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野蛮学校物語  作者: yukke
第1章 臆病者の旅立ち編
6/116

第5話 逃げても撒けば勝ち 中編



―――――――――――――――――――――――

-臆病者視点-




 流石に少し疲れてきた。

 80メートルほど全速力で(一回ぶつかったのもある)走っている。

 疲労感はそこそこある。


 正直、後120メートルぐらいが限界だ。

 これ以上走ると、万が一戦闘になったときにかなり不利な状況になる。

 元気なときと疲れているときの差は、とんでもなく大きい。



 森で特訓やってたときとはまるで違う。

 魔物との戦いを10年程続けてきた俺は、人間との戦闘を経験したことは一度も無かった。


 どうして、たかが80メートルの間走っただけなのに、色んな事が起こるのか不思議だ。


 まあ、町の中を全速力で駆け抜けないと見れないレアな思い出なのだろう。


 逃げている場所が違うだけでこんなにも違うのか。



 冒険者団体の間をすり抜けようとしたときのあの冒険者たちの目(今でもちょっと引きずってるよ……)。


 必殺技を使おうとしたときに遠慮されたカッコ悪い姿。


 チンピラ共に気を取られ過ぎて出前店長のおっさんにぶつかってしまった時のうっかりさ。

 

 操られた(誤解された)他の冒険者達に止められそうになったけど、町の人に笑われそうな必殺技で何とかかいくぐった。



 森ではなかなか味わうことのない独特のアクションだな。



 それはそうとして、

 さっきからずっと走っているが、何故か冒険者達が両端によるお陰でかなり早いペースで商店町を駆け抜けている。


 まあ、俺の顔を見れば両端に寄りたくなるのも無理はない。


 左側の縁が赤くなっている仮面をつけた170センチ位の青年が、冒険者商店町の真ん中を全速力で駆けているのだから。

 朝早くから恐怖体験とはお疲れ様である。


(俺が素直にチンピラ共に金を出せば、こんな事にはならなかった気がするけど)。


 後、さっきのジャンプが上手く影響した気がする。

 ここら一帯はジャンプをした所がはっきりと見える。ことの様子を聞いた冒険者達は俺を止められる自信を、あのジャンプで無くしたのだろう。



 スゲェだろ!



 俺のカッコイイ?ジャンプ。



 少しだけカッコつけてみた。


 ジャンプよりも明らかにカッコイイ必殺技を、沢山隠している冒険者達からみれば、「ハァ!?」と言われる粗末なものだが。


 まあ、ジャンプだけでは戦闘になると厳しいし。

 せっかくだから戦闘にとても有効な必殺技でも考えるとするか。

 

 俺が最後に寄りたかった干し肉の専門店をあっさりと通り過ぎた。

 銀貨1枚を此処の店で使うつもりだったが、仕方ない。泥棒の件で不味いから、後で別の店に寄らないとな。


 そんなこんなで商店町突破まで後83メートル。

 チンピラ共との差およそ17メートル。




 あの冒険者達の壁をジャンプで乗り越えてから、大したことは起きていない。

 このまま何事もなく商店町を突破出来れば良いのだけれど……。









 ……人生そんなに甘くなかった。



 でも、甘く無い人生こそ素晴らしい人生ではないかと俺は思うのだが(名言かもしれないな!)。



 そんな名言のようでクソ寒くて短い詩を考えている暇はない。



 前方10数メートル程から、後ろのチンピラ共の仲間が明らかに俺を狙っている。


 大体二列に並んでこっちに向かっているので、何人いるかは分からない。


 両手に刃渡り10センチナイフを持っている。


 ナイフに鉄が使われているのがはっきりわかる。



 この世界の鉄はかなり貴重だ。

 でも実際の所、鉄は昔はかなりあった。


 貴重になった理由はとある国のワガママだ。



 「この世界中の鉄は俺たちのものだ」


 

 とかいってこの世界の鉄の99.5%はその国の所有だ。

 残りは異世界人が持ってきたものもあるが、それでも鉄不足に困ったことに変わりはない。


 鉄の値段が金の凡そ100倍強の値段と言ったらわかるだろうか?

