第二十一話 決戦前夜
建国祭の数日前。
イスラ同盟を支えることになる評議会の十一人の議員達が集まり会議をしていた。
「さて、共和国に一泡吹かせると言っても具体的には何をするんだ?」
国内についてある程度の話が纏まった後、俺は列席者達に、今後の最重要課題について問いかける。
「ずばり、こちらがやられた事をやり返すべきでしょうな。議長の建造した空鯨船で共和国の首都を焼き払うのです」
真っ先に過激な発言をしたのは、共和国を追われた元議員であるワイアームという男だ。
彼はゼラシード商会の不正を暴こうとして逮捕され財産を失いイスラの森に逃亡して来た過去があるため、今の共和国に対して強い恨みを持つ。
「確か、議長のお力で爆弾を作れるでしょう?それを空鯨船から街に投下すれば、あっという間に首都を灰塵にできるのでは?」
ワイアームの言うように、レシピの開放によって爆弾が作れるようになっている。衝撃を与えると家が一軒吹き飛ぶほどの威力だ。
魔法でこれほどの威力を出せる魔法使いはそう多くはない。
この世界にも爆弾はあるにはあるが、火薬の調合が難しいことと、魔法という便利な力があるせいで、ほとんど普及していないそうだ。
しかし、俺の場合は素材さえあれば、一瞬でいくらでも作成できる。
資源が豊富なイスラの森があるため、爆弾を大量に製造し、空鯨船に満載し街を空爆することは十分に可能であると俺も判断した。でも、
「じゃが、それでは共和国にいる無辜の民が大勢犠牲になるんじゃないか?」
俺が思っていたことをシギン婆さんが代わりに言ってくれた。
シギン婆さんの言う通りだ。確かに共和国の攻撃で五人の老人や子供が亡くなったが、その復讐のために、共和国の民間人を何百人、何千人と殺すのは抵抗があった。
共和国への復讐と言っても、俺としては、共和国を含め世界中の国がイスラ同盟に攻撃するのはためらうほどの武力を見せつけれればそれでいい。
一応復讐なので、その過程で犠牲が出るのは仕方がないとは思うが、だからと言って、不用意に民間人を虐殺するのは賛成できなかった。
その考えは他の議員も同じようで、ワイアームの強硬な主張に賛成する者はいなかった。
だが、共和国への恨みが強いのか、ワイアームは諦め切れないようだ。彼は、同席するもう一人の共和国出身で評議員であるロイドという男の方を向く。
「ロイド、貴様はどうだ?! あんな連中皆殺しにすべきだと思わないのか?!」
詳しい経緯を一々把握してはいないが、ロイドもワイアームと同じく共和国を追われた身。しかし、彼は首を横に振った。
「私は反対だ。復讐からは何も生まれない。如何なる理由があろうとも、無差別に敵国の民を殺戮するのはどうかと思うよ。それに、もし我々が共和国首都を焼き払えば、共和国の世論は我が国が滅ぶまで戦えと叫ぶだろうな」
「くっ、しかし!!!」
「ワイアーム殿、君もよく知っているだろう。あの国の民衆は自分達に実害がでなければ、基本、政府の足を引っ張るか何もしないかのどちらかだが、実際に、自分達の命や生活が脅かされれば、どこの国の民よりも恐ろしい存在になると」
「ぐぬぬ……」
不満そうな顔をしつつも、ロイドの言葉にワイアームもついに口を閉じた。彼の言い分が正しいと認めたようだ。
俺も同意見。地球の歴史でもそうだが、民主国家の国民を本気怒らせると、ちょっかいを出した国が貴族主義や独裁国家の場合、最後は負ける事例の方が多い。
それに現実問題、築城の加護があっても、共和国全土を焼き尽くし、共和国民を皆殺しにできるほどの力はないと思う。仮にできたとしても、何十年掛かることやら。
「では、ロイド殿はどうするべきかな?」
すると、苦し紛れにワイアームがロイドに代案を出せと言う。それに対し、ロイドが即答した。
