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森の遺跡の前に金のツノを持つ女性が立っていた。遺跡の半ば壊れた扉を開けて出てきたピエロを見るなり、彼女は口早に言葉を投げかけた。
「ねぇ、聞いてよ!」
「なんデしょうか。」
「この前来た連中、勇者一行じゃなかったのよ!」
「そりゃあ、災難でしたねェ。」
「腹立ったからぶっ飛ばしてやったけど...いつ来るのかしら。私を避けてるとしか思えない!!」
女性は目の前を睨みつけながら、地面を蹴り飛ばした。森の土がえぐれて遺跡にかかる。こんな気性の荒い魔物とは出来たら戦いたくないだろう。特にあの、争いを好まなそうな勇者なら...ピエロはそう考えながら怒る彼女を眺めていた。
「ねぇ、こうなったら私のほうから攻めてやろうかしら!」
「やめてくださいよ。ここデモ手一杯なのに街中に攻メ入るのは難しすぎますよ。」
「あの子はできたわ!」
「そうですね。デスガ、あれはあの騎士の協力あってのモノですから。」
彼女は軽く地面を踏みならし、ピエロを指さして怒鳴った。
「じゃあ、あの騎士野郎をもう一度呼びましょう。だいたいあれが最後まで見てくれていたら、こんなことにはならなかったのよ!」
「彼は現在王より言われて別の仕事に従事してオリマス。」
ピエロはきっぱりとした口調で言った。その言葉に女性は後が続かなくなったようで、口を結ぶ。そんな彼女を見て、やっと彼は受け身でなく自発的に声を出した。
「デスガ...自分が協力して差し上げましょう。勇者が自発的に来ないなら、呼べばいいのです。」
その言葉が終わると同時にピエロの姿がまた一瞬にして溶け、虚空に消えていた。
図書館にはいるたびに一希たちの鼻を擽るその匂いに彼はなかなか慣れなかった。マーやチコもあまりこれを好んでいないらしく、特にチコは一瞬顔をしかめたのが見えた。他に人は来ていないようだった。マーは本の配置表を見てため息をつく。
「どうにかしてここから資料を探すのよね...」
「まぁ、それだけ沢山の資料が集まっている証拠でもありますからね...」
シンは彼らと比べて慣れたのか、苦笑いをしながらも彼らよりよく動いた。一希も自分のことだから、負けてられないと奮起して本棚に向かうものの、中には古すぎて現在の知識では読めない背表紙までが彼の目に飛び込んできた。
先程教員ジャコンと話したときに見えた本はいくつか集めたが、どれもこれも曖昧な情報ばかりである。マーは再び大きくため息をついた。隣に座って本の中身を神話といわれるほどに古い話だし、仕方がないと思いつつ、一希からも自然とため息が出た。
「つきあわせちゃってごめんね...やっぱり無理なのかしら。」
「大丈夫だよ。こういうのって調べてみないとわからないからね。」
答えながら本を開くと、先ほどの授業で出てきた「魔物を寄せ付けない力」に関する記述を見つけた。マーに確認を取ろうして振り返る。
「あのさ、一希くん。」
声を掛けようとした矢先、突然彼女の方から呼び止められ、彼は本を開いたまま止まった。
「正直なところ聞いていい?」
「もちろん。なんだい?」
「実際のとこ、自分はどう思っているわけなの。まだ勇者じゃない可能性を心配しているの。」
彼は一度本を閉じた。彼女に向き合うように座ると、彼女は話出した。
「だってこんな偶然あり得ないわ。ただ元々いた勇者にそっくりで、戦闘も始めたばかりなのに魔物退治できるほどのセンスがある。そして何より、不思議な魔法よ。」
「魔物退治は一緒に戦ってくれた人のおかけだよ。」
謙遜ではなく、彼はそう思っていた。実際のところ、本当に魔物と戦うなら防戦中心になるのは対処べき課題だ。
「そうかもしれないわね...でも、足手纏いにならず、立派な戦力だったじゃない。私が戦いを学び始めた時は、殆ど足手纏いだったわ。そして、今日授業でも言ってたけど...この世界の魔法わね、天性の影響が大きいの。何もかもうまく重なりすぎているわ。」
彼は何も言わなかった。意識していないうちに確信するのを避けてきたが、限界が来たのだということを実感していた。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。




