Dream
日が沈みはじめても町の賑わいはまだ沈む様子を見せなかった。寧ろ月が出る頃に祭が始まるために、どんどん活気づいていった。人はどんどん増え続けいく。町長には自分たちから詳しい話をするので、休息の場所を探していてくれ、二人の騎士に言われた一希とマーは、礼と一時の別れを告げて、彼らは祭りまでの間の休息の場所を探しに向かったが、彼らは町の英雄となったために宿を探すのには大変苦労した。どこにいっても彼らは大歓迎を受け、落ち着ける環境とは言えなかった。握手だの、サインだのといった数々の要求に勇者の一希は生真面目に、行商のマーはちゃっかり商品を売りながら答えていたからだ。
結局のところ、そんなことをしているうちに月は顔を出し始め、祭が始まり、勇者は広場に設営されたパーティー会場に多くの民衆どもに連行されていった。そこで彼は恐ろしいほどのもてなし攻撃を受けてすっかりよれよれになってしまった。食事、声掛け、酒...彼はアルコールに決して強いと言い切れる体質でなかったので、最後の攻撃は特に効いた。お酌をしてくれたのが、あの最初に予定をこちらに伝えてくれた美しいエルフ耳の女性だったのが、彼の疲れた頭に残った数少ない情報の一つだった。あとは、殆ど民衆が勝手に盛り上がったことや、料理がとんでもなく美味しかったことなど曖昧なものばかりであった。
祭の活気は収まらないうちに、自ら立候補した宿屋の主人の計らいで一希とマーは宿の最高位の部屋にタダで止めて貰うことになった。
「いや、そんな良い部屋止めていただくわけには...!」
「いえいえ、ぜひともウチに泊まってくださいよ!」
普通の部屋ならともかく、そんな部屋を借りてしまっていいのだろうか、と彼はつぶやいた。
「宣伝効果になるし、いいんじゃない?」
マーは彼を肘でつついてつぶやき返した。結局言葉に甘えるといいかけたとたんに再び彼らは連行されたが、一希はすっかり疲れていたので、もはやされるがままになっていた。マーはというと、要領よく商売をして民衆どもを喜ばせていたのだった。不器用自分にかわって民衆の期待に応えてくれる彼女に内心深く感謝しながら一希はさっそく部屋へ向かうと寝息をたて始めた。
一希は妙な夢を見ていた。これが夢とわかっていた。真っ白な空間にただ自分が浮かんでいる。その気になれば泳ぐようにして移動することができた。ただ浮んでいる感覚はフリーフォールの落下前のような感覚で良いものではなかった。だから夢のような現実でさらに変な夢を見ていることを若干不愉快に思いながら、彼は白い空間を泳いでいた。
ただただ白いのでどれ程の距離泳いだかわからないが、それなりの疲労を感じたために彼は一度泳ぐのをやめた。再び彼はフリーフォールマシンにセットされた。ぼんやりと思考しながら浮かんでいると目の前に突然光が現れた。その眩しさに思わず目を瞑った。微かな声が聞こえた気がした。それは脳に直接響く中性的な声だった。
「カズ、魔物に気を付けて。なにかあったらきっと昔からの君の相棒が守ってくれるからね。きっとうまくやるんだよ」
一希は声に返した。
「貴方はだれなんですか?相棒って...」
声は一希が言い終わる前に言葉を遮った。とても急いでる様子が伺えた。
「時間がないんだ。要点だけ言うよ。何あっても絶対逃げないこと。そうすれば絶対なんとかなる」
呼び出しておいて時間が無いとはどういうことだ。そう一希は言い返そうとしたが光は徐々に薄くなり、次に一希が瞬きしたときには消えてしまった。逃げなければなんとかなる。なんとも曖昧なアドバイスだろうか。腹をたてていたが一希は段々と意識が薄れていることに気がついた。
そういえば、人間は一晩寝ている間に複数の夢を見ると聞いた、ともすれば今後は無難な夢が見れるといいな、そう考えながら一希は次の夢に移った。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。