「私の考えは、共和国の国民を怒らせないで、彼らの軍事力を適度に落とし、こちらが軍事的に優位に立った状態で和平交渉をすべきかと」
「……つまり?」
「共和国防衛軍のみを攻撃対象とします。敵にも空鯨船がまだ残っているようですが、長距離からの攻撃を可能とするインドラを搭載したこちらの空鯨船の敵ではありません。その後は、邪魔者のいなくなった空の上から、共和国防衛軍の軍事施設のみを爆弾投下して焼き払います」
なるほど。ロイドは元軍人と聞いていたが、大したものだなと感想を抱いた。
「それならば、兵隊以外を殺戮する危険は少ないか」
俺の考えを聞こうと注目が集まる。少し緊張するが、話を詰めるためにロイドに尋ねた。
「確か、共和国には国家防衛の象徴的な要塞があると聞いたが」
「ドリュアス要塞ですね。共和国首都を守るための最終防衛拠点であり、巨額の費用を投じて建設された大陸屈指の要塞でもあります」
そのドリュアス要塞とやらは、難航不落の要塞らしいが、恐らく空から攻められることは想定されていないだろう。
こちらの力を示しておくにはちょうどいい相手だ。
「では取りあえず、そこを最終目標にしつつ、その前に、いくつかの軍事施設を空爆していこうか」
その後も議論を重ねて、元共和国の人間の意見を取り入れて、今後の方針が決定する。
敵の空鯨船を撃墜させつつ、共和国防衛軍の軍事拠点をいくつか陥落させた後に、敵側にドリュアス要塞を攻撃することを伝えた上で万全の態勢で待ち構えた共和国防衛軍を破り、軍事的に優位に立ったまま、和平に向けた交渉を始める。
共和国への復讐の具体的な段取りが決まり、建国祭の前後からイスラ同盟国は本腰を入れて準備を開始した。
共和国首都にある参謀本部の建物内の一室にて。
部屋の中には、これから会議に参加する者達が着席しているが、目下の情勢を考えれば、明るい顔をしている者など一人もいない。
そんな重苦しい雰囲気が漂う会議室に、一人の男が入ってきた。
高級将校だけが着ることができる軍服を纏い、年齢は四十代頃、ガタイの良いその身体つきから前線からの叩き上げの将校だと一目で分かる。
「いや~悪い悪い。久しぶりなんだもんだから、道に迷ったわ」
予定の時間に少し遅れて最後に入って来たというのに、悪い悪いと軽い感じで平謝りして、男は空いていた椅子に座る。
今の共和国の置かれている状況を正しく把握している者であれば、不謹慎だと思われても仕方がないが、遅れて来た男に対して、内心はともかく、口を開いて叱責する者はいない。
それほど時間が惜しいのだ。
司会役を務める若い男性将校がゴホンと一つ咳をしてから会議を開始を宣言した。
「今回の会議の進行役を務める参謀本部作戦部所属、エミール・ロッジ中佐です。皆様、よろしくお願いします。では、先ずは現状確認からしましょう」
すると、先程遅れて来た男が手を上げた。
「一ついいか」
「何でしょうか?ザルバトーレ中将」
「皆知っているように、俺はつい先日まで王国との国境付近にいたんで、中央の情報をまだきちんと知らないんだが、この新聞に書かれている事は事実なのか?」
そう言い、現在共和国中に大きな衝撃を与えた新聞を机の上に放り投げる。列席者の大半が苦々しい顔を見せる中、ロッジ中佐は認めたくはないという顔をしつつも肯定した。
「その通りです。その新聞に書かれていることは全て真実です」
「……そうか」
その新聞の記事には、誰がリークしたのかは分からないが、今日まで政府と軍部とゼラシード商会が隠してきたことが赤裸々に記されていた。
記事の要点をまとめると、共和国防衛軍が世論の反対を押し切ってまで他国での軍事行動を行えるようになった経緯についてが記されている。
