第二十四話 決戦ドリュアス要塞 後編
イスラ同盟軍所属の空鯨船、ワルキューレ級二番艦のブリッジにて。
「艦長。本艦はどうしましょうか?」
ブリッジにいるクルーは、右側にいる旗艦の方を指差す。
現在、旗艦は後方からの敵艦の突撃を許し、内部で白兵戦を繰り広げているのだろうことが容易に想像ついた。
「助けに行かなくてよろしいのでしょうか?」
旗艦には艦隊司令官のゴードンと議長のアマダがいる。二人に何かあれば、圧倒的優位に事を運んでいる同盟軍は一気に窮地に陥るかもしれない。
故に指摘したクルー以外にも、ブリッジにいるクルーのほとんどが不安そうな顔をして艦長席にふんぞり返っているロカの方を見つめるが、代わりにロカの隣に立つ銀髪の少女エシャルが返事を返した。
「残念ながら、我々には旗艦の心配をしている暇はありません。正面を見なさい。気を抜いたらお終いです」
共和国艦隊の生き残りは、旗艦に突入した艦の援護をするべく全速力で同盟艦隊の方に突入してきていた。
「お姉様の言う通りよ。インドラを使えば敵の空鯨船を潰すのは簡単だけれども、一隻でも討ち漏らして、特攻を許せば、こちらの艦隊は一気に瓦解するわよ」
一刻も早く旗艦に接舷して援軍を送りたいところではあるが、ロカとエシャルの言うように、一方的に敵艦を葬れるといっても、攻撃の手を緩めて持ち場を離れるほどの余裕はない。
また、インドラの発射口を制圧されたようで、旗艦からの攻撃も止まっているため、迎撃できる艦が一隻減っているのも痛い。
共和国艦隊も最大の好機を生かすために、懸命な特攻を仕掛けてくる。それに対応するためにも、残りの六隻全てが敵艦隊を殲滅するまでは旗艦への救援に行けないのだ。
なので、ロカもエシャルも、救援に行けないことに歯痒い思いをしつつも、敵艦の迎撃を命令する。
と言っても、他のクルーとは違って二人はある程度楽観的に考えていた。
「まあ、議長もいるし、何とかなるでしょう」
「ええ、アマダ様ならば、何とかして下さるでしょうね」
同盟軍艦隊旗艦ワルキューレ艦内、後部中央通路にて。
元フェンリル傭兵団の幹部で、今は国防委員会の幹部の一人を務めるジェイスという男は、ワルキューレ号内にある中央通路に一人陣取っていた。
この艦だけに限れば戦況は劣勢だ。
敵の侵入を許した旗艦ワルキューレは、重要な場所を次々と奪われている。
それでも、ここだけは守らないとならない。
なにせ、ジェイスのいる場所を抜かれると、ブリッジまで、すぐに到達されるからだ。
艦隊司令のゴードンと評議会議長のアマダの身柄が敵の手中に堕ちれば、ここまでの勝利が一瞬にして無に帰す恐れがある。
自分こそが、最終防衛ラインと自覚した矢先、共和国の兵士達が通路の先から真っ直ぐに向かってくるのが視認できた。
「いたぞ!」
今いる中央通路は長い一本道だ。正面だけを気にしていればいい。
奇襲や暗殺に特化しているのだろうか、共和国の兵士達の装備は短剣やナイフなどの至近距離で素早く敵を処理できるようなものだらけで、身を守る盾も、遠距離系の武器も一つも確認できない。
問題なく攻撃できると判断したジェイスは、勝ったと心の中でガッツポーズをし、杖を構えて急いで魔法の詠唱して解き放った。
「ファイアー・エクスプロード!」
長い通路を激しい炎が包みこんだ。
元フェンリル傭兵団において数少ない魔法使いであるジェイスが放った魔法は、言うなれば一直線に放たれる火炎放射だ。
広い場所ならば、左右に逃げればあっさり回避できるが、洞窟や通路のような、狭く一直線な場所であれば、回避不能の一撃だ。
