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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
Exploratory Various Humans
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Taking Lunch

 海暁から手渡された地図をもとに、一希とチコ、シンの3人は学内の見学をしていた。他にも見学者が来ていた公開授業や、明日の集合場所となっている講堂などを見回っていた。

 一方でマーのほうは問屋である海暁に新たな商談を持ち込んだようで、彼女とかなり込み入りながらも盛り上がった話をしていた。しばらく話し終わるのを彼らは待っていたが、話が長くなりそうなので、先に見まわっていて、とマーに言われたのだった。彼女は本日借りる学生寮で3人と合流する約束をした。


 彼らは今、食堂も兼ねたカフェテリアに入っていた。このカフェは一面が薬草などを育てる庭に面しており、彼らはちょうど庭が見える席に座り、多種多様な草花を眺めながら昼食をとっていた。静かな間に、どこからかクラシックに似た音楽が流れてきており、一希は穏やかな気持ちでパンケーキを切っていた。店長の話によると、昼休みはいつも学生たちが押し寄せ、ずいぶんと賑わっているらしい。昼のラッシュが終わった現在は店員も客もゆっくりと過ごしている。室内では学生とみられる若い青年が本を読みながらコーヒーを飲んでいた。

「次はどこに行きますか?」

 シンは地図を開き、テーブルの上に置いた。2人も地図を眺める。

「一番近いのはこの庭を抜けた先にある教会ですね。ちょっと歩くと図書館、近くでは骨董品の公開もしています。それに運動場...」

 彼は紅茶を少し飲み、カップを置いてから地図の上に指を滑らせながら話した。

「そうそう、ここの教会のステンドグラスは魔物を除く聖なる力があるという噂なんですよ。この国に立ち寄った旅人は魔物除けに巡礼することも多いのです。」

 一希とチコは頷きながら彼の話を聞く。チコはうーん、と悩むような声を出してから遠慮がちに言った。

「それもとっても気になりますけど...私は骨董品を見てみたいですね。」

 彼女から見える室内にかけられた丸時計をちらりと見た。学生の授業が終わる頃には半ば観光客のような自分たちは少なくとも一度引くべきだろう。何か所も見学出来る時間はなかった。彼女はそう考えながら、パンケーキをうまく切れず悪戦苦闘する一希に声をかけた。

「一希さんは何か希望ありますか?」

「あ、ごめん。全部気になるからなァ、どこでも大丈夫だよ」

「...じゃあ、せっかくですし、骨董品見に行きましょうか。」

「ありがとうございます!」

 シンの提案にチコは喜びの表情を見せた。彼もにこり、と笑い返す。二人が早速仲良くなったように見え、一希も嬉しそうに頷いて口にやっと切れたパンケーキを押し込んだ。


 一方で事務局ではマーと海暁が海図を眺めていた。海図には調査団が様々な海域を調査してきた記録が残っている。だが、地図の左上、北東部には大きな空白が残っている。マーからの商談は無事終わり、海暁からの調査団がこの海域を調査するので、物資の調達をしたいという話を受けていたのだった。

「いくつか役に立つ道具はリヤカーにあるだろうし、食料提供の仲介なら全然してあげられるけど...あの海域はさすがに厳しいじゃないかしら。あそこにはヤバイ噂しかないわよ。特に魔物関係のね。」

 橙色の表紙のノートを鞄から出し、ページを捲りながらマーは不満を述べる。テーブルの上には間食の一口大に切られたサンドイッチが置いてあり、彼女は乱暴に一つを口に放りこんだ。一方の海暁

は深い心配をしていないように見えた。帳簿を出し、交渉を進める準備をしている。

「王は大丈夫だとおっしゃっております。我々には神の加護がありますし。きっと成功しますよ。」

 少し他人行儀に見える彼女の言葉にマーは声を荒げ、立ち上がる。

「そんなの無謀よ!」

 すぐに口に手を当て、申し訳なさげに座りなおしたマー。隣の椅子には蝸牛が入った籠が置いてある。

「ご、ごめんなさい...犠牲は調査員に出るのだから、心配しちゃって...」

「気になさらないで。私も実はとても心配なので、お気持ちはとてもよくわかります。しかし、王もちゃんと考えているはずです。これ以上被害を出すわけにはいかないはずですし。」

「これ以上...」

「だからきちんと準備したいのです。」

 真剣な目で見つめる海暁にマーは小さく頷いた。


「よし、じゃあ行くか」

 皆の食事が終わって立ち上がる一希。そんな彼を2人の仲間が不自然な笑顔で見つめていた。

「なんか俺の顔についてる?」

 チコは自分の唇をトントン、と軽く叩いた。一希も自分の唇に触れると、パンケーキの欠片がハチミツを接着剤に指に付着した。

「あ...」

 顔を赤くして急いで口をふき取る(勇者)一希。彼はこの人生での使命まだを知らなかった。

ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。

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