Preparation Dream
一希は仲間や銀の鳥と目的を共有したその後、戦いに備えることに決めた。
そして、シンとともに、魔物との戦いの理論や経験についてジャコンやアタリイに再び教鞭をとってもらっていた。自分にとっては焼け付け刃かもしれないが、彼らの知識は本物であるし、なるべく多くのことを吸収しておきたかった。
剣術や魔法も、やはり基礎を学ばなければうまく使うことが出来ない。彼は短い非常に短い間であったが多くのことを学びとった。
日が沈んでくると、一希は仲間ともに夕食をとり、結局すっかりと慣れ親しんだ寮の部屋へと向かう。あっという間に眠りについてしまった。
目を開けると、一希の目の前は天井だった。仰向けで寝ていることはわかったので、頭を動かしてみると、自分の手が見えた、指が短く、手全体がぷっくりしていて、まるで赤子だと思った。
遠くにある鏡を見ると、赤子が写っていて、自分が赤ちゃんになっていることがわかった。一希はこれが夢だとわかっていたせいか、妙に冷静だった。部屋にはどことなく懐かしい匂いがする。足音が近づいてきて、自分の顔を母が覗き込んでいるのがわかった。
「あら、起きたのね。私の一番の希望。かわいいかわいい私の坊や。」
彼女に抱きかかえられると、とても懐かしい気持ちで胸が一杯に満たされた。母親はときに優しく、ときに厳しかったと思い出す。彼はいつも彼女の愛を感じていた。
ふと、目を閉じて開くと、彼は学生だった。授業中で、黒板の内容からすると小学生。一度交通事故で死ぬ前の、いわば現代の世界だ。ノートの隅に目を落とすとファンタジーの世界に出てくるような生き物の落書きがされている。角の生えた動物たち、空を泳ぐ龍。顔がはっきりと見えない教員が黒板に文字を書き付けているうちに、机の中にある別のノートを見ると、無地の紙に二人の男が剣を持っている絵が描かれていた。教員が振り返って、いきなり一希を名指して立って答えを書きに来るように言う。彼は立ち上がった。
立ち上がると、教室の雰囲気は変わっていた。黒板の内容から推測すると高校生だった。指示された問題は普通に答えることができた。自分の席に戻って、机の上に乗った、特に落書きがされているわけでも、熱心に公式が書き詰められていたわけでもないノートを眺める。鐘が鳴ることは、授業が終わりを示していた。その前後から、せっかちな同窓たちはお喋りを始めている。黒い学生服が目に眩しく見える。
帰りになって、鞄を持つと、よく見るとカバンはビジネス用のバックだった。疑問を持ちつつ、視線を上げると周りの制服を着た学生たちはいつの間にか同僚たちになっていた。あまりに早い展開に思わず目眩を感じた一希は、精神を落ち着けるためにバッグからヘッドホンを取り出す。お気に入りのゲームのサウンドトラックが流れ出す。会社を出ると、目の前の信号は青信号で、車がスピードを落とさずに突っ込んでくる。真ん中には女性がいた。彼の足は願うほど早くは動かなかった。しかし、彼女だけを助けることはできていた。
目を覚ますと、朝だった。疲労感が肩のしかかり、冷や汗が今にも滴りそうになっている。荷物を纏めているシンが目をぱちぱちさせる一希を見つけ、声をかけた。
「おはようございます。お目覚めはいかがですか?」
「うーん、あんまし。この世界に来るまでの人生の回想だよ。なんか走馬灯っぽくて不吉だなぁって。」
「それは嫌ですねぇ。これからが大事なときだというのに。」
「だよなぁ。夢って選べないから困る。」
シンは頷いて、学食のパンフレットを開いて一希に見せた。ページには大きくパンケーキの写真が掲載されている。二段重ねで、さらに生クリームと苺がついている。彼は本の裏から半分顔を覗かせていった。
「景気づけに美味しいものでも食べませんか?」
食堂で合流したマーとチコにその話をすると間もなく、四人は2段重ねのパンケーキを分けて食べていた。
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