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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
Exploratory Various Humans
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Second Expedition 2

 一希と先導する銀の髪の男は入り口からまっすぐに進み、部屋の中央にいる。左右にはそれぞれ崩れた壁と巨鳥の描かれた壁がある。一希が天井をじっと見つめるその隣にはすぐとなりには石像があった。

 自分とよく似た顔の男が天井に彫られる形で描かれているのは、ある意味で一希を不気味な気分にさせた。後世に伝えられるほどの存在が何故、今ここにいるのか、何も知らないのか。何かの秘密を隠されているような感覚だ。眩暈がしてくる。

「上をずっと向いていたからじゃないか。」

 銀の髪の低い声に、少し間をおいて一希は視線を彼に戻した。気まずい空気に、場がしばらく支配される。男はわるかったな、とつぶやいてから振りむき、話を戻した。

「かつての勇者は希望を一つにした存在....ここまでは話したな。だが、彼は敗北し、この世を去った。」

 静かな広間に一希の息を飲む音だけが響く。

「魔王の遣わせた龍に敗れたのだ。仲間は彼だけでも逃がそうとしたが、だめだった。」

 負けたのか。ならば自分はどうしてここに?ヒントを求め、ふと一希が目を落とすと、足元には虎の尻尾のような模様のついた瓦礫がある。崩れている壁には白虎が描かれていたらしい。

「私は勇者たちの後を追っていたのだ。そこで、惨敗した彼らの姿を見た。」

 男は瓦礫の山からひとかけらの石を拾い、再び一希に背を向け歩き出した。

「そこでお前が現れたのだ...私は最初何事かわからなかった...死んだはずの人間が現れたのだ。」

 そのまま奥の壁に手をかける。経年劣化なのか事実は不明だが、壁はいくつか穴があいている。そのうちの一つに石をはめた。

「だがよく見れば、お前は彼じゃない。似ているだけの存在だ...私がわかるのはここまでだ。あとは私からも彼に聞き出さなければならない。」

 カチリ、と明快な音がして石がはまる...わけではなかった。石は壁から外れて下に落ちた。

「もう治ったようが、お前の手に浮かんだヤケドの跡は、神を呼び、神託を受ける力があるものだけが得るもの。私にはないからな、お前がいないとこれ以上知ることができない。」

 銀の男は首を振った。長い髪が空に靡いてさらさらと舞う。

「さぁ、出てきてもらおうか。われらの命運をもてあそぶ神よ。」

 石が突然に光りだす。一希が瞬きを終える前に、辺りは白い光に包まれた。


 瞬きを終えた一希が目を開けると、そこはただ上も下も白い空間だった。あまりにもシンプルな世界なので、ずっと前に夢で見た世界に似ているのが一目でわかった。彼がこちらの世界に来て初めて訪れた町であるジメハテの町で見た夢...浮かんでいる感覚の落下前のような微妙な不快感までが似ていた。唯一の違いと言えば隣に人がいることだ。その人、銀の髪の男は空気椅子のような姿勢で足を組んでいる。

「…さて、どうなる?」

 男の言葉に一希はあたりを見回した。どちらもこの先のことはわからない。そもそも一希はここまでのことすらわからなかったのだから...。


「やぁ、カズ!」

 突然、中性的な声が場に響き渡った。一希はあたりを見まわした。

「ええと、それにご友人も一緒かな。」

 男は顔を上げるだけに留めた。場に響く声は調子を変えずに話し続ける。」

「よし、最低限必要な人はいるね。申し訳ないけど、相変わらず忙しいから、端的に要件だけ聞くよ。」

 銀の髪を手で触りながら男は答えた。声には若干のいら立ちが見える。

「一希をここへ連れてくれば神託を与える...そういったのは神のはずだが。」

「そうだったな、すまない。」

 中性的な声はわざとらしくゴホン、と咳払いをした。

「では、カズ、君に神託を与えよう。」

 一希は再びごくり、と息を飲んだ。

「私が君に贈った伝説の火の魔法で、勇者の跡を継いで、世界を救ってくれ!きっと相棒がついてる!」

 相棒、またその言葉だ。相棒の正体は何者なのか。尋ねようとする矢先男のため息と、それに続いて苛立った低い声が白い空間に響く。

「それだけか。」

 その声のあまりの迫力に、一希は一瞬慄いた。声の主を驚いたのか、慌てて言葉を付け足す。

「いや、そんな軽くお願いできることじゃないし、ちゃんと色々この後話す予定だから。」

「ならば良い。」

「じゃあ、まずこのシーンを見てもらっていい?」

 二人の目の前の空間に巨大な生き物が描き出される。まずは細長い輪郭を、次に靡く尾を、長い胴体を、順番はっきりとしたものになってゆく。龍だ。その裏で、どうして神に対してそんなに大きく出れるのかな、神の顔が見たいよ全く、などと声がぶつくさを言っているのが聞こえる。銀の髪の男が龍を睨むと、声は徐々に小さくなって消えた。

 線だけ龍の姿が完成すると、その上に色が塗られた。といっても、龍そのものが白黒で構成されているらしく、黒いからだに白い閃光が走ったような配色だった。完成すると、声が帰ってきた。

「これを倒すのが君たちの目的だ。」

ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。

 来週は諸事情により投稿をお休みさせて頂き、次の投稿は9月25日とさせて頂きたいと考えております。申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。

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