を唆して莫大な資源を必要とするこの要塞を作らせたのか。
完全に利用されたわ。
だが、メラメラと怒りの炎が燃え上がるも、次の女神の言葉で一気に鎮火してしまった。
『でもいいじゃない。あなたの望みは人がいない場所でスローライフを送ることなのでしょう? そんな人間に、こんな危険な要塞の主が務まるのですか? 加護は持ち主が死亡するまで回収できませんし、築城の加護を持って今度こそ辺境の地に行ったらどうですか?』
何も言い返せなかった。
そもそもの始まりが、スローライフなのだから。そう考えると俺は今まで何をしてきたのだろうか?
国を作って戦争をして、元首の座を捨て騎士になって、遠回りばかりしている。女神の言葉にも一理あった。
そうこうしている内に、俺も艦内に放り込まれる。
『この艦を動かせるように数体のゴーレムを乗せておいたわ。麻痺が消えるまで三日ほど掛かるけど、それまでは耐えてね。さてと、あなたとはこれでお別れですが、あなた達が上層で戦っている間に差し向けた別動隊のゴーレムの活躍で、ようやくジオ・エクセ二ウム鉱石の入手に成功しました。折角ですから、最後に面白いものを御見せしましょうか』
全ての人間を帝国の超弩級艦内に放り込んだのか、静かにハッチが閉まっていく。身体は動かないが、近くにあった窓から外の景色が見えた。
艦が動き出し、ゆっくりと空中要塞ギャラルホルンから離れていくのが確認できた。
やがて、要塞全体を見渡せるほど距離が開いた辺りで、要塞の下部から細長い砲身のような物が伸びて、45°くらいで曲がった。
そして次の瞬間。
青色の光弾が放たれて、真下にあるイスラの森に命中。激しい閃光と爆音、艦全体が揺れるほどの爆風が吹き荒れ、最後には、巨大なキノコ雲が天高く舞い上がった。
この圧倒的な威力を見て、瞬時に悟った。これが魔王すら葬れるというラグナロク砲だという事を。
世界最大と言われるユグド王国の王都ですら一撃で破壊できるほどのとてつもない威力だ。
俺の傍にいた帝国軍の兵士達も身動きが取れない中、目を丸くしつつ、この光景を眺めていた。
身体の痺れがなくとも、誰も声一つ出せなかったであろう。それほど衝撃的な光景だったが、まだ終わりではなかった。
この艦の操舵をしているとゴーレムを通じて言葉を届けているのだろう。最後に、伝声管から女神の声が聞こえてきた。
『あなた達を生かしているように、神である私は下界の人間を殺さないように、極力心掛けていますけど、時と場合によっては、仕方がない時があるわ。これより、空中要塞ギャラルホルンはバイキング帝国の帝都に移動し、ラグナロク砲を発射。帝都で戦っている全ての軍隊と帝都ごと、かの地にいる魔王を消し去ることを宣言します』