 だが金の値段は10分の1にまで落ちている。


 鉄1キログラムで大体……。


 白銀貨4~5枚位かな。

 白銀貨なんて一般人は一生見ないだろう。


 その被害は俺達に飛び火している。



 何にせよ、鉄がないとまともな装備すら作れない!

 それのおかげで新米の冒険者達は銅や銀などの心許ない防御力の装備でいかないといけない。


 俺はそんな足手纏いの防具はいらない。

 防御力がほんの少し上がって、足の速さがグンと遅くなるのは御免だ。


 普段着で特訓をしていたくらいの俺が証明したい位である。



 とまあ、そんなわけで鉄はかなり貴重なはずだ。

 たしかどっかの国から外された元精鋭ってアンナおばさんが言っていたな。


※第2話参照。チンピラたちに絡まれた辺りです。


 その国に外される時に持っていた物だろう。だから、あのボスは鉄製のナイフを持っていた訳か。



 それはそうと明らかにヤバイ。

 明らかに俺を殺る気だ。



 俺に向かって175センチの体躯が迫ってくる。



―――――――――――――――――――――――

 まずは1人目だ。



 走りながら両手ナイフを構えている。



 俺も回避の体勢を走りながらとる。




 チンピラとの距離が後数メートルの瞬間、突如としてチンピラが左手のナイフを、俺の右頬をめがけて投げてきた。



 でも、残念だな!

 俺はあっさりと左へ少し移動して回避する。


 次のナイフを投げてくる可能性もあったが大丈夫。

 後方でも前方でも回避に専念する場合は、全ての微かな可能性も考慮しないといけない。


 突然、人が突っ込んでくるかもしれない。


 不意を打つやり方は素晴らしいが、投げる速さが遅い。あと、もう一本のナイフは隠しておいた方が色々と策を練りやすいのだが。




 そんなこんな考えていると、チンピラは右手でナイフを俺の左肩を狙って全力で振りかざす。左肩というよりも首か?



 流石、元どっかの国の兵士である。

 よっぽど鍛錬を積んできた証。


 当たったら多分、即死だ。


 即死になる攻撃や回避しづらいポイントを、的確に当てるのは簡単に出来るものでは無い。大抵の人はこの地点で「勝った!」と思うだろう。


 でも、戦いというのは最後になるまで分からない。

 俺は全力で首を後ろに倒す。ナイフは……。


 ギリギリセーフ。

 後少しで喉元を切られるところだった。

 結果がわかっていてもマジで怖い。これで375回目の命の危険を回避できた(今まで何回死にそうになったか気になったため、日記に死にそうになった回数を記録している)。




 チンピラは「勝った」と思っていたのか、ナイフに全力を注いでいたのだろう。空振りした勢いで体の重心が前のめりになる。


 結局、チンピラは体勢を崩し、地面に顔をつけてしまった。


 