そして、突入してきた共和国の兵士に魔法使いはいなかった。なので、彼らは防御魔法を発動することもなく、悲鳴を上げて黒ずみになった。
「よし、これならば、しばらく持つぜ」
難無く敵を倒して、少しだけ余裕の表情を見せるジェイス。
当分は一人で凌げると予想した彼の前にまた新たな共和国兵士と思われる者が走ってくる。
「何度来ようと同じだ馬鹿め。焼き焦げろ!!」
先程と同様に、火炎放射が通路全体を包みこむ。
新たな焼死体の完成だと確信したジェイスであったが、次の瞬間、炎の中から飛び出してきた男の剣によって切り伏せられ、彼の意識はここで途切れた。
ジェイスを斬り殺した男、剣聖ガルダ・ザルバトーレは、中々の腕だったと評価しつつ僅かに頭を下げてジェイスの死体に謝罪する。
「悪いな。俺に魔法は効かん」
剣聖の加護が持つ力。それは魔法に対する絶対耐性だ。
どんな魔法を受けてもガルダ・ザルバトーレの身体は傷一つつかない。しかも、任意で加護の力をオフにできるため、しかも、味方の強化魔法なんかは、問題なく恩恵に与れる事もあり、全ての魔法使いにとって天敵とも呼べる存在なのだ。
遅れてやってきた部下達が来たのを確認すると、ザルバトーレは気合を入れ直した。
「行くぞ。どうやらブリッジはこの先のようだ」
SFやロボット物の漫画やアニメにおいて、どれだけ強力な巨大要塞や戦艦に乗りこんでいても、内部への侵入を許した場合、大抵は敗北する。
主人公側が犠牲の果てに何とか突入してくるのを鑑賞している分には楽しめるが、実際に攻めれる立場を経験している今、微塵も楽しめない。
もし俺が最高指導者とかでなく、一般クルーだったら、さっさと一人逃亡を図っていただろう。
それくらいピンチなのだ。
侵入してきた敵部隊はさぞ優秀なのだろう。
現在ワルキューレ号は、未だにブリッジは健在であるが、それ以外は次々と占領を許している。
その中でも特にマズイのは、空爆用の爆弾がたんまり積載された格納庫だ。ここを奪われた時点で、相打ち覚悟で起爆されたら全員お陀仏である。
他にも、艦内の飛行ユニットを奪われているのもヤバい。
何故なら、飛行ユニットの操作自体はブリッジからできるが、艦のあちこちにある飛行ユニットを直接破壊されるとワルキューレ号は空に浮く事ができなくなり地上に落下してしまう。
そして地上には、数万を超える敵の大軍が無傷で待って居る。
オワタ。
もうダメだ。
日本での知識を持つ俺の視点から見ると、侵入を許した時点で、既に負けが確定しているのだ。
敵の判断次第で、いつ死んでもおかしくない。
極度の不安で胃袋が痛い。トイレに行きたい。吐きそう。つか逃げたい。
でも、不運な事に今の俺の立場は、イスラ同盟国の評議会議長。
今まで碌に指示も出さずに、艦隊司令官から奪った艦長席に偉そうにふんぞり返っていた国家の最高指導者がみっともない真似を晒せば、どうなる事やら。
コツコツ積み上げてきたイメージを崩すのも嫌なので、仕方なく、ここは気丈に振る舞う事にした。
「大分、追い詰められているようだが、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。このゴードン・フェンリル。全軍の司令官を任された以上、必ずや侵入してきた敵を排除いたします」
ほう、他のクルーはどいつもこいつも、この世の終わりのような顔をしているのに、ゴードン的にはまだまだ巻き返せるのか。
すごいな。流石は歴戦の傭兵だ。もう後の事は、全部任せよう。
他力本願?責任転換?
知るか!! そもそも元社畜に聖人君子のような善人みたいなことを期待するな!
