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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
Exploratory Various Humans
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First Expedition 6

「お前たちも体力の限界だろう。さぁ、帰るぞ。」

 銀の鳥が翼を広げると、あたりは一瞬光に包まれ、一希たちはそのまぶしさに目を閉じる。その光が消えたとき、一希たちの姿はすっかり消えていた。巨鳥は彼らが消えたのを確認すると、長く細い足を器用に器用に使い、すたすたと森の中を歩き始めた。

「さて...いつ頃顔を出したらよいものか...」

 そんなことを言いながら森の奥へ消えてゆく。森は静かだ。




 鳥も勇者も消え、コウモリの魔物すらいなくなった遺跡。勇者たちと死闘をしたこの悪魔は、敗北を喫し、地面に伏せていた。己すら自らの力が尽きたのをわかっていたはずなのに、ふと自分の体が異常なほど軽くなっているのがわかった。倒れたまま周りを見渡すと、辺りは深紅の花畑になっていた。

 どういうことだろう。彼女は真相を確かめるべく体を起こそうとするが、軽いはずなのにうまく動かない。しかも、自分の銀の前髪を誰かが撫でている。彼女はやっと視線を上げると銀の角を持つ女性が膝を自分の頭にのせていることがわかった。悪魔はすぐにそれが誰だかわかった。先に勇者と戦い、自分より先に消えてしまったと思っていた自分の妹。角が無かったが、それで見間違えることはない。

 その女性は彼女の髪を優しく撫で、微笑みかけた。

―姉さん、待ってたのよ。

 待っててくれたのね。ありがとう...愛する妹の頬に手を伸ばし、彼女はそう答えたかった。だが言葉が出るその前に彼女の意識は遠のく。とうとう崩れた遺跡の中は金色の角が残るだけになった。



 一希が目を開くと、学園の門の前に立っていた。安堵と共に疲労が襲い掛かる。崩れ落ちそうになる一希をマーとシンの二人が支え、門を押し開ける。支えるといっても二人の体力もかなり削られていた。その様子を見て、近くにいた中学生ほどの少年が駆け寄ってくる。

「ダイジョブすか...ってどうみても大丈夫じゃないっスね。今人を呼んできます。」

 少年は空飛ぶ箒に乗って、ふわりと上昇する。ある高さで止まると、一つの部屋の窓をゴンゴン乱暴に叩く。そして、少しだけ窓から距離を置いた。次の瞬間窓が勢いよく開き、若い男性と思われる怒鳴り声が飛んでくる。少年が窓から距離を置いてなければ、外開きの窓にぶつかっていたかもしれない。

「お前は!なんかい!遅刻したら!気が済むんだ!」

 少年は両耳を塞いで言葉をやり過ごし、今度はこっちの番と言わんばかりにまくしたてた。

「センセ!それどころじゃねぇっスよ。けが人です!」

 声の主である教員は一瞬訝し気に首を傾げるも、少年の指さした場所を窓から身を乗り出して見ると、すぐに頷いた。

「わかった。お前はすぐに救護室に行って準備してもらえ。」

「了解っス!!」


 箒に乗った少年が飛び去るのを見ると、教員は手に箒を持って窓からひらりと飛び降りた。落下途中でそれに乗り、一希たちの前に降りた。

「今救護室の準備をしてもらっている。私では簡易的な治療しかできないから、そちらに向かおう。」

 教員はそれぞれの傷口に手をかざす。すると傷が少し薄くなった。一希も体力を回復したらしく、なんとか自力で立てるようになった。そこへジャコンとタイリアが走ってくる。彼らに支えられながら、彼らは歩きだした。一希は自分を支えるジャコンに礼を言った。

「ありがとうございます。」

「礼を言うのは私のほうだ。さぁ、行こう。」

 

 彼らはそのまま救護室で治療を受け、その後個室を借り一晩の休息を得た。夜、ふと目を覚ました一希は窓の外に何らかの影が通ったのをが見えた。部屋の窓に駆け寄ると、影は鳥の翼だったことがわかった。窓を開けると、銀の巨鳥が彼の部屋に滑り込んできた。窮屈げに羽を閉じると、呆然と鳥を見ている彼をおいて話を始める。

「勇者よ。調子はどうだ...良くなったようで何よりだな。急に送り返してすまないね。いろいろあって、この国の人の前にはあまり出たくないんだ。特に王家に関るものにはね...おっと、話がそれたな...君に勇者の伝説やそれにまつわる幾つかの事実を教えたい...今日戦ったあの遺跡に来てくれないか。今は魔物はいない。明日には伝えたいのだが...体調的にはもう少し間をおいたほうがいいか?」

 ついに事実が、巨鳥の言葉に彼は息を飲んだ。

「俺は明日でもいい。マーとシンの...あの一緒に戦った二人の仲間の体調が良ければ向かいたい。」

「まぁ、お前だけも良い。太陽が真上に上がって、沈むまでは遺跡にいるから、体調が厳しめなら来なくても良い。沈むまでに来なかったら、私は明日の晩再びお前に会いに来るよ。」

「ありがとう。たぶん、俺だけでも行くよ。」

 その言葉に頷いて鳥は再び窓から飛び出した。

「マーとシン...知っているさ、お前と一緒に旅してたんだからな。」 

 長く尾を月の光で輝かせ、それは夜闇に消えていった。

ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。

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