全ての始まりは、国内に新たな武器工場を建設できないゼラシード商会の会長ダグラス・ゼラシードが新武器工場建設のために、各地を調査してイスラの森の中で難民達が暮らす村を発見したことだ。
新工場を建設する上で最高の場所であるこの地を手に入れるため、ダグラスは極秘裏に当時の参謀長に住人を皆殺しにするように命じて空鯨船まで出して部隊を送った。(これに関してはゼラシード商会はそんな命令など出してはいないと声明を出しているが、日頃からの評判が悪いため国民の大半は信じていない)
しかしあろうことか、この作戦は失敗する。原因は未だに錯綜しているが、その村に、かのカルスタン家と赤い狼の残党がいたことが大きいという考えが強い。
また敗戦どころか、空鯨船を奪われるという大失態まで犯した。
その結果、ゼラシード商会の情報部長を務めるユーリ・メルクリアが事態の解決のために、ゼラシード商会と政府の両方を代表して、現地に赴くが、共和国軍の攻撃部隊に、勝利したものの突然の攻撃によって多大な被害を出して激怒した村人達は対話を拒否。
責任者である大統領とダグラスの首を差し出すまで一切の対話に応じないとメルクリアに告げた。
この回答をもって、対話は不可能だと判断したゼラシード商会と共和国上層部は、本格的に村の殲滅を決定。
また、偶然にもこの時、ユニオン商会が帝国に秘密裏に大量建造していた空鯨船の存在も明るみで出たこともあり、世論の反対を押し切って防衛軍の領土外での行動が認められる法案が議会で可決されるに至る。
ここまでが新聞で判明した真実である。
ちなみに、ゼラシード商会のみが有していた空鯨船の技術が流出したことも大事件になっていたが、それ以上に首都の空を覆うほどの空鯨船の大艦隊の方が国民に与えた影響は大きかった。
それだけに、反戦の機運は未だに高いが、少なくとも、共和国防衛軍の強さの前には、魔王軍すら敵ではないという認識だけは大半の国民が抱いていた。しかしながら、
「現在、我が共和国は滅亡の危機にあります」
ロッジ中佐のその一言で場の空気に緊張が走る。
例の村を壊滅させるために、送り出した十二隻の空鯨船は、初戦で、たった一隻の敵空鯨船の前に、四隻も沈められて退却を余儀なくされた。
敵側の拠点がイスラの森という魔境にあることもあり、どうやってあれほどの空鯨船を建造していたのかという謎は未だに解明されていないが、共和国の空鯨船ではまるで歯が立たないのは確かな事実だ。
しかも驚く事に、敵の空鯨船は日を追うごとに増加し、現在確認されているだけで、七隻も存在している。
結果、今日までに共和国防衛軍が保有する空鯨船は三隻を残すのみとなった。
だが、被害はそれだけにとどまらない。ザルバトーレ中将は、机の上に置かれた地図上にバツ印が書かれた場所を読み上げる。
「ロマール砦、ライザ砦、ゼルム要塞、南部第二から第九までの各駐屯基地。全て破壊されたか……」
「はい、信じがたいことですが、敵はゼラシード商会でも少数しか製造していない爆弾を大量に空鯨船から投下して城壁も城も、基地ごと破壊しているそうです。その後占領などは一切行わずに軍事施設のみを完膚なきまでに破壊しているだけなので、こちらの兵士の損害は軽微ですが、破壊された施設を再建するのにどれほどの時間と予算がかかるのか、見当もつきません」
「はあ~。空の上からの一方的な攻撃か。戦争の形が変わるね~」
もはや笑うしかないザルバトーレ中将に対して、上座に座っていた大統領が机を叩く。
「ザルバトーレ中将。笑っている場合ではないぞ!!栄えある防衛軍がこの体たらくでいいのか」
「いいんじゃないですか。民衆や議員の中には、負け続きの共和国防衛軍を解体させて、カルスタン家や赤い狼の連中から構成される敵さんに大金を払って共和国を守ってもらおうべきだという声もあるんでしょう?」