何でもかんでも仕事を引き受けていた社畜時代とは違う。
ここは日本ではない。異世界だ。
スローライフの実現と自分の幸せのために、他人に犠牲を強いる生き方に鞍替えしても何も問題ないだろうと改めて自分の今後の人生の方針について強い決意をするが、それにしても本当に良かった。
ここで、自分にはもう無理なので今から指揮を代わって下さいなんて言ってきても、俺にもどうすればいいのか分からない。
というか、委員会なんて糞みたいな組織を作りやがってと思っていたが、よくよく考えてみれば、各委員会は、強力な権限と引き換えに、自分の仕事に対する責任を負うはずだ。
だから、本人も大丈夫と言っているし、ここは国防委員長にして艦隊司令官であるゴードンに全てお任せしよう。
などと、完全にゴードンに丸投げして大船に乗った気でいたのだが、
「全員、動くな!!」
「ば、馬鹿な。早すぎる……」
必死にブツブツに呟いて思案していたゴードンを眺めていたら、共和国の兵士達がゾロゾロとブリッジの中に入ってきた。
クルー達は、勝ち目はないとその場で両手を挙げて、抵抗の意志がないことを示したが、流石に俺の隣に立つゴードンは、共和国の兵士達に向かって吠えた。
「ジェイスはどうした? あいつがいれば、ブリッジだけはしばらく守れたはずだ?!」
ジェイスっていうのは、確か火炎放射の魔法が得意な奴だったかな。
ゴードンの言うように、俺も通路にあの男を配置していれば、こんなにも早くブリッジまで敵を許すことになるとは思わなかったが、最後にブリッジに入ってきた男がその答えを教えてくれた。
「あいつ、ジェイスっていうのか。やはり名前くらいは聞いておくべきだったかな」
明らかに他の者とはオーラが違う。アクション物の洋画に出てくるような屈強で存在感のある男だった。
「な、ガルダ・ザルバトーレか!」
「よう、ゴードン・フェンリル。直接会うのは十年ぶりかな」
今の会話で、男の正体を知って納得した。
なるほど、こいつが剣聖にして敵の最高司令官か。
最強の使徒直々の登場に味方の兵士もガタガタ震えていた。まあ、見た目からして強そうなおっさんなので無理もないか。
艦長席に偉そうに座っていなければ、俺だって怯えていただろう。というか、このおっさん見た目からして絶対強いな。
「お前は大将で最高司令官じゃなかったのか!? どうしてこんな所にいる?」
「ふん。お前だって、昔はよく自ら敵陣に突入していただろう。適材適所って奴だ。まあ、六個軍団もいるくせに、司令官自ら突入しなければならないほど、共和国軍の質は落ちたのかと言われると何も言い返せないがな」
「くっ……」
「ともかくこれで詰みだ。悪いが助けは期待するなよ。この艦は頂く。部下にはブリッジにいる以外の人間は見つけ次第殺せと伝えている。そこの伝声管に叫んでもどこからも返事がないだろう?」
確かに、ブリッジに突入される寸前には、何処に叫んでも、伝声管からの返答がなくなっていた。そうか、みんな殺されたのか。
「ああ、ここまで上手くやってきたのに!!!」
ガルダ・ザルバトーレの勝利宣言を聞き、崩れ落ちて膝を地面につけるゴードン。
それに対し、敵の司令官の心を折り、勝ったとばかりにドヤ顔を見せるガルダ・ザルバトーレ。
味方からは「もうお終いだ」という雰囲気が、敵からは「これで一安心」という気配が漂う。
そんな中、ふと疑問を抱いたのか、敵の大将ガルダザルバトーレがゴードンから視線を変えて、俺の方を向いて尋ねてきた。
「うん? お前は誰だ?」
おや、俺の事はご存知ない?まあ「俺が議長」ですと宣伝しているわけではないしな。
仕方がない。
こちらから自己紹介しようかと思ったが、その前に、疑問に思ったガルダザルバトーレが俺の方に向かって歩いてくるのを見て、あることに思い至った。
これはもしや行けるか?
