Second Expedition 3 前
「これは...」
銀髪の男が足を組むのをやめて、龍の絵の前に立つ。中性的な声は少し得意げだった。
「強そうだろ。この龍は、この世界の未来を閉ざす。是非君たちの手で倒してもらいたい。」
男が絵の龍に触れようとすると、その龍はぬるりと動き出した。
「勇者は負けちゃったけど、きっとカズなら大丈夫。この世界の神様である私が保証するよ。君は異世界転生を経た特別な人間。」
この声の主は、この世界の神。自分の数奇な運命させたのもこの人なのだろうか。一希が答えを求め、声を出そうとすると、彼の手がとたんに熱くなった。驚いて掌を上に向けて見ると、ほのかに炎がその掌から出ているのがわかった。その横を、夜の色した龍が泳ぎ抜けていく。
「もう一つ解説が必要だね。伝説の炎の魔法っていうのは、悪きし者だけを焼く魔法だ。」
黒い龍が手の上の炎に飛び込む。一希は手のひらの上で起こる奇妙な出来事を眺めていたが顔を上げて声の主へ尋ねる。銀髪の男も同じ光景を眺めていた。
「...つまり、この魔法で龍を焼けってことですか。」
「えっとね。この魔法は、君に悪意を持って敵対する者だけを倒せる護身術みたいなものさ。まぁ、君が悪用するとは思えないけどね。」
「龍を倒す方法は異なるのか。」
微妙にはぐらかされたような答えに、男は再び低い声を出した。龍が飛び込んだことで火はすっかり消え、真っ白な灰が一希の手の上にたまっている。
「ちょっとまっておくれよ!せっかちだね、鳥くん。」
慌てるような声の跡、灰の山がもぞもぞと動き始める。一希はこそばゆさを感じ、それに耐えながらも眺めていると、山から白い虎が飛び出した。虎は一希の足元に着地する。
「この虎こそ、龍を討つ一つのキーだ。」
虎は一希の想像より小さく、彼の膝と同じほどだった。脚に顔をこすりつけゴロゴロと喉を鳴らしている。一見すると猫にも見えるこれが、龍を倒せるのだろうか。
「それからもう一つ。古代文明の力だ。」
虎がどこからか現れた毛玉にじゃれついている。転がる毛玉を追いかけて虎はぽてぽてとした足音をたてて走る。
「この世界のどこかに遥か古からの文明を受け継いでいる場所がある。そこに敵を倒すために必要な武器が隠されたんだ。」
「場所がわからないのか、」
強い口調で尋ねる男の髪に、虎がじゃれつく。毛玉を追いかけていたら銀髪が目に入り、そちらのほうが彼の興味をひいたらしい。
「うわっ、やめろ、それは私の髪だ」
声はくすり、と笑った後、説明を始めた。
「そうなんだよ。古代の文明を作った人々は、私にそれをばれないように隠したんだ。きっと作ったことを咎められ、破壊されるのを恐れたに違いないね。」
「そんな力があるのか。」
古代の文明、この世界自体知らないことが多いのに、さらに知らない文明があるのか。面食らっている一希を余所に、男は小さな虎の爪に絡まった髪を解しながら、受け答えをしている。
「ああ、それでかつて、人間たちはこの世界のすべてを支配したくらいさ、お話が逸れたね。次の話に映ろう。君たちを次の場所へ送る話さ。」
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
今話は前後編になっており、後半は明日投稿させていただこうと考えております。




