School Life5
一希は投球場所を示すマークの上に立った。今までは剣の練習を主流にしていたので、魔法の撃ち方をよく学んでいなかったのが悔やまれる。自分に注がれる周囲の目がとても気になった。
まぁ、今になって悔やんでも仕方ない。あの大舞台を経験したあとなのだから、大丈夫だろう、なんだったら普通に投げれば良いんだ、競技として大切なのは投げ先とフォームの正確性なのだ、と自分に言い聞かせる。
振りかぶってボールを投げる。的の比較的中心近くにあたってぽとりと落ちる。普通だ。残りも同じように投げてゆく。次が最後の球だ。投げたあとの手にちらりと視線をやる。緊張したり、力んだりしたせいだろうか、少し痺れてピリピリしている。
よし、いくぞ!
心の中で小さく叫び、軽く気合を入れて投げた瞬間、ボールが一瞬にして燃えがった。そのまま炭となったボールがぱらぱらと崩れ、風に乗って去っていった。風は演劇の街のある大陸から来ていて、森と遺跡へ吹き抜けてゆく。
「えっ」
一同も、彼自身も驚きの声を上げる。彼はゆっくりと手を開くと、掌にも奇妙なヤケドの跡が残っているのが見えた。熱さや痛みは全くない。どよめく会場に、教員が言葉を投げかける。
「失敗はよくあることです。気にしない、気にしない。」
参加生徒はほぼ大人であったためすぐに場は落ち着きを取り戻した。それでも、一瞬ざわめいていた、その中でじっとチコは一希を見ていて、彼が戻ってくるのを見て、ゆっくりと手を上げた。
「次、私にも挑戦させてください!」
チコが軽い動作でボールを投げた。その時、一瞬その球が紫に輝いたように一希の目には見えたが、その後は的に当たることもなく、ぽとりと寂しい音をたて、落ちいていった。他のボールも同じく寂しく落ちていくだけだった。
他の人々の魔法も個性的だった。自分を浮かせて、高い位置から球を投げようとした妙齢の男性、魔法を制御しそこねたのか一希と同じように球を丸焦げにした若い女性など。トリはボールを投げる際に何故か花びらが舞う貴婦人だった。見るも優雅なたち振る舞いに思わず拍手が湧き上がる。花びらも魔法でできているらしく、落ちる花びらを受け止めたシンの掌の上で、一瞬にして美しい花になった。
全員が終わった後、結果発表までの間が休み時間となった。ペットの蝸牛にエサを食べさせていたマーと一希が雑談をしていた。この競技はマーの故郷でも伝統的なもので、子供のころから時々やっていた、という話であった。そこへ教員がやってくる。
「二人ともお疲れ様!」
「あ、ジャコン先生。変なボール投げちゃってごめんなさい、一度この投球法試してみたかったの!次は満点目指すわ。」
「大丈夫。学校は失敗して学ぶことのできるところだと思っているし...今度学外の人も参加できる大会をやる予定だから...その時は優勝候補になってくださいよ!」
「もちろん!」
一希は仲良さげな二人の会話を聞いて、嘗ての学校生活を思い出して懐かしんでいたが、先程の燃え尽きたボールのことを思い出し、手を握ったリ閉じたりしていた。それを見た教員がすこし声を潜めて彼に話しかける。
「さっきの君の魔法についてなんだけど...少し話があるんだ。休憩時間が終わったら行う結果発表のあと、図書館に来てくれないかな。」
彼は小さく頷いた。教員から魔法について教えてもらえる機会を得れるのは願ってもないことだ。チコの現象についても魔法に関係しているのかもしれない、その点についても彼は聞きたかった。
優勝はトリを努めた彼女だった。景品は豪華な本物の花束で、花の魔法を使う貴婦人には大変良く似合っていた。再び拍手するときにふと掌を見ると、奇妙なヤケドの跡は消えていた。彼女はお礼に、といいながら魔法でグラウンド一面に花を咲かた。魔法の持続性は強く、まるで花畑のようになったグラウンドで、彼らはイベント後の会話を楽しんでいた。
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