「お前達の国ではどうなっているか知らないが、共和国ではブリッジにある一番目立つ席に座ることができるのは、一番偉い奴と決まっている。じゃあ、フェンリル傭兵団の団長ゴードンに代わって、そこに座っ」
圧倒的に優位に立っているはずのガルダ・ザルバトーレの言葉は最後まで続かなかった。
如何にも勝利を確信した様子だったので、油断しているかなと思ってちょっと仕掛けてみたからだ。
「何だと!! うぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
突如、ブリッジ内に吹き荒れた突風に掻き消えてガルダ・ザルバトーレの叫び声はゆっくりと消え去った。
勝利宣言をすることもできず、随分とあっけない最後だった。彼の悲鳴が聞こえなくなったところで、風が止む。
「え……」
「た、大将閣下……」
突然指揮官を失い呆然とする共和国の兵士達。あまりの事態に極度の混乱状態に陥ったのか、完全に心ここにあらずだ。
それはこちらも同じなのだが、最強の敵を排除して気分がいいので、とっと動けと味方を一喝した。
「どうした。敵の大将は排除したぞ。早く残りを片付けてしまえ」
流石というべきか、俺の言葉に最初に反応したのは、ゴードンだった。奮起したゴードンに続き、ブリッジにいるクルー達は次々と共和国の兵士に襲い掛かる。
侵入してきた敵の数が少なかったことと、不意を突かれたこともあり、ブリッジに侵入してきた敵兵は数秒で倒れた。
「議長、あんた……」
一段落がついて冷静さを取り戻したゴードンが俺の方を見る。
ゴードンだけではない、その場にいた全員もはや崇拝の域にある眼差しを見せるが、大したことはやっていないのだから、恥ずかしいからその目は止めて欲しい。照れるから。
俺がやったことは極めて簡単だ。
この空鯨船ワルキューレのブリッジは、共和国の空鯨船や地球の飛行船と同様でブリッジに相当する部分が船体の下部にある。よってブリッジの床の板を一枚取り除けば、その先は外だ。
そして、ブリッジの床は畳一畳ほどのタイルが接合してできている。
なので、勝利を確信して笑みを浮かべながらノコノコ近づいてきたガルダ・ザルバトーレの足元の床板を一枚だけアイテムボックス内に収納して、彼が落ちた事を確認した後、元に戻した。
魔法が効かない世界最強の剣士といえど、何の予兆もなく突然足元の床が消えれれば、そのまま落下するほかない。
イスラの森にいた時は足元が常に地面だったので、敵の足場を奪う戦法は取れなかったが、ここならば、こういった事もできる。
なんだが、独裁者とかが任務に失敗した部下を外に落として粛清する様を思い出すな。啓示のように一瞬にして閃いた策だったが、上手くいって本当によかった。
でも、浮かれている暇はない。
何せ、この策以外何も考えていない。
そもそも、この戦い、始めから負けることはないだろうと俺はゴードンに丸投げして気持ち的には完全に観戦気分だったのだ。
先に聞かれたら、何も考えていないことがバレそうなので、先手を打つことにした。
「さてと、ゴードン総司令。最大の脅威を排除した。この後はどうする?」
俺は剣聖を排除したぞ。次はお前が何とかしろと念じながら、ゴードンに問いかけた。
頑張れゴードン。
運良く、最強の敵は排除できたが、ブリッジ以外は既に敵の手中とみていいだろう。
飛行ユニットを直接破壊されれば、地上にいる敵の大軍と戦う事になる。
味方の艦が救援すべく近寄ってきたところを相打ち覚悟でこの艦の格納庫にある爆弾を起爆されれば、誘爆して大惨事だ。
艦内を占拠してる敵兵は大将を失ったことをまだ知らないだろうが、国のために乾坤一擲の作戦に参加するような連中だ。
多分、自分達に勝ち目がないことを知ってしまえば、どんな犠牲もいとわずに、一矢報いてくるだろう。
詰んでるわ。完全に詰んでる。
対応策が全く思い付かない。
何とかしてくれ!!