 俺はチンピラを後にする。

 1人目はギリギリ勝利だ。



―――――――――――――――――――――――



 次はアイツか。なにかをブンブン振り回している。

 あれをくらったら不味い。

 蕎麦の容器の角の痛さより痛い。



―――――――――――――――――――――――

 2人目といこうか。



 今度のチンピラは、銅製チェーンのついた20センチ程の大きさの銅球を持っている。

 チェーンの長さは多分10メートル。



 相手との差は10メートルも無い。

 一発勝負といった所か。

 ここでそれを放ってくると、冒険者達が巻き添えをくらう。


 その場合は冒険者達を守らないてはならない。「弁償しろ!」としつこく追いかけて来るのは避けたい。




 チンピラが銅球を放ったのは、俺との距離が後3メートルの時だった。

 銅の塊が俺を襲う。



 俺は銅の塊をあっさりと回避する。

 この銅球投げるにしては重すぎる。大体10キログラムを超える重さだ。


 素早い魔物にはまるで無力だ。重ければ重いほど、速さが無くなるのは当然の話である。


 チェーンを持った俺は思いっきり引く。

 勢いが俺の方にあった。


 俺はチェーン付きの銅球を奪う事に成功する。




 「イデェーッ! アヂィー!」



 無理矢理チェーンを奪われたチンピラは、両手を軽く火傷して悲鳴をあげている。

 チェーンを奪われた時に大人しく離さなかった故の代償。

 チェーンと手の摩擦熱は凄まじい。



 その隙に、俺はチンピラを越えようとした。




 すれ違う時に、激痛をこらえて最後のパンチをチンピラは俺に放った。



 しかし、所詮は悪あがき。ある程度予測していたら対処は楽だ。

 火傷は少し可哀想だが仕方がない。




 チンピラは諦めたように商店町の端に移動した後、地面に座り込んだ。

 瓶の回復薬を両手にかけて、ホッとしていたのを最後に見た。



 もうすでに次のチンピラを見つけた。

 2人目も勝利だ(チェーン付き銅球獲得)。



―――――――――――――――――――――――



 銅球がどこで売っているかは知らないが何かに使えそうだ。


 収納魔法の中に入れたい所だが、駄目だ。



 「よくもテメェ! 俺達の物を勝手にパクりやがって! ぶっ殺す!」


 ※あくまでも臆病者の想像です。



 とかいわれたらこの村に後々来づらくなる。最悪父さんに飛び火すれば親不孝者だ。


 チンピラのボスにマジギレされるのは嫌である。

 誰しも怖いものは幾らでもある。

 この世界どころか異世界にもいた[ゴキブリ]という動物は、9割越えの人は気絶するほどの勢いで驚くのと一緒である。

 ゴキブリのあの再生能力と素早さにはたまに驚かされる(たまに、である。大抵は恐怖に駆られるのだが)。

 まさかゴキブリを回避出来ずにおでこに衝突してしまったのは忘れられない。


 

 ……おっと、発展し過ぎたようだ。

 

 次はもしかして2人か?



―――――――――――――――――――――――

 3人目と4人目か



 2人は両手のナイフを走りながら構える。1人目のナイフと一緒だ。



 対する俺は、言わずもがな一人ぼっち。


 (自分でぼっちと言った俺はもうずっとぼっちなのか……モークタンを倒せなかっただけで。酷い話だ)。


 ぼっちとは楽で寂しいものである。自分が自由に行動出来ても、どこか物足りない。


 愛がないから?絆がないから?一番頼りに出来るものが人じゃないから? 優し過ぎるから?


 ぼっちは悪いことではない。

 ただ、自分の本当の幸せを掴もうとする限り無い探求心を持った人かも知れない。


 まあ、そんな後ろ向きに考えるのは良くない。「前向き、ポジティブ、積極的!」という言葉は意外と大事なのかも知れない。


 ……ともかく、俺は一人なのだ。

 一人と2人の戦力の違いは大きく違ってくるのだ。


 俺も回避の構えをとる。


 さっき奪ったチェーン付きの銅球が、役に立ちそうだ。

 銅球は使い所があるが、チェーンを有効活用出来そうだ。




 2人との差はあと8メートル。


 2人はナイフに力を込めている。

 俺を殺そうと殺気立っている。

 一応、この世界にも【法律】というものはある。ただ、機能していないだけである。



 いつからそんな風になってしまったのか?

 親が泣いているのではないか?


 あの人を尊敬し、感謝してきた俺にとってはサッパリ分からない(凄い怖くて少し変な人だったのは否定できないが)。


 チンピラと言うのはある意味自由なのかもしれない。

 法律やルールに縛られない生き方。


 もしかしたら俺のように、本当の幸せを求めているかもしれないんだな。


 俺は銅球とチェーンを分ける。

 意外にも簡単な取り外し方だった。


 2人との差が残り2メートルをきった所で俺は勝負にでる。


 買い物をしている冒険者達を巻き込んではこの勝負は負けなので俺はチェーンを折り畳んでいた。

 10メートルする銅製のチェーンを2回。これで2メートル50センチ位の集まりになる。


 俺は全力でその集まったチェーンを2人のチンピラ達の脇腹辺りを狙って振りかざす。

 仮面姿の俺がナイフを持ったチンピラにチェーンで立ち向かう光景を、誰が得をするのだろうか……(大勢の冒険者達が見ていた)。




 「ギャアァァッ!」


 

 2人のチンピラの内、1人が悲鳴をあげた。

 チェーンのどこかのつなぎ目が肉を食い込んで軽く引きちぎった。

 当然血が飛ぶ。脇腹だったのが不幸中の幸いだ(俺がわざと狙ったのだが)。

 かなり痛々しい。


 数滴の赤い血が俺のズボンにかかる。

 もう一人のチンピラはどうする?



