Hidden Castle
シンが気分転換になるだろうとチコに勧められ、図書館内を別の資料を探して歩いていた時、彼の頭には資料探しの時に見た大きな地図があった。その地図にはまだ詳しく書かれていない海域があった。荒波激しいこの海域は調査が進んでおらず、そこは何もかもが未知だ。そこにはどんなものがあるのだろう。彼は立ち止まって頭を巡らせた。
―その島には魔物が住まい、その城には魔物を統一する王のような存在が住まうのだ
そんな噂があることを思い出し、彼は思わず関連資料を探して足を魔物関係の場所へと進める。実際のところ、時折噂は立つものの、調査ができていないため人々の中ではあくまで噂の一つに過ぎなかった。そこに有る島も城も実在すら、まだ人間には未知のものでる。
人間たちは知る由もなかったが、その城では現在食事の真っ只中だった。長方形の長い食卓の上には食事が揃っている。ステーキとスープ、それにパン。フルーやサラダなど。それぞれの皿はは豪華な盛り付けがされている。しかし、そのメニューは二人分であった。短辺には少女が足を組んで座り、もう一方の短辺には女性が足をそろえて座っている。少女はゴシックロリィタ調の服を、女性は上品な刺繍が施されたワンピースを着ている。他に人は一人もいない。グラスに口をつけ、少女は口を開いた。
「...して、かの龍は見つかったのか。」
その言葉に女性はステーキを切っていた一度手を止める。ナイフとフォークを置き、答える。
「見つかりました。しかし...」
「それはよくやった。」
少女は満足げに頷き、グラスの水を飲み干した後、女性の語尾の違和感に気づき、身を乗り出した。勢い良く乗り出したため、黒いツインテールが大きく揺れた。
「しかし...?しかしどうしたというのだ。」
「龍は厳重に封じられ、どうすれば蘇るのかは現在調査中です。」
「そうか。調査はどれほど進んでいるんだ?」
「実を言うと...ほとんど進んでおりません。」
少女はため息をついて、髪先を指で弄んだ。
「全く、使えんなぁ...にして、どうだ聖獣のほうは。」
「そちらも...街中の調査もしてますが、これが難航しており...」
少女は勢いよくグラスをテーブルに置いた。静かな部屋に音が響き、女性は思わずびくりと肩をあげた。
「驚かせてすまないな。しかし、せっかく魔王たる私が、新しい力を与えてやっても、全く活用できてないじゃないか。」
「申し訳ございません。花の魔物軍を率いて、街に入り込んだのですが、新たな勇者に倒されたということです。」
「新たな勇者...あいつか」
少女もフォークを置いて考え始める。ウランクから話は聞いている。かの勇者によく似た男がいる。彼は勇者が転生してきた姿ではないかと専らの噂だ。大トカゲも倒してしまうほどらしいではないか。
女性は少し水を飲んでいった。
「ウランクが接触したらしいのですが、これが中々曲者だそうで。」
「あいつ以上の曲者っているのか?」
少女はあきれ顔で言った。女性も呆れてため息をついてから答える。
「さぁ...性格の問題で曲者と言っているワケではないのでしょう。」
「そうでないと困るぞ。それで前ウランクが来たのか。神殿にクアマコを置かせてほしいと。」
「ええ。彼女自身で勇者を討ちたいと。妹の敵討ちだそうです。」
「そうか、なら良い。あとは聖獣を確保し、龍を蘇らせば、準備万端だな。」
「一刻も早く目途を立たせます。」
「頼むぞ。」
女性が頷くのを見て、少女は満足げに頷く。
「再び我々は人間どもに宣戦布告をするのだ。」
「そう、この世界を我ら魔物のためのものにするのは、我が親、そして神々の悲願なのだ!」
少女は大声で笑うと、左手の近くにあったグラスを持ち上げ、中身を一気に飲み干した。そして、勢いよく咳き込んだ。女性が立ち上がり、少女の背中をさすりながら言う。
「そちらは少し苦めな野菜ジュースですが...」
「早く言ってくれ!」
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