集結
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では、どうぞ
洛陽の董卓を圧倒するだけの兵力は集まった。
各地から有力な諸侯が詔勅に応じて集結した。
名門で言えば袁紹・袁術、その他にも黄巾の乱で名を上げた、孫堅、公孫瓉なども集まっている。
それぞれの諸侯が万を超える兵を率いて集まってきているため、曹操軍五千はどうしても諸侯の中では見劣りしてしまう。
しかし、曹和は決して数で劣っていても、兵の質では負けていないという確固たる自信があった。
曹操に兵の調練のやり方を一任されてから、配下の黒騎は勿論、新兵の調練には特に厳しすぎるほどの調練を繰り返した。
さすがに死人が出るほどまでの過激な調練はしなかったが、それでもすでに曹操軍の中では最も厳しい調練として知れ渡ることとなった。
曹和がそこまで厳しく調練するのは、調練如きで脱落する兵は戦場で真っ先に死ぬ兵であるとわかっているからであった。
戦で誰が死ぬのかは正直誰にもわからない。
誰が生き残るかもわからない状況でも、少しでも生き残るためには一人一人が強くる以外に方法がない。
数で劣る曹操軍は他の諸侯の軍にも負けないようにするには、一人一人の質を高めていく他に生き残る術はない。
「これほどの軍勢が集結するとは、さすがに言葉を失うな……」
曹和は諸侯が集結している軍勢を眺めながら、小声で呟いた。
丘から眺める三十万を超える軍は圧倒的だった。
軍勢一つが蟻のように見えてしまう。
いかに董卓と言えども、三十万を超える軍を相手にするには骨が折れるだろう。
「これほどの軍をいつかは率いてみたいものだな……」
「兄者……いつからそこに」
曹和の横から唐突に曹操の声が聞こえる。
「先ほど軍議が終わった」
「また、連日のように宴会をしていたのですか?」
「ここに集まった諸侯には戦う意志はないらしいな」
曹操は深い溜息をつく。
曹操は連日のように開かれている軍議に毎日参加している。
しかし、軍議とは名ばかりで毎日のように宴会を開いているに過ぎない。
「董卓と戦う気があるのは孫堅くらいだ」
「孫堅ですか……。黄巾の乱では獅子奮迅の活躍で一気に名を上げ、軍も精強だとか」
「袁紹が本腰を入れれば、諸侯も動くんだが……」
諸侯は互いに互いを牽制している。
なるべく自軍の損害を最小限にとどめたいため、積極的に動く者は中々いなかった。
また、反董卓連合軍の盟主は満場一致で袁紹に決まったため、曹操がいくら董卓を攻める気があったとしても、袁紹が動かなればどうにもならない。
「いつ攻めることになるか予想がつかない……」
さすがの曹操も董卓相手に単独で勝てると考えているほど愚かではない。
董卓軍は反董卓連合軍よりも兵の数が少ないとはいえ、地の利や皇帝は董卓が握っている。
日に日に蓄積されていく疲労と戦いながらも、曹操は毎日のように軍議に足を運んだ。
さすがに、盟主の袁紹も連日のように続いている宴会に飽きがきたのか、ようやく本腰を入れ始めた。
曹操は諸侯の軍議で決定したことを伝えるため、将校らをすぐさま招集した。
曹操の急ぎの知らせによって慌ただしい中、曹操軍の将校が一堂に集まった。
「ようやく袁紹が本腰を入れて、董卓を攻める気になったみたいだ……。汜水関を孫堅が先鋒を務め、他の諸侯もそれぞれの本陣と戻った。まもなく、総攻撃が始める」
曹操はようやく攻撃が開始されることを伝える。
「先鋒は孫堅ですか……」
静かな空間で不意に曹和が呟く。
「何か気になるのか?」
「一つだけ気になることが……。孫堅と袁術の仲があまりよくないと聞いたことがあったので、もしかしたら袁術が何か孫堅にするのではないかと」
「孫堅と袁術がか……。確かにその話は聞いたことがあるが、それだけでは何とも言えないな」
曹操は曹和と同様に同じ意見で、袁術が孫堅に何かするのではないかという認識はあった。
「他にはないか?」
曹操は一人一人の将校の顔を見ては確認していくが、誰も何も言わない。
「では、我が軍も準備が整い次第、孫堅軍の支援を行う」
曹操は軍議で決められた役割を言い終えると、本陣の幕舎に戻った。
曹和もまた幕舎から出ようとした時に、自分の肩に誰かの手が巻かれる。
「忙しそうだな、曹和」
「何か用か、曹洪」
「そんな怖い顔で睨むなよ」
曹和は不機嫌そうな表情で曹洪の手をどけようとする。
曹洪、字は子廉。曹和の従兄に当たる人物だ。
「気軽に触ってくるな……」
「それは悪かった……。どうだ、これから少し手合せでもしないか?」
曹洪はすでに手合せすることを前提に話しており、当の本人はやる気にみなぎっている。
「お前……。兄者の話を聞いていなかったのか?すぐに出撃だから、準備しろとついさっき言ったばかりだぞ」
「曹操様の話はしっかりこの耳で聞いていたぞ」
自慢げに曹洪は自分の耳を触りながら露骨に曹和に近づこうとする。
曹和はせっかく曹洪の手を払いのけることに成功していた。
それから、さらに近づこうとしてくる曹洪に言う。
「聞いていたなら、さっさとやれ!」
気迫のこもった曹和の怒鳴り声だったが、曹洪は臆することなくわかったと言わんばかりの表情をしながら、幕舎を出て行った。
「やれやれ……」
曹和はつい怒鳴ってしまった自分が不甲斐ないことに反省しながら一息つく。
曹和は曹洪が苦手ではなかった。
ある程度の曹洪のことは把握していたつもりだったし、何より腕が立つ所に関しては認めていた。
曹洪の体の至るところには切り傷が常に残っており、曹洪が日々鍛錬をしていることも知っている。
実際に、兵の調練の合間を縫っては、曹洪とも何度か手合せをし、曹洪の実力は肌で感じ取っていた。
「あの気楽さがなければいいんだが……」
曹洪は曹和から見れば気楽さが先行しすぎている部分があった。
曹洪の気楽さは時と場合によっては良い方にも悪い方にも転がりそうなところはあった。
「俺も早く準備をしなくて……」
曹和は慌てた素振りを見せながら、幕舎を出ていく。
曹操が将校を集めた軍議を行った翌日、曹操軍五千の出撃準備は完了していた。
曹操は満足げに頷きながら、全軍を率いて孫堅軍の支援を行うために進軍を開始させた。
今回は短めの内容となりました。
ようやく、次回から反董卓連合軍の戦いになります。




