表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/67

第二話 まずは家を建てよう

 目を開けるとそこは深い森の中だった。


 スーツ姿で一人森の中にいるのに、違和感を覚えるが、周囲には誰もいなそうなので、服装については気にしないことにした。


 さて、これからどうしようかと頭をひねっていると、不意にバサッと上から一冊の本が落ちてきた。


【築城の加護の使い方について】


 そう言えばあの神様、別れ際に自分の加護ではないから説明書を送ると言っていたが、仕事が早いな。日本語で書かれた冊子を一通り読んだ俺は試しに加護を使ってみることにして、近くに落ちていた俺の背丈ほどの長さの木の枝に狙いを定めて呟く。


「収納」


 すると、足元に落ちていた木の枝が一本忽然と消え、同時に脳内に今収納した木の枝の姿が浮かび、字幕のような文字まで出てきた。


『木の枝を収納しました。木の棒×2を作成します』


 そして、ゲームでレベルアップしてステータスが一気に上昇したかのように、次々と文字が出る。


『レシピ、松明が解放されました』


『レシピ、木の斧が解放されました』


『レシピ、木の板が解放されました』


『レシピ、木剣が解放されました』


……。


 たった一本の木の枝を仕舞っただけで、次々と新しいレシピが解放されていく。どうやら説明書に書いてあったように、上手くいったようだ。


 説明書に書かれていた築城の加護についてを要約すると、


1、この築城の加護は神の城を建てるのに必要な力である。


2、保有者の周囲の生物以外の物をアイテムボックスという異空間に収納できる。


3、アイテムボックス内では、収納されている材料を使い解放されているレシピ内でアイテムを作る。


4、特定の素材やアイテムを収納すると、新たなレシピが解放される。


5、頭の中にモニターがある感じで、アイテムボックス内に何があるのかを確認したり、アイテムを作成できる。


 細かい条件やルールなどはあるが、大雑把に説明するとこんな感じだ。神の城という言葉も気になるが、今は保留にしておく。


 ともかく、人里離れた僻地を開拓して快適なスローライフを送るためには最高の能力なのは間違いない。


 神様グッジョブ!



 その後も、説明書を見ながら色々と試してみる。


「収納」


『石が収納されました。新たにレシピが解放されました』


「収納」


『雑草が収納されました。新たにレシピが解放されました』


 あちこちに落ちている枝以外にも石や雑草などを周囲にあるものを片っ端からアイテムボックス内に仕舞っていき、新たなレシピが次々に解放されていき、同時にこの力についてさらに理解が深まった。


 まず、収納についてだが、説明書に書いてあった通り、一度に一つの物しかアイテムボックスに送れない。直接触れる必要はないが俺を中心にから5メートルくらいの距離が有効範囲内。また出す時は、同じく5メートル以内であれば、好きな場所に出すことができる。


 しかし、生きているものは収納できない。なので、森中に生えている木や草、花などは生きているものと扱われるため、一度伐採するなり引っこ抜く必要があった。


『木の棒と石を使用し、石の斧を作成しました』


 俺は、レシピを早速使用して、石の斧を作成しアイテムボックスから取り出す。そして、木に向かって力の限り斬りつけた。


 死ぬ以前の俺ではこんな斧を振るっても木を倒すことなど不可能だったはずだろう。だが。神様によって身体能力を底上げされているので、一撃で切り倒すことに成功した。


『木を収納しました。木材×10と葉っぱに解体します』


 地面に横倒れた木を収納する。すると、枝と同様に、このままでは使えないと築城の加護は判断したのか、使えるように勝手に解体してしまうが、木材を手に入れたことで新たなレシピが解放される。


 『新たに、木の板、扉、柵、塀、屋根……のレシピが解放されました』


 木を一本手に入れただけで、先程の木の枝の数倍、新たなレシピが解放されていく。目覚ましい進歩である。


 ちなみに枝もそうだったが、木と認識されていれば、収納した木の品種や大きさが異なっていても、アイテムとして作り出せる木材自体の大きさと形は全部同じのようだ。


 多分、この辺りの仕組みは木以外でも適応されるのだろう。



 さて話を戻す。俺の力が強すぎたためか、伐採できたものの、斧はたった一回の衝撃で石の部分が砕け使い物にならなくなった。でも、


『棒と石を使用し、石の斧を作成しました』


 材料はいくらでも地面に転がっており、一瞬で作成が可能。一回しか使えなくても十分だった。


「よし、頑張るぞ!!」


 かなり有用な力だと分かり俺は、ウキウキしながら斧を作り、ドンドン木を伐採しながら、森の中を探索した。 




「ふ~、今日はこれくらいでいいかな」


 素材を回収しながら、探索を続けた俺は森の中を流れる川を発見した。本当は、火も確保したかったが、日も大分落ちてきてるし、水場は確保できたため、今日の探索は終了にする。


 それと、途中で判明したのだが、流石に、アイテムボックスは四次元ポケットのように無制限に収納できるほど万能な力ではなかった。一度に仕舞えるアイテムの種類は無限であるが、同じアイテムとカウントされるものは百個までしかアイテムボックス内に収納できないことが分かったのだ。


 今日はまだ大丈夫だが、本格的に素材集めをし始めたら、すぐに満タンになる。これは少し考えなくてはならない問題だ。だが、今は一旦置いておこう。


「それじゃ、寝床を作りますか」


 川のすぐ傍に生えている木を何本か伐採しアイテムボックス内に収納。切り株は、作成した石のスコップで引っこ抜き、地面に落ちている落ち葉や生えている草花と一緒に収納しちょっとした空き地を作る。


 それから、今レシピから作れる家屋の確認をした。


 木材を入手した時点で、柱やベニヤ板などの建材を作れるようにはなっているが、プラモデルのように建材を取り出して組み立てた場合、いつ完成するのか分かったものではない。


 なので、自作の家作りを諦めて、石の斧のようにレシピから作成することを選んだ。


「今解放されているレシピで作れる家は、掘っ建て小屋だけか……」


 使う素材は、木材×3のみ。


 レシピ通りに、掘っ立て小屋を作ると選択すれば、この木材を使い板や扉などを必要な分だけ勝手に作成し、自動的に小屋を建ててくれるらしい。なので、取りあえず建築し取り出してみた。


「うわぁ……」


 目の前に現れたのは、木の柱が地面に直接埋め込まれ、薄いベニヤ板を壁や屋根代わりにしている粗末な小屋だった。わざとボロく作りましたという雰囲気も出ており、外国で見るスラムのような感じだった。


 正直気が進まないが中に入ってみると、四畳ほどの広さの空間がある。少なくとも雨露は防げそうだ。


 それに粗末な小屋ではあるが、十秒ほどで建築が完了したので、一人の人間が建てるには地球では考えられないスピードで建築できた。この辺りは、流石神の力と呼ぶべきだろう。仮の住まいとして割り切って使う分には問題がなかった。


 そうだ。色々と素材を集めれば、新しい住居のレシピが出るはずである。目指すはログハウスだ。


 俺は、明日はもっと素材集めを頑張ろうと自分を励まして、探索中に見つけたキノコや木の実を食べて、明日はもう少しまともな家で寝られればいいなと思いながら、一日中森の中を彷徨った疲れもあったため、日が沈んだ後に、すぐに眠りについた。




 はずだった。


 バンッ!バンッ!バンッ!!


 その夜、突然、外から壁が何かを叩きつけられる音を聞きすぐに目を覚ました。


 そして何故、豊富な資源が眠っているのにも関わらず、どの国も領有権を主張しないのか、その理由を知ることになる。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