ザルバトーレ中将の言うように、例の新聞によって、先に手を出した非があるのは自分達であることが分かった。
しかも、敵は巨額の費用を投じて維持される防衛軍よりも強い。圧倒的な経済力を持ち、良くも悪くも金で解決してきた共和国の歴史を考えれば、そういう考えに至る者は大勢出てくる。
だが、大統領としては冗談ではない。
「自分の国は自分達で守る。そんなことも君は分からないのか!!」
敵側は和平交渉を行う前提条件として、責任者である大統領とダグラスの首を欲しているため、大統領は必死だ。
民衆は国のために死ねと叫んでいるが、謝罪のために国家の指導者を生贄に差し出す要求は絶対にのめないという判断を議会が下しているためため一先ず安泰ではあるが、これ以上の戦況の悪化が続けば、議会の方針も変わる恐れがある。
「せめて、敵の空爆で国民が大勢死んでおれば」
「大統領!!」
「ああ、今のは冗談だ。忘れてくれ」
不謹慎な発言をしたこと撤回しつつも、発言した大統領と列席する高官達も実のところ同じことを心の中で考えていた。
国民が実際に被害に合っていれば、状況も変わっていただろう。少なくとも、反戦を訴える活動家は減少していたし、大統領やダグラスの首を差し出してしまえなどと考える者は存在しなかったに違いない。
しかし、そうなっていない以上、対策を講じる必要がある。
「さて、本日お集まり頂いたのは、既に知っておられる方もおられると思いますが、ここに来て敵側からメッセージが来たため、その対応について議論をするためです」
敵の村には元共和国議員や商人などがおり、彼らの持っていた人脈を経由して送られた書簡は、最終的に受け取ったゼラシード商会の情報部から議会に提出された。
そこには自分達は、イスラの森に逃れた各国の難民から構成された新国家イスラ同盟国である事と、先に出した大統領とダグラスの首を出せば和平案の乗ってもいいという提案が、上から目線で書かれていた。
「ただし、首を出さなければ、今日から数えて一週間後に、ドリュアス要塞を破壊する……か」
既にイスラ同盟国と名乗る敵の空爆により、国内の防衛線は壊滅寸前。
魔王軍が一向に姿を現さないこともあり、混乱に乗じて帝国か王国もしくは中小諸国がいつ侵攻して来てもおかしくない状況にある。
そんな中で、首都防衛の要であるドリュアス要塞が破壊されれば、どれほどの影響を大陸に与えるか。
間違いなく、敵はイスラ同盟と国内の反戦派だけでは済まなくなる。
故に、軍の存続と国の威信に賭けて、イスラ同盟国の要求を飲む訳にはいかない。
思う所はあるが、ドリュアス要塞での決戦を行うことに対して反対意見は出なかった。
「三日以内に、ドリュアス要塞近郊に可能な限りの戦力が集結する予定です」
ロッジ中佐は、卓上に首都近辺の地図を敷き、その上に駒を並べて戦場に見立てて説明をする。
「まず前衛に主力となる第三、第四、第五軍団。その後方に第七と第九軍団を、そして要塞には第一軍団を配置します」
共和国防衛軍は大きく分けて全部で十の軍団から編成される。帝国や王国との領土紛争でも一つか二つしか出撃させない軍団を、今作戦には六つも投入した。
列席する政府高官は、これだけで軍がどれほど本気であるかすぐに判断できた。しかし、軍の高官は、ドリュアス要塞を守りきるには、これでもまだ不足だと認識していた。
「更に、要塞の上空には、帝国で二次生産分の空鯨船を十八隻。そこに今日まで温存していた三隻を加えた計二十一隻の空鯨船で戦域の上空を守ります」
これで、今、共和国防衛軍が動かせる全ての戦力が最終防衛拠点であるドリュアス要塞に集結することになる。
その後、大雑把に敵に対する作戦を聞いた後、残りの細かい作戦などは、軍に任せると告げた大統領が、自分の仕事がまだ残っていると、口を開く。
