School Life 8 後
その会話のすぐ後に終礼は行われた。皆が校長先生の長い話によって引き起こされた睡魔との戦いに全力を投じている間も一希の脳内には先ほどの言葉が反復していた。「狙われる」という言葉と、その可能性についてがよぎっては消える。
自分が狙われているかもしれない。確かに何度か魔物と戦い、敵を退けてきた。しかし、それは皆の力をもってのことである。一方で、自分が勇者じゃない可能性もある。神様がウッカリ手違いが俺を轢いて...なんということも考えられる。神ともあろうものが、ミスをするのだろうか。お話の世界だ、なくはない。
「それではみなさんも、今後とも勉学に励んでくださいね。」
その言葉とともに校長先生のお話は終了し、何人かの生徒が現実へ帰還した。彼はそういったことをずっと考えていたので、むしろ早く感じていたぐらいであった。
「全く、どの校長先生もそうなのかしらね?」
今日のうちはまだ施設が利用できるという話であったため、終礼後のラウンジで一同は休憩を取っていた。椅子に座ったマーは口を押えて大きく欠伸していた。
「そうですねぇ。」
シンは施設案内のペーパーを見ながら頷いた。そして、押し黙っている一希に声をかけた。
「そういえば、一希さん先ほどから何か考えられているようですが...」
「あ、ああ...実はな。」
一希は先ほど調査隊の女性から聞いた話を説明した。
「それは悩みますね。」
チコは顎に手を当てて、考える仕草をする。三人も悩みだしてしまったようだ。最初に口を開いたのはマーだった。
「いっそ、行ってみたら?」
彼らは驚きの表情を見せる。マーはゆっくりと話を始めた。
「もちろん、対策を打ってからよ。相手がどれくらい強いかわからないもの...ここでも優秀な人がやられるだけなんだからタダ行ってもやられるだけ。それに...」
彼女は一瞬言葉を止め、声を低くした。
「もし本当に一希くんが勇者だとしたら、どこにいてもそのうち狙われるでしょう。不意を付かれるより、その気があるうちに倒すのが一番だわ。」
魔物が街へ乱入してくることもある敵であることは一希たち皆が知っていることだった。一理ある、と思いつつも浮かんだ疑問をチコがぶつけた。
「ではもし勇者ではなければ...?それから、もし戦うことになったときの対策はなにかあるんでしょうか。」
「そこが問題なのよねぇ...無い事はないのだけど、確証がないのよ。」
マーはため息をついた。一希はノートを開きながら声をかける。そこに記されていたのは神話の授業の中で紹介された魔法の一つだった。勇者が使える魔法。
「無いことは無いって、この魔法のこと?」
神殿や遺跡にいるときに使える魔法で、封印を解いて魔物を寄せ付けない強い力を呼びよせる。
「そうなのよ。曖昧すぎるとは思うんだけ。どあとで図書館で調べたい思ってて...上手く突き詰めれば、なんとかなるかもって。」
確かに勇者なら、それは一つの手段だった。一希はノートに乱雑に並べられた文字を投げめる。我ながらなんとなく恥ずかしくなってくる。
「もし勇者じゃなかったらなんけどね...たしかさっき図書館で、神殿から神殿へ移る魔法についての本があったの。それで逃げればいいかなって...」
少しの沈黙から、マーは後頭部を照れ隠しに触りながら言った。
「なんて、現実的じゃないわよね。ごめん。」
「大丈夫。」
一希はきっぱりと言った。現実的ではないのは、この世界に来てからずっとだ。少なくとも街に被害を出すことは防ぎたい。そのためにも、実際にどうするかはともかく、ただ待っているだけではいけないと彼は考えた。
「まずは図書館に行ってみよう。」
前話のタイトルに前編であった旨を記載しそこねていたので、訂正させて頂きました。申し訳ございません。
次話については次の金曜日の同時刻に投稿させて頂こうと考えております。
よろしくお願い申し上げます。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。




