Second Expedition 4
一希はすぐに学園に戻り、空いている教室を借りて集まった仲間たちに神託の話をした。その場にはジャコンも一緒だった。一希の話が終わったあと、それぞれが思いを抱いていたようだが、最初に声を上げたのはマーだった。
「じゃあ、やっぱり一希は勇者みたいな存在だったのね!」
「ま、まあそういうことになるみたいだ。」
まだその事実に抵抗があるのか、一希の声には恥ずかしげな雰囲気をわずかに含んでいた。
「もっと自信持っていかなくちゃ!神様に選ばれたんでしょ!」
マーは一希の背中を叩いて激励する。教員は驚いた様子を隠していなかった。
「神託や文様の伝説は本当だったんだ…本当に驚かされてばかりです。」
一方で、話をメモにとってまとめていたシンはペンを置いて言った。
「ということは、次はカイナの町へ向かう、ということですよね。たしかそこって、魔物との激しい戦いがあった場所ですよね。」
「私、うまく行けるか心配です…」
シンとそれに続くチコの声はどちらもあまり明るいものには感じられなかった。勿論一希も心配でいっぱいなのだ。
「そうよね、やってみないとわからないわ…」
マーも心無しか不安げであった。ジャコンは彼らにかける言葉に悩んでいた。実際に遠くに行かない自分にとって鼓舞することや、強い言葉をかけることならできても、それが彼らに届くかは別なのだ。
どんよりとした空気が場を支配する。一希は神託を受けたあの不思議な出来事を経て、少し気を急がせていたが、いざ現実に立ち返って話してみると、不安が蘇ってくるものだった。そんな様子を見て、マーは少し唸ってから、ノートをぱたりと閉じ、笑顔を浮かべた。
「うまくいくかもよ。一希こそ、希望をつなぐ勇者なんでしょ!私手伝うわ!それにカイナの町は最近ビジネスの相手にしてなかったもの。魔物との戦いっていってもかなり前の話でしょう。私にとってもまたとないチャンスよ!」
「そうですね…ここでじっとしていても始まらないですものね。」
彼女の言葉に勇気づけられたのか、シンはノートから目を上げていった。ジャコンも彼女らを応援するように言う。
「何か私にもできることがあったら言ってください。微力にはなると思うが…全力を尽くさせてもらいます。」
周囲の雰囲気に背中を押されたのか、チコも口を開いた。
「私も…がんばります…」
一瞬ここでみんなと別れて一人で次の場所へ向かおうかとまで考えていた一希にとって、彼らの言葉はとても嬉しいものだった。思わず椅子から腰を浮かせて前のめりに言葉を出した。
「ありがとう!俺やれる限りやってみる!」
「そーよ!一希だってそんなプロの勇者じゃないんだから、ダメなときはダメ、とりあえずやってみましょ!」
マーに軽くながらもバシバシと背中を叩かれる一希。彼女の芯の強さがこういうときに彼の支えになっていた。
その後の相談で、出発は明後日の朝になった。戦い同士のスパンが短くなりすぎるのはどうかということ、マーは引き渡した商品の確認やこれまでの支払いを済ませたいということもあった。支払いなどがどのように行われるのか、一希はこの世界の商慣習に興味がないわけではなかったが、今日からは準備に徹することにした。こうなると、皆の足を引っ張るわけには行かないのだ。
銀の巨鳥に明後日の出発を伝えるべく、一希は図書館を出る。彼を待たせてしまうことになるため、なるべく早く伝えようとている、それ故か自然と歩みは早まっていた。廊下を早足で抜けようとしたとき、一箇所だけ開いていた窓から強風が吹き込んだ。
風が吹き止むと、そこには巨鳥が居た。彼は翼を広げ、一希に語りかける。
「勇者よ、覚悟が決まったか。」
「覚悟、と言われると、そこまで強くないかも。でも俺には仲間がいるから、頑張り通すって決めたよ。」
「そうか。では共に戦おう。また明後日、同じ場所で会えるのを楽しみにしているぞ。」
一希が強く頷くと、銀の鳥も小さく縦に首を動かす。そして身を翻して森の中へと消えていった。鳥が伝える前に出発日程を知っているということに後から気づき、窓辺に急いで近寄ったが、彼が見たのは銀の光が空へ消えていくだけであった。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。




