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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
His Setting Off
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Training 3

「なるほど、難しい問題だよな...」

 一希はシンとレオ市長から練習が上手くいかない悩みを打ち明けられ、苦し紛れに答えた。なにか力になりたいが、自分の指導経験といえば少し後輩に物事を教えた程度である。その上ここで問題となっている分野、つまり舞台や演劇については先ほどまで自分は教えて受けていた立場である。しかし、彼は直感していた。今ここで口を止めてしまえば、二人の間の深まるばかりの沈黙の底でこの気まずさを一緒に味わなければならないということを。彼はちらりと壁に掛けられた丸時計を見て言った。

「ちょっと気分転換に、出かけませんか?今日は祭の折り返しだし、すごく賑わっていると思います。」


 市は、もはや見慣れた光景が浮かんでいた。祭で盛り上がる群衆である。広場の中央の踊り場では二人組ダンサーたちが美しくも激しいダンスを踊り、通路ではマジシャンが鳩を飛ばしている。客人たちはどのパフォーマンスにも惜しげない喝采を送っていた。この世界でも人間は昼行性だが、太陽と人の動きは決して一致するわけではない。これからあの恒星は頂点を超えて沈むが、人々はまだ休むことを知るつもりがないらしい。

「今日は...あんまり俺たちゃにはカンケーないな。その上、毎日毎日盛り上がって、この人たちの体力はどっからくるんだろうな。」

 一希の外に出るという提案は無事承諾され、二人は祭を見に来た。市長は劇の全体の流れを確認するといって劇場に残った。これで気分転換になるといっていたのを聞いて一希は彼のプロ根性に感心するとともに代表者としての責務の重さに同情していた。

 彼はパンフレットから苦笑いしながら顔を上げ、パンフレットに視線を戻して文章をシンに見せつつ小声で読み上げた。

『この市に訪問した者、住むもの、開催時にここにいる人たちすべてから最高の美男を決定する』

 昨日は美人コンテストの女子の部だったなら今日は男子の部でも何もおかしいことはない。一希は肩をすくめた。

「まぁ、しゃーなしだな」

「昨日かなり盛り上がってたと思いますけど?」

 シンは一希を優しく肘でつつきつつ、いたずらっぽく微笑んで言う。彼は肘を押しのけ、にやけてシンに言い放った。

「お前のほうが盛り上がってたろ。特に、チコが出てきたときとか。」

 彼は顔がとたんに赤くなった。俯いて自分の持っているガイドのページの隅をいじり始めた。

「...だってあの方凄い美人でしたし。ああ、もう一度お会いしたいな」

 ページの隅がすっかりクシャクシャになっているのを見て一希は前に一緒に魔物退治に向かったルートのことを思い出した。彼の恋心を指摘したときの反応に似ている。わかりやすいものである。この世界はわりと恋愛にウブな人が多いのだろうか。それとも自分もそうで、人を赤くする力が恋にあるだけなのか。一方で、チコは分かりにくい。彼女はああいうのに出るタイプだったのか。考えを巡らせつつ、ふとシンの手元を見る。ページの隅が薄くなってきている。

「そろそろページ切れるぞ。」

「えっ!あ、ほんとだ。」

 彼は驚いて手を本から離した。ガイドが一瞬宙に浮き、一希は本をキャッチし口角を上げて言った。

「...彼女にカッコいいとこ見せられるように頑張ろうぜ。俺も頑張るからさ。」




「卸売りのお店、遅れてるんですか?」

「ええ、特に連絡もないからただの遅刻だと思うんだけど。」

 すっかり商品を裁き、さらに成果を上げてやろうと商品を受け取りに戻ったマーとサラは店長の言葉に首を傾げた。

「もしかしたら、魔物のせいですかね。ウチもそれで仕入れのタイミング逃しちゃって...」

 サラは卸売商が来る予定ルートの地図を眺める店長に言った。マーも思い出したように続ける。

「そういえば店に寄ってた旅人さんが言ってました。あまり見かけない魔物が出てきてるって。」

「じゃあ、きっとそいつらですよ...せっかくの時期に邪魔するなんてなんてヤツらでしょう!」

 憤りるサラに応えるようにマーはリヤカーに向かい、立てかけてある木槌を持ち上げた。扉を開くと冷たい風が吹き込んでいく。

「私、ちょっと様子を見てきます。卸売商さんはこの人ですよね?彼らと合流して一緒に戻ってきます。もしある程度行っていなかったら戻ってきます。」

 マーは地図の下にある似顔絵と描かれた人が所属しているであろうグループのマークを指さした。店長は驚いて彼女を見る。

「あってるけど...危ないわよ。」

「大丈夫です、身の程を超えた戦いに挑むつもりはないです。」

 吹き込む風とは対照的にマーは武器とともに店を飛び出す。サラは彼女と同じようにあっけにとられる店長と彼女が抜けていった扉を交互に見る。

「ウチも行って大丈夫でしょうか?」

ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。

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