 ……えっ!マジか……。



 相方チンピラはナイフを慌ててしまい、怪我をしたチンピラを介抱して端へと移動した後、瓶の回復薬をあげている。



 横目で見た俺に罪悪感がつのる。

 チンピラも実は、仲間思いの良い集まりかもしれない。

 やっぱり俺と一緒で、本当の自由を探してるのかもしれない。



 俺は申し訳ない気持ちになって、



 「ゴメンナサイ!」



 と言ってしまった。


 もし父さんがいたら、「殺そうとした人に『ゴメンナサイ』はどうかしてるぞ……。」という説教をくらっていたのだろう。


 ともかく、勝利だ。

 何ともいえない罪悪感を抱いたのはコレが初めてかもしれない。

 

 そんなことを考えていると直ぐに5人目が来た。

 後方を見ることが出来たので見てみると、後2人といったところか。

 


―――――――――――――――――――――――



 後2人だ!



―――――――――――――――――――――――

 5人目



 チンピラはナイフを構えている。



 俺はチンピラとその周りに集中する。



 ……ん?

 後方10数メートルに弓を構えているチンピラがいる気がするが。


 まあ、気のせいだと思……。




 チンピラが俺にナイフを振りかざす。

 後方のチンピラの一人が俺に向けて弓矢を撃つ。

 後方だが撃ってきた場所は商店町の端の方から。



 俺の方へ豪速球で矢が飛んでくる。



 「ジャッ!」



 油断した……。

 ギリギリアウトだ。

 チンピラのナイフを回避した後、本気で回避したが少し遅れた。


 俺はかすり傷を負う。

 矢は左肩に向かい、一部の鏃が服を破って身を軽く抉る。

 骨も少し削られたようだ。


 ビックリした俺は左手でとりあえず持っていたチェーンを落としてしまった。


 拾う時間は当然ない。


 痺れ薬ではなく、毒薬だったのが不幸中の幸いだ。

 俺は毒耐性を持っている。


 俺の場合、毒は冒険者達よりも耐性がある。


 緑草を見極めるための特訓で毒の草を食べてしまった。

 毒耐性が付いたのは毒草100枚ほど。それまでは喉の激痛地獄を味わった。

 耐性を持ってから、それまでの激痛地獄はヒリヒリにまで落ちた。子供だった俺には、人生で初めて耐性を得た幸福をゆっくり噛みしめたことだ。

 それからさらに、わざと毒草を食べまくったことでかなりの高度な耐性を得ている。


 だが、麻痺に耐性は無い。

 痺れ薬なら間違い無く終わっていただろう。


 多少の毒のダメージは受けるが、それでも耐性持ちと比べても明らかな差だ。

 

 今回は試合では勝ったが、勝負には負けた(銅製チェーン落とす、怪我をする)。


 これは自己反省が必要だ。



―――――――――――――――――――――――



 残るは後一人。それと弓使い。


 追いかけているチンピラ共は流石に諦めた?のか一瞬だけ後ろを振り返って見てみると、後ろには居なかった。


 さて、最後のチンピラと弓使いの回避をするか。



―――――――――――――――――――――――

 6人目+弓使い



 チンピラは当然のようにナイフを構える。

 他のチンピラ共とは違ってナイフが4本見える。


 弓使いのチンピラは弓を引き絞る。

 同時に3本を撃つつもりだ。

 弓を横にして構えた。



 俺は緑草を収納魔法からまた一枚取り出し、左肩に擦り付ける。


 頭の怪我は治ったようだ。

 全く痛くなくなった。


 ※本人は治ったと勘違いしていますが、実際まだ傷口は塞いでません。


 左肩の痛みがしみる。

 これまで何千回も経験してきた感触は流石に慣れた。

 決して経験し過ぎてはいけないものなのだが。


 とはいえ、もうあんなミスは当分しない(二度としない、とかそんな事いうと絶対やらかしそうだし)。

 

 さっきから弓使いが、あちらこちら動いているのは攪乱するためであろう。


 しかし、俺の目は誤魔化せない。


 君(弓使い)はそこにいるのだろう?

 前方4メートル先の武器屋の端辺りに!




