そして勇者は……
「アルス=スミス!
お前をパーティから追放する!」
「そんな!勇者さま!」
ボクはたった今、勇者から追放宣言を受けました。
「お前は剣を使えない!斧も持てない!槍も使えない!魔法も唱えられない!
荷物持ちにすらなれないどころか、パーティのお荷物なんだよ!
お前を庇ったために召喚士はパーティを抜けてしまったんだぞ!」
「しかし!ボクをパーティに入れなさったのは国王陛下です!」
「うるさい!
これから先、魔王を倒して俺たちは英雄になるんだ!
なにもできないお前は英雄になる権利などない!
役立たずのお前など魔物の餌にするところを、聖女たちのお情けで町のすぐそばでの追放にしてやったんだ!
感謝されこそ恨まれる筋合いはない!
二度と顔を見せるな!」
勇者はボクの襟をつかんでそう怒鳴ると、門に向けて投げつけた。
「…うぅ…あんなやつ…勇者じゃ…な……い………」
そう言ってボクは気を失った。
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「陛下、質問がございます!」
その頃王宮で国王と宰相が話し合っていた。
「どうした騎士団長?」
「なぜあのような貧弱な男が魔王討伐パーティに組み込まれたのですか?
あのような者を入れるくらいならば、うちの新人のほうがよほど戦力になりませんか?」
「そう言えば彼には説明していませんでしたね」
「そうであったな。
あの若者は『認定士』なのだよ」
「鑑定士ですか?
鑑定能力ならば、魔法使いと治癒術士が使えたはず…」
「いや、『認定士』だ。宰相」
国王が視線で指示すると、宰相はとなりの部屋から王冠を持ってきた。
それには、拳大のルビーが嵌め込まれていた。
「このルビーなのだが、元はただの石ころだったと言ったら信じるかね?」
「石ころ…ですか?
まぁ、宝石といえども、採掘されて人に原石だと認められるまでは…」
「いやそう言うことではない。
このルビーは元々、一万人に見せたら一万人が
道端に落ちているようなただの石ころだと答えるような、価値の無いものだったのだよ」
騎士団長は豆鉄砲を食らった鳩のような表情をした。
「信じられぬのも無理はない」
「あの若者に、その石ころをルビーであると『認めさせた』ところ、このように美しい宝石になったのですよ」
騎士団長は王冠の宝石と、国王と宰相の顔を交互に見ながら、次の言葉を待つしかできなかった。
「私も陛下も数年前まで知らなかったのですが、『認定士』は勇者以上に希有なジョブでして、認めた「こと」が現実になるというスキルを備えているのです。
記録によると前回現れたのは建国前、2000年以上昔になります」
そう言って宰相は王冠をとなりの部屋へ戻しにいった。
「強力なスキルではあるのだが、「認め」の誘導が難しくてな。いくらか試したのだが、成功例はアレひとつだ、
失敗例ならたくさんあるぞ、石ころになった宝石とかな」
「そんな扱いにくい人物をなぜ!」
その疑問には戻ってきた宰相が答えた。
「表向きは陛下が指名したことになっておりますが、勇者以外のメンバーは『彼』が『認めた』のですよ。
おかしいと思いませんでした?
あのメンバーはそこそこ優秀ではありますが、『一流』が1人もいないことに」
騎士団長が思い返してみれば、あのメンバーに入った剣士は、騎士団の中では中堅の実力であった。
国王が選別したのならば、あの剣士は決して選ばれない。
魔法使いも同じ。
治癒術士は神殿では上から数えた方が早い実力ではあるが、一流かと言われると肯定し難い。
しかし報告によると「彼」を除く彼らは、勇者の足を引っ張るどころか、善戦し続けている。
「初代国王は、認定士と共に国を起こしたそうだ。
故に我らは『彼』にかけているのだよ」
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一週間後、となりの村にたどり着いた勇者たちは、
勇者だけが満身創痍であった。
「ぐっ…なぜだ!オレは勇者のはず…
なぜ聖剣が抜けなくなったんだ!?
なぜスキルが発動しない!?」
宿場についた後、手当てのために勇者の服を脱がした剣士は…
「な……勇者の聖痕が…!」
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その四日前、町の治療院にてアルスは目を覚ました。
「やっと起きたか、三日も眠ってたんだぞ」
「召喚士さん、ご心配おかけしてすみません」
「気にしない、気にしない。
頭打ってたみたいだし、変に悩むと治りが遅くなっちゃうぞ!」
(いい人だなぁ……この人が勇者だったら良かったのに…
いや、そうに決まってる!
きっと神様は間違えたんだ!
召喚士さんこそが『勇者』なんだ!)
聖剣が新たな主に出会うのはそれから一ヶ月後のこと。
アルスは自分が『認定士』だとは知りません。
続きはありません、多分…




