Magic Library
図書館へ到着した一希たち一行はその外観を眺める。眺めるために上げた首がすぐに疲れてしまうような、大きな棟だった。この学園は外観から見ると一つの大きな建物だったが、実際のところはいくつかの棟に分かれていた。それが屋内外の廊下でつながっているので、大きな一つの建物に見えたのだ。
「さ、こちらです。」
海暁が木造の大きな扉を軽く押すと、大きく重い音がして扉がひとりでに開いてゆく。扉が開き切ると、本の匂いが彼らの鼻をくすぐった。マーは入り口にリヤカーを止め、魔法で大きな本棚を浮かせる。館の中へ進んでいく彼らの後ろを巨大な本棚が浮いてついてくる。
「こちらの列です。通路は広いのであまり心配しなくて大丈夫ですよ。」
図書館の中はその外見に見劣りしないほど高い本棚が沢山並んでいた。海暁の案内についてゆき、少し奥へ進むと、本棚がちょうど一つ分空いていた。
「ここね!!」
問屋の頷きを確認して、マーはその空間を指さした。すると、本棚がするりとそこへ収まる。巨大な荷物の移動に関わらず激しい物音やほこりを立てずに、それを終わらせた彼女に三人は感嘆の声を漏らす。最後に彼女はその本棚へ近づき、目視で他の本棚の位置と比べてズレていないかを確認する。そして軽く手を挙げて問屋を呼んだ。
「オッケーよ。確認して頂戴。」
「承知しました。」
海暁が帳簿に記録をつけている間、一希は自分の近くの本棚に目線をやった。自らの目線の高さと同じ位置にある本をざっと眺める。魔法についての教本らしく、並ぶ本の背表紙にはどれも「魔法学」というワードが入っていた。『魔法学理論』『近代魔法学』『魔法学の歴史』というあくまで固い勉強を思わせるタイトルが並ぶ中に『温泉旅行で学ぶ魔法学』といったユニークなタイトルも並んでいた。
「理論、か...」
この世界はファンタジー小説のような世界なので、と解釈し自分の中で勝手に考えないようにしていたワードを見つけ、彼は小さいながら思わずそれをつぶやいた。物を浮かせる、火を放つ、傷を癒す、さらには特殊な性質の弾を発生させる...そんな不思議な「魔法」にどのような理論が与えられているのだろうか。彼が好奇心のままにじっとその背表紙を眺めていると、帳簿から目を上げた海暁に声を掛けれらた。
「魔法学に興味がおありですか?」
「ああ、まぁ」
彼があいまいに返す隣ではシンとチコも同じように本を眺めている。マーはちょうど自身の帳簿をつけ終えたところであった。海暁は手を軽く叩くようにして合わせると4人に向かって言った。
「では、体験入学されていきませんか?魔法学の基礎理論の講義をやるんですよ。様々な方から授業の感想を集めたい、ということで今、無料でやってるんですよ。一日ではあるんですけどね、学生寮にも泊まれますよ!」
「え、俺たちでいいのですか?」
「もちろんです!あ、私問屋ではあるんですけど、王国直属なので、国立のこの学校のお手伝いも頼まれることがあるのですよ。皆さんがいらして下さるだけでお手伝いになりますので是非!」
突然の誘いに一行は一瞬驚いたが、彼らはこのチャンスに少なからず乗ってみたいと思っているようであった。マーが帳簿を小さな鞄にしまって言う。
「私は参加してみたいわ。寮にも行ってみたいし!」
「私もです。基礎を学ぶのは役に立つと思います。」
シンも彼女に続き、チコも小さく頷いた。一希はそれを確認すると、海暁に返答した。
「では、よろしくお願いします。」
「決定ですね。さっそく手続しましょ!最初に寄った事務所です。」
彼らは図書館を後にした。事務所へ戻り手続を済ませると、臨時学生証を彼らに手渡した。学生という身分に懐かしさを感じながら、それを眺めている一希。海暁はルームキーや学内の地図を準備すると、にこりと笑って言った。オレンジ色のカールした髪が小さく揺れる。
「では、明日午前8時に第2講堂へいらしてくださいね。」
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。