「う~む……」
俺の問いに対してその場で唸って考え込むゴードン。
頼むぞ。次の議長は君なんだから。
そう! 今までどうやって議長を辞めようかずっと観戦しながら考えていたのだが、最善策として、この戦いが終わった後、俺はゴードンに議長の座を押し付けることを閃いていた。
共和国を破った名将こそが、次のリーダーに相応しいとか適当に理由を付ければ、皆納得するだろう。
実際、ゴードン率いる国防委員会は、共和国相手に連戦連勝し、この戦いで勝利を納めれば国防委員会とゴードンの権力がイスラ同盟国内で、絶対的なものとなる確実だ。
本人も権力志向が強いようだし、引き受けてくれるはず、我ながらグッドアイデアだ。
だから、この難局を乗り越えてくれ。お願い!
それからしばらくして、祈りが通じたのかゴードンが一つの策を提示する。
その案に思うところはあるが、軍の司令官が出した作戦に異を唱えるのはどうかと考えて頷いてみた。
数分後、俺がアイテムボックスから出した飛行ユニットに、ブリッジにいるクルー全員がぶら下がって艦を離れた。
少々みっともないし、敵の空鯨船の攻撃を受ければひとたまりもないが、幸いこの時には共和国艦隊は壊滅しており、襲われる心配はなかった。
そして、一番近くを飛んでいたロカの艦に乗り込み、事情を話した後、信号で全艦に指示を下し、インドラの一斉斉射で旗艦ごと敵の空鯨船を沈めた。
生存者はいないだろう。
導火線に火をつけるか、強い衝撃を与えれば爆発する空爆用の爆弾が大量に保管されている格納庫を狙ったのだ。
それはそれは凄まじい大爆発だった。
敵をこの手で殺すことも、殺すように命令を下すことも、生きるためには止むを得ないと正直割り切ったつもりでいるが、艦内にもし味方の生存者いた場合は、味方殺しをしたことになる。
遺体の回収も困難だろう。
これら全ての罪を作戦の発案者であり、国防委員長であるゴードン一人に負わせるのは少々酷な気もするが、ストレスフリーの引退生活を送るためにも、次なる指導者になるゴードンには乗り越えてもらいたい。
さあ、色々あったが、敵の航空戦力は排除できた。
いよいよチェックメイトだ。
これだけ暴れれば、共和国も他の国も、イスラ同盟国を格下と扱わずに、対等に接してくれるに違いない。
安全な祖国での隠居生活はほぼ実現したも同然である。
ただ欲を言えば、個人的には、撃墜した旗艦の残骸回収と不可侵協定を結べれば満足だが、それだけだと国民が納得しないと思うので、少しは賠償金も貰えればと国民も納得してみんなハッピーかなと密かに期待するのであった。
このように心の中で戦後の事を夢想していると、ゴードンが呼びかけてきた。
「議長! これより全艦隊で敵要塞を空爆いたします!」
「うむ。やってしまえ」
「……生きているのか」
あの時、何が起きたのかは分からないが、自分が空から落ちてきたのは理解できた。
あの高さから地面に叩きつけられて、生きているのは奇跡かそれとも自分が神の使徒だからか。
理由は分からないが、満身創痍であるものの、自分が生きているのは理解できたが、流石の剣聖も限界を超えていた。
意識を失った彼は、駆けつけた地上部隊の兵士達によって慎重に治療スペースに移送されるのであった。
共和国軍作戦司令部が置かれているドリュアス要塞にて。
共和国艦隊の全滅と重体の状態で意識不明で総参謀長が空から落ちてきたという報告を聞いた後、占領された旗艦を自らの手で破壊して制空権を完全に奪い、ゆっくりとこちらに向かって飛んでくる敵の艦隊を見たロズウェル・カルスタンは作戦の失敗と戦いの敗北を悟った。
「負けたわね。後は議員の皆様に任せましょう」
勝ち目がないと判断した彼女は、共和国軍司令官代理として要塞にいる全兵に即時退去を命じた。
このしばらくした後、首都防衛の最終拠点であるドリュアス要塞はイスラ同盟国軍による激しい空爆により瓦礫の山へと変わる。
そして同盟国艦隊から共和国政府に対して発光信号による最後通告が発せられた。
『降伏せよ。従わない場合は、このまま貴国の首都を炎の海に沈める』