 するとチンピラは4本共俺に投げた後、大股で構える。俺との距離後3メートル。

 走って来なくなった。


 同時に弓使いが俺が予測した通りの所で弓を俺に向かって撃つ。

 3方向に矢が豪速球で俺に飛んでくる。


 見事な連携技だ!



 俺は収納魔法から使いづらい銅球を取り出す。

 左肩は相変わらず悲鳴をあげているが、今はそんなところではない。


 ……重い。

 熟練の冒険者が使うならまだしも、扱った事もない俺は持つだけでも重い。


 銅球に棘のようなものを付ければ威力は段違いにあがるのに何故、この様なつるぴかボディにしたのか俺には理解できない。


 考えていると矢とナイフが俺に向かって飛んできた。


 絶妙なタイミング。

 ほぼ同時。

 全部で7本(矢3本、ナイフ4本)。


 この銅球、盾の代わりになりそうだ。

 次は絶対あんなミスはしない!


 まず、一本のナイフと矢が同時に俺の心臓辺りに刺さりそうだ。

 銅球を使って軌道をずらす。


 俺は右手の銅球を矢とナイフの間まで移動させる。



 「キィィィン! キィン!」

 

 

 ナイフが先に銅球に当たって嫌な金属の衝突音を鳴らす。

 矢がその後に飛んでくるが、鏃が銅球に軽く衝突して軌道を変更。

 軌道が俺の身体からそれた。

 ナイフは衝突音を響かせた後、役目を果たしたかのように地面にぽとりと落ちる。


 喜んでいる暇もない。

 2本は銅球で防げた。他の2本は既に俺の身体からそれていた。


 残り3本。

 矢1本とナイフ2本。


 しかし、これも銅球で防いだ。

 2本のナイフは俺の胸あたりに来た。


 それなら銅球をそこまで移動すればすむ話。



 「キィィィィン!」



 というさっきより五月蝿い金属の音を容赦なく響かせる。

 そして、最後は2本ともぽとりと落ちた。


 残り1本の矢は右に移動して回避した。

 両肩を怪我するくらいなら左肩重傷のほうがどちらかというと、まだましなのである。




 次にどっしり大股で構えているチンピラ。



 ……ん?

 大股で?


 だったらする事は一つだ。チンピラの股を潜ればいい。

 左右を警戒しているのはあからさまにわかる。


 逆に誘導しているように見えるが、チンピラが何か隠し持っていると言うわけではない。


 俺は大股で構えているチンピラと残り数メートルでスライディングする。

 スライディングはギリギリの高さでチンピラの股を潜り抜ける事に成功した。


 潜り抜ける時に股間を銅球で殴ってやろうかという小さなイタズラ心がくすぶって来た。


 ……でもやめておくことにしよう。

 股間を蹴られたあの痛みは、男の俺にも痛烈に分かる。

 下手をすれば失神する勢いなのだ!




 構えていたチンピラは目を見開いて自分の大股を見る。

 そんなに自分の股を見るのが好きなんだろうか?



 ともかく、後は弓使いただ一人。




 弓使いはあそこの7本で仕留めたと思っていたのか慌てて商店町の真ん中に飛び出し、弓を構えている。



 飛び出す必要あった?

 コソコソ端で俺ねらってた方がチャンスではないかと思うのだが。


 俺は銅球を構える。

 相手が弓使い一人で、こちらに盾があったのなら勝敗はほぼ決まったようなものだ。




 弓使いは矢を発射する。

 矢は豪速球で銅球へ誘われる



 「キィィン!」



 という金属音が響き渡り、矢もぽとりと落ちた。



 俺は右手に銅球を持って弓使いを殴った(重かったけどガマンした)。

 お腹を狙ったのだが、同時に弓も砕けて弓使いは後ろに倒れた。


 長い間使ってきた弓なのだろう。

 所々弓が毒や傷で腐食していた。


 少し鉄が使われていたのが羨ましくてしょうがない。


 申し訳ない事をした。


 俺は冒険者商店町を走る。

 後少しだ。


 強攻撃はあったももの、勝利だ(銅球無かったらヤバかったかも)。


 後は住宅街を抜けるだけ!


 俺は収納魔法の中に銅球を入れた(コレで助かったけど重いので、やっぱりしまった)。



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