表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
Exploratory Various Humans
93/182

Home Town 2

 一希たちが少し前までいた国、ムーン王国はある標高の高い山があった。ごつごつとした山肌には雪がうすく積もっている。そんな山の斜面、ある一つの岩の上にピエロが立っていた。山の標高は非常に高く、もちろんそこにいる彼らも高い場所に位置し、曖昧ながら学園と神殿のある森が見渡せる。この場所には明らかに道化師のような姿は不釣り合いだ。そんな彼の隣には騎士が立っている。整った顔立ちと透き通る青い髪が、岩山を抜ける強風に直面するも、殆ど動かない。

「勇者はカイナの町へ向かったそウデスよ。」

「そうか。」

 騎士が立ち上がった。彼は剣を鞘から抜いて真っ直ぐに構えた。

「俺も向かおう。今度こそ決着をつけてくれるわ。」

 ピエロは足元の雪を少し蹴り上げて声を出して笑った。その後、仮面に張り付いた笑顔の下から、軽蔑の含みを持つ声が聞こえてくる。

「軍の出動要請はマダですケド。」

 騎士は乱暴に大きな丸い石をピエロの顔面目掛けて投げた。彼がギリギリのところでそれを受け止め眺めると、石には大きなキバのような物が埋まっているのがわかった。ピエロが訝しんで、それをくるくると手元で弄び、騎士に向かって声を掛けようとしたとき、騎士はそれを遮るようにして言った。

「支援の軍などは要らぬ。」

「オヤマァ!!!」

 ピエロは大げさなリアクションで驚いて見せるも、騎士はそちらのほうを見向きもしなかった。視線を手のひらに落とし、強く手を握りしめる。

「魔王の力などいらぬ。あの付近には軍部には入っていないが、人間に恨みを持つ魔物がまだいるはずだ。彼らと協力する。」

「デハ、我らが魔王さま軍は、神の復活にだけ注力すれば良いと言いたい、そういうコトですね。」

「言い方が腹立たしいが、まぁ、近いことだ。」

 吐き捨てるように言って騎士は突然歩き出す。別れの挨拶すらせずその場を離れようとする彼に、ピエロは手を振って言った。

「リリアさん、でしたっけ?の仇打てるといいですネェ。まぁ、がんばっテクださいネ!」

 その言葉に、騎士の整った顔は一瞬ゆがんだ。そして彼は振り向きざまにピエロを切り付けた。しかし剣は空を切っただけだった。その刃が道化の首を裂く前に、忽然とピエロは姿を消していたのだ。




 カイナの町の小さな民家では、静かになった部屋に、チコが気まずそうにカップを置く音が響く。

「アリアさん、ちゃんと説明してください。」

 一希が強めの口調でアリアに再び尋ねると彼女は小さく頷いた。

「やっぱり君は覚えてないんだね...繰り返しになることもあるが許してくれ。」

 この言葉の後、少し間をおいて彼女は話し始めた。

「ここは、勇者レホの故郷、彼の母親の家だ。そして、あの写真と話から、勇者が双子だということがわかったね。そして君は母親が信用するほどに写真の子供に似ている。そこから考えられることは?」

 一希は写真のほうを見つめたまま言った。

「俺は、勇者の兄弟...」

「そういうことさ。そして私は君の同郷の者なんだ。」

 一希はそう呟いたものの、半分以上自分が勇者の兄弟だとは思っていなかった。自分はここからみた異世界で生まれ育ったのだかから。そんなことを知ってか知らずか、彼女は二人の少女と二人の赤子が映る写真を手元に寄せ、悲しげな表情で眺めた。

「私はジメハテの町付近の広場で初めて君を見たとき...勇者レホだと思ったんだ。この辺に来ている噂は聞いていたこともあってね。私のことを覚えていないし、様子がまるでおかしい。私が初対面のように接しても、君は違和感一つ示さない。人が変わったかのように見えたよ。だが私には君に見覚えがあったんだ。」

「見覚え。」

 一希が彼女の言葉を繰り返した。

「故郷の曲を奏でても、君は反応を見せなかった。一晩考えて、勇者の性格は兄弟のカズのようになったと思ったんだ。」

「どうして、その時に聞かなかったんですか。」

 チコはカップの中をスプーンでかき混ぜながら尋ねる。

「何か理由があると思っていたし、私のなかのカズの面影はあくまで子供の頃のものだ...そして、勇者をを怒らせたくなかったんだよね。」

 一希はカップに映る自分の顔を見つめようとした。カップを受け取った時ほどはっきりと見ることができない。ミルクが入っているので、その分白さが強くなって、反射を減らしているのだろうか。かき混ぜると崩れていく...

「だけど、夜の見張りの時に見た君の寝顔はまるで、兄弟のカズ少年が大人になった姿だったんだ。カズ少年なら、大人になった私がわからなくても仕方がない。だから、君がレホではなくカズなんじゃないかという考えもあったんだ...別れてから少し調べものなんかもしてね...再び君が私の目の前に現れた時、それは確信に変わったんだ。」

ここまで読んで頂き誠にありがとうございました。

本日は投稿時間が遅くなってしまい申し訳ございません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