「今回の戦いを勝利に導くためにも、大統領権限で昨日更迭した前任の参謀長に代わり、新たにガルダ・ザルバトーレ中将を軍トップである参謀長に任命する。共和国の未来貴殿に委ねる。頼むぞ。当代の剣聖」
ぶっちゃけ、こいつとダグラスが死ねば、問題解決じゃねえのかと会議中ずっと考えていたザルバトーレ中将も、軍の威信を賭けた戦いの総大将に任命されれば、普段のお気楽ムードも成りを潜めるしかない。
こうして、その性格故に軍内でずっと冷遇されていた最強の使徒と呼ばれる男、剣聖ガルダ・ザルバトーレが遂に歴史の表舞台に立つ。
ささやかな祝福の拍手が会議場に響く。
軍トップである参謀長の就任と同時に、ザルバトーレ中将は大将に昇進する。
「まあ、個人的には非はこちらにあるような気がするが、このままやられっぱなしなのも間尺に合わないしな。国のために全力を尽くそう」
「心強い。さて新参謀長よ、何か要望はあるか?」
「では、次席参謀長に、第一軍団長兼要塞司令であるロズウェル・カルスタン中将を指名したいがよろしいか?」
二十年前に帝国から来た亡命者にも関わらず、長年、国境防衛戦で活躍して、現在は首都を守護する最精鋭、第一軍団を率いている名将ロズウェル・カルスタン中将。
かの元世界最強の魔法使いと呼ばれるシギン・カルスタンの実の娘で、今や母親を超えて、使徒達を除けば間違いなく現世界最強の魔法使いと呼ばれる女傑だ。
戦闘力、指揮能力共に申し分なく、異論を挟む者など存在しない。
長年の実績から、仮に母親と敵対することになっても、問題なく任務を全うするであろうという強い信頼があった。
「家は潰され兄夫婦は帝国で処刑されたけど、あのしぶとい母上は未だに存命。個人的には、今度こそ、この手で母上を叩き潰して私が世界最強の魔法使いであることを確かなものにしたかったけれど、次席参謀長じゃ我慢するしかないわね」
ロズウェルは少々残念そうな態度を見せるが、彼女の言葉を聞いている者からすれば頼もしい一言だ。
最強の使徒である剣聖に、世界最強の魔法使いロズウェル。そして圧倒的な大軍。
敗戦続きではあるが、共和国防衛軍はまだ健在であることを確信して会議は終了した。
そして、一週間後、後世にドリュアスの戦いと呼ばれる歴史に残る戦いの幕が開く。
共和国首都の某所。
「ストレスで禿げそう……。通常業務が既に激務なのに、ダグラスは毎日裏切り者をさっさと探せと怒鳴るし、政府と軍部からの情報収集の依頼も表面上はきちんとしないといけないし、その上でバレないように、裏で暗躍しないといけないから、本当に大変だ」
「全くだ。この前、口から血を吐いていたが大丈夫か? 魔王になって身体は人間の時よりも、多少は頑丈になったとは思うが。 まあ、呪いのような精神魔法を浴びるならばまだしも、他人の数倍は働いているとはいえ、ただの仕事の疲れで人が死ぬとは思えないが、それでも少し休んだらどうだ?」
「そうだな。でもここが正念場だからな。今は休めない。世界征服を成し遂げればいくらでも休みが取れるだろうから、その時にするつもりだ」
「そうか……さて、イスラ同盟国からの書簡を改ざんしたりと最近は非常に色々と忙しそうだったが、前に聞いた君の計画通り、これで共和国防衛軍の主力と、イスラ同盟国軍、そして聖女、狂戦鬼、剣聖と七人中三人の使徒がドリュアス要塞に一堂に会することになったわけだ。それでどうするのだ?まとめて潰す絶好の機会だと思うが」
「ふふ、それを言ったら今後の楽しみがつまらなくなるだろう。君を驚かすのが俺の生きがいの一つなのだから。確かに、帝国とイスラ同盟国がいつの間にか空鯨船を所有するなど想定外の事態はあったが、まだ許容範囲内。万全とは言えないが、こちらも本格的に動くとだけ言っておこうか」
「勇者なき世界に、ついに魔王軍が出陣か。楽しみだ」




