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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
Exploratory Various Humans
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Home Town 6

 村娘と魔物は、森の中で会うようになった。場所は最初にあった切り株の近くだ。その場所はちょうど人間の村と魔物たちが多く住む場所どちからかも少しばかり離れていた。最初は月の満ち欠けが一周する間に一度ほどであったが、段々と二人の仲と会う間隔は近くなってきた。そして毎日のように会うようになったのだ。魔物はある日は鳥に姿を変え、彼女の演奏に合わせて囀りをしたり、また別の日には魚に姿を変えて、水の中から飛び出してみせたりして彼女を楽しませていた。


 二人はまだ自分たちが親しい仲になっていたことはわかっていたが、特別な思いを抱いていたことことには気づいていなかった。魔物と人間と言う種族差がそれを彼女らに認めさせるのに邪魔をしていた。

  ある日、彼女が帰ったあと、魔物も自分の棲家に戻ろうとしていると、一冊の本が落ちていることに気づいた。「神の国の英雄伝説」と銘打たれた本で、開くとぎっしりと文字でページが埋め尽くされている。手と目玉だけでそれを眺めるうちに、英雄となる騎士がバイオリンを弾くシーンに辿り着いた。魔物はその文章に沿って自分の形をするすると変えていった。彼はやがて物語に出てくる英雄の姿で楽器を操っていた。

 彼女が手本を示していたのと同じ姿になっていたので、彼は彼女のことを思い出しながら、バイオリンを弾き始めた。まだ上手とは言い難いが、かなり良い音が出るようになった。しばらくすると、後ろでどさり、と荷物を落とす音に続いて女性の驚いた声が聞こえる。

「まぁ!」

 彼女の足元には、いくつかのバイオリンの教本が落ちている。英雄の姿をかたどった魔物は急いで振り返る。

「驚かせてすまない。僕だ...」

 彼女がわずかに体を震わせるのを見て、彼は急いで弁明をしようとする。が、その言葉を遮って彼女は英雄の姿をした魔物に抱きついた。

「言わなくてもわかるわ!弾けるようになったのね!」

 それからも魔物と村娘は変わらず毎日練習を続けた。ただ違っていたのは、この魔物が英雄の姿、つまりは人間の姿で過ごすようになったことだった。それは彼らの関係にさほどの影響を与えていなかった。それは人間と魔物でもなく、親友という関係であった。そして、双方ともその関係は永遠に続くと思っていたのだ。


 しかし、ある日人間と魔物の間で、激しく長い戦いが起きた。魔物が人間を襲い、人間も魔物を倒す。今までも戦いが無かったわけではない。しかしそれは魔物が理由なく人間を襲ったり、人間が魔物の住処に入り込んだりしたときで、あくまで短期的なものだった。今回は何日たっても戦いが終わらない。スライム状の魔物はあまり戦いを好まず、平穏に森で暮らしてきたため、この事態に驚きを隠せなかった。知り合いの大熊の魔物も戦いに出たと聞いた。しばらく村娘と魔物は会えなくなっていたが、それでも二人はお互いのことを心配していた。時折小鳥に一言二言の文を持たせてはやりとりをしていたこともあった。

 彼はそんな中で他の戦いを好まぬ魔物たちと、人里からさらに遠くに離れたところへ逃げること考えていた。戦いが静かになっていたある夜、彼女らは無意識のうちに、いつもの場所に向かっていた。もしかしたら村娘と会えるのではないかと期待して。スライム状の魔物は戦いが激化してからというものの避けていた英雄の姿をとり、バイオリンを持って行った。音が響くから演奏はできないが、これがあると平穏な頃を思い出せる。そして、二人はいつもの場所で再会し、再び強く抱きついた。

「もう会えないかと思っていたわ。嬉しい。」

「僕もだ。最近戦いが激化していたからな...すごく心配したよ。」

 しばらく二人は切り株の上に黙って座っていた。魔物はゆっくりと口を開いた。

「実はここを離れようと思っているんだ。戦いを好まぬ魔物もいる。彼らを危険にさらすわけにいかないからな。」

「そうなのね。」

「戦いが終わったら、また会おう。」

「もちろんよ。いつまでも待ってるわ。」

 しばらく小さな風の音に二人で耳を澄ませる。今度は彼女がゆっくりと口を開いた。

「ねぇ、久しぶりにあの姿を見せてよ。」

「あの姿...?」

「あの最初にあった時の姿よ。」

 英雄の姿は立ちどことに溶け、スライム状の魔物になった。彼女は今や液体状になった英雄の手だった部分に触れた。彼女の温かさが魔物の冷たい体に染みた。静寂の時がゆっくりと流れる。

「ずっとこうしていたいわ。」

「そうだな...」

 そして彼女は彼のほうを振り向いた。英雄も村娘のほうを見た。その後のことは、彼の脳裏に激しく焼き付いている。彼女が目をかっと見開き、彼を突き飛ばしたのだ。次の瞬間光の矢が彼女の眉間を射抜いたのだ。

ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。

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