Home Town 3
曖昧な物言いながら、一希が勇者レホの双子の兄弟であったカズ少年であるというアリア。
「故郷に現れて、かつてのカズ少年と、一希さんの姿とがついに一致したのですか。」
チコの言葉にアリアは頷く。
「ああ、昔、あの神殿の近くでよくカズとレホは遊んでいたんだよ。近所の子供と一緒にね。大人たちで忙しいときは、私が迎えにいったものだ。」
彼女は少女と赤子の映る写真をテーブルの中央に戻し、少年と夫婦の映る写真を手に取る。目を細めて写真を眺めた。
「私は思ったんだ。もし、君がカズなら、きっと、親に会わせるのが私の役割だとね。最初、私の幻覚かと思ったんだよ...仲間を引き連れているところを見ると、どうやら、そうではないらしい。カズが戻ってきたんだ。でも、彼はカイナのことを全く知らないと見た。故郷の曲を奏でててもやはり反応がないことを見ると、記憶を失っているんじゃないかと思ってね。」
「それで、故郷を、親を見せるのが一番だと思ったんですね。」
チコは視線だけを二つ並んだ写真に送る。少し考えるように顎に手を当ててから言った。
「でもどうして、カズさんなら大人になったアリアさんのことがわからなくても仕方ないのですか。それに、幻覚だと思ったって。」
アリアは一度目を伏せてから、再び開いて言った。
「私がこの姿になった時には、もうカズはこの世界に存在してなかったからだよ...」
「カズ少年は魔物との戦いで亡くなったんだ...かの双子はとても仲が良かったんだ。二人で一人って言われるほどにね。勇者はその仇討ちのために強くなったといっても過言ではないんだ。勇者は深く傷ついて、彼の話を出すことすら辛そうだった。そういうことが重なって、私は初めて君に会った時、君の中にカズ少年の幻を見ても信じ切れなかったんだ。」
一希はカップから顔を上げて言った。その中身はだいぶ減っており、斜めにすれば底が見える。
「カズが死んだ?」
「そう、死んだはずの君が成長して現れた理由はわからない。ただ、遺体が無かったから、もしかしたらどこかで生きてたんじゃないかって思ってね...私にできることは、思い出すのを手伝うことだけだとおもったんだ。」
その時、シンのどたどたとした足音と鎧がふわりと居間に入ってくる。マーと女性がシンと一緒にひょっこりと姿を現す。マーは手を振りながら椅子へ戻る。
「やっほー、おまたせ~終わったよ~」
夜、村の宿屋の一室でシンは本を読んでいた。この町で語り継がれている神話が記載されている。この本は最近はもっぱら観光か文化研究で用いられる以上の活躍をしていなかったが、今となっては事実になるかもしれないものだった。突然閉められた窓がコンコン叩かれたので、彼が窓際に寄ると、銀の鳥の顔が闇夜に浮かんでいた。
「こんばんは。」
「ああ、一希は一緒ではないのか。」
銀の巨鳥は部屋の中で羽を大きく広げた。シンは本に栞を挟む。
「今晩はご実家で両親と過ごされてますよ。伝言ならしておきます。」
シンの言葉に鳥は首を捻る。
「両親...?彼は異世界から死んで来た人間だろう。」
「そうらしいんですけどね...なにやら死んだはずの勇者の双子にソックリだかなんだか...正直僕にも理解が追い付きません。」
「なるほど、またアヤツを呼び出す必要がありそうだな...時間が無いというのに...!」
「時間、といいますと?」
「魔物たちの動きが最近活発化してきているらしい。もし、こちらに攻め込むつもりなら、緊急的に対応する必要がある。」
「なるほど。」
鳥は窓サッシに飛び乗ると、首を外へ伸ばした。
「伝言を頼む。明日、神殿に来てくれと。」
「わかりました。」
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
年末年始の更新について次の更新を来年の1月10日にさせていただきたいと考えております。
よろしくお願いいたします。




