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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
His Setting Off
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Reunite

「大丈夫ですか?」

 聞きなれない声で男は目を覚ました。小柄の女が男の顔を覗きこんでいた。男の記憶にない知らない女性だった。彼は急いで起き上がりあたりを見回した。勢いがよく起きたので頭が酷くくらくらした。おまけに体のあちこちが酷く痛かった。

 森の中。女は肩につく程度の長さのクリーム色のふんわりとした髪を持ち、毛先はカールしていた。目はぱっちりとして青い。起き上がってみると女の服は旅人らしい動きやすい布の服を着ている。落ち着いた深い緑の上着にブラウンのズボン。よく見ても知らない人だった。

 少し離れたところには焚き火と荷物の山が座している。また勢いよく立ち上がったので再び目眩に襲われた。なんとか近くの池に駆け寄り水面に映る己を見ると、ラフな服装になっているが、確かに自分であった。


 知らない人、見たことのない土地。不安げな男に見かねた女が声をかける。

 「そう不安がらないでください。私ですよ。あの時貴方に助けてもらった人ですよ。」

 助けた覚えなんてない。そんな力を自分は持っていない。男はそういうことを伝えようとしたが、彼女は彼より先に話し始めてしまった。

 「まさか貴方が倒れてるなんて想いもしませんでした。凄い怪我だったので驚きました。強力な魔法に守られたみたいなのに...あ、腕のところほどけそうですね。今包帯を巻き直します。」

 女は鞄を漁る。鞄の中身同士が擦れてがちゃがちゃ言う音が不規則に続く。見つからないようだ。

 男は困惑した。魔法、だって?彼女はいったい何を言っているのだろうか。しかし助けてもらったならまず礼をしなくてはいけない。答えが見つからず、彼は無難な返しをするにとどまった。

「あ、ありがとうございます」

「お気になさらず~。困ったときはお互い様ですよ」

 彼女は答えると荷物の山に目を向けた。一番上には小型のボストンバッグのような鞄がある。下の荷物は量も種類も豊富で、小柄な女性一人では運搬に苦労するであろうものだった。彼女は一体どのようにこれを運んでいるのだろうか。男は疑問を浮かべた。

「あそこにしまっちゃったみたい」

 彼女が呟くと鞄がぼんやりとした光に包まれる。彼女の青い目も僅かに光を増していた。次の瞬間、鞄がふわりと浮かび上がり、彼女のもとへ飛んだ。

 男は驚いて口を魚のようにぱくぱくさせた。液晶を通してでしかマジックを見たことのない彼にとって些かこれは刺激が強すぎたようだ。

「あったあった」

 彼女は包帯を取り出し、腕の包帯を丁寧に巻き終えると笑顔で言った。

「はい、これで大丈夫です。冷えちゃってますよね。お茶いれますね」

「ありがとうございます。ええっと、今、鞄がふわっとしたのって、もしかして、」

彼女は同じように魔法でお茶の入ったボトルを呼び寄せる。

「忘れちゃったんですか?私の魔法ですよ。魔力を持たない物体を浮遊させる魔法ですよ」

「えっ」

 先程のワードは聞き間違えでなかったことを男は確認させられた。魔法という疑問の答えは男を混乱させた。

「お久しぶりでしたものね~。あの時貴方がご友人と一緒に私の弟を魔物の手から助けてくださったの。今考えるとかなり前に感じます」

「魔物」

「おかげで今は弟もかなり元気になってきました。今は魔力を使いこなす練習しているみたいです」

「魔力」

「弟の唯一の特技みたいなものですからね。ほんとに助かりました」

 男は改めてて後に続ける言葉を失った。男の困惑に気付かず彼女は笑顔でお茶をさしだした。受け取るとお茶は適度に温かかったので、彼が頭を冷やすには少しも役立たなかった。男は礼を言って受け取る。彼女は改めて笑顔で答えた。

「困っていたらいつでもお助けしますよ。勇者様。」


 困惑する男。普通のサラリーマンだったこの男。名前は笹村一希。交通事故で死んだはずの彼は魔法のあるファンタジーの世界で勇者になってしまったことを知った。

ご読了ありがとうございました。

いよいよ男の異世界での冒険が始まります。

ゆっくりとしたペースで進む予定ですが、今後もよろしくお願いいたします。

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