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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
His Setting Off
25/184

Festival

 魔物が近寄らないという不思議な力を持つ街道の力を借りて、二人は順調に目的地に近づいていたった。一希とマーの目からも市は近づくにつれて見る間に大きくなり、自分等がいた町よりそれが大きいのは一目でわかった。彼はその人口的で人為的な市町村のシステムが彼の故郷に多少の疑問を持ちながらもその大きさに感嘆の声を漏らした。

 また、市が近づいたこともあってか明らかに街道には交通量が増えてきた。すれ違うその多くは馬車であったが、水牛車やラクダもあり、彼ら商人たちがどこから来たかを想像をかき立たせた。しかしながら、獣が引く車よりも一層一希の目を引いたのは旅する人間達の姿であった。近代的な拳銃こそ持たないが西部劇の主人公ような姿をした者に、鎧を纏った騎士など多種多様な人々に、ここは中世ファンタジーの世界だと自分を落ち着けていた一希は一人苦しんだ。特に高位そうな白いローブをまとった老女が護衛をつけずに一人で歩く姿に驚いた。この時代の階級システムを理解しなおす必要があると考えた。それに、泥の汚れが目立つであろう。そのシステムの有無はともかく、オプション込みのクリーニング代が思わず一希の脳内を過った。

 一方でマーは目を輝かせていた。彼女は先に此処を訪れていたが、その賑わいは以前以上のものであったからだ。これには一つの理由があった。この市ではちょうど祭が開催されようとしているのだ。それを知っていて、ここが大変よい商売場所になると踏んだ彼女は、チュリアからこの市へ立ち寄ることを提案されたときとても良く食いついたのだった。彼女はいくら儲けるかを考え、目標利益額を頭に浮かべた。

 この市の周辺にいる人々は、すれ違い、分散していく旅人と、市に吸収されていく人々に分かれていく。二人は各々現金なことを考えていた。しかし、それは市に入るととたんにかきけされた。


 門を抜けてすぐの広場はすでにドレスアップされ、広場の回りを囲む店たちは色とりどりの布で自分の店だけでなく、店と店の間にもパーティのようなお飾りをしていた。一方で広場の中心部には人々が集まりお喋りに興じ、その人の間を踊るように道化師がラッパを吹いてまわる。さらにその中心にある小さなお立ち台で、皿回しの曲芸をしている男はちょうど技を決めたとみられ、喝采が小銭となって石畳に置かれた逆さの帽子の中へ降り注いだ。

 真ん中の噴水にそびえる銅像の英雄すらも祭り騒ぎの被害者だった。その雄大かつ筋肉質な体を惜しみ無く群衆に見せつける予定だったにも関わらず、前夜祭で浮かれた芸術家によって頭の上にデイジーの花冠が乗せられ、癒し系英雄としてデビューさせられていた。

 広場だけにとどまらず、民家が連なるところにも愛らしい飾りつけがされている。もはやこの市一面が色とりどりの一色であった。特に町の中心部へ続く道は派手にドレスアップされており、負けじと派手な服を来た紳士淑女どもが歩いていた。流石の狂乱騒ぎに、祭りを知らないまでもそれを察した一希はマーにそっと尋ねた。

「なぁ、祭でもやってるのか?」

「ええ、この市では年ごとにミュージカルの祭をやるのよ。たしか、一週間くらい期間があって、今日はその初日のはず。最終日にはゲストを交えたミュージカルを行うのよ。」

 彼女が話終えたとたんに鐘が鳴った。昼の鐘は鳴ったし、夕刻の鐘にしては若干早すぎるのでないかと一希は考えた。

「鐘が鳴ったぞ!!」

 彼の考えを遮るか如く、誰かが叫んだ。

 すると、人々の足は一斉に中心部へ向かった。いよいよ始まったか。今年のゲストは誰だ。などといった喧騒に二人も流されていった。


 中心部には、丸い広間の中央に円形のステージがあり、ステップを隠すように半円のテントが張られていたので、観客は広場の中央の半円舞台で行われるショーを見ることができたのだ。テントはシルク生地の紫色で、背面には騎士を象った紋章が刺繍され、円形の舞台の縁はこの地に昔から伝わる芸術様式の紋様が彫られている。一希はドレスアップされた中央の広場で流されつつ、そのように感嘆の声を漏らした。これまでの趣と異なるその上品さに息をのまざるを得なかったのだ。


 今やこの市の人々の殆どは、この舞台の周辺に集まっていた。舞台の見えない残りの半円部にも人だかりは出来ていた。彼らはどうにかして内容を知ろうとしたり、広場に続く通路に並ぶ屋台の主が振る舞う食事に舌鼓を打ったり忙しく動いていた。そのなかでも、一希は玩具を待ちわびる子供のように騒ぐ民衆に揉みくちゃにされながら、舞台の見える場所まで漂着した。満員電車を連想させる人ごみに思わず彼は吊り革を探した。近くにマーいるかすらわからないほどに人は多く、群衆どもは身勝手な会話は続いていたが、そのうちに、誰かの身勝手な一声で静かになった。

「静かにしろ。始まるぞ!」

ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。

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