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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
Exploratory Various Humans
176/180

Fishing Fighting

 海上での激しい戦いの末、ロボットたちが生活する海底王国に流れ着いた一希。彼は人間の少年と機械の仲間とともにに過ごすことになった。彼が地上に帰るために必要なのは、魔物が飲み込んでしまったパーツ。それを取り戻す必要がある。

 また、彼らは三種族の、勇者の歴史を追体験できる映画を見た。かつて魔物も人間も区別無く、弱肉強食の世界を生きていた。ある時、不思議な生き物が現れ、その者の一言によりお互いがお互いを狩ることでより豊かになれると気付かされた。

 お互いを狩り続けるなか、魔物との和解を探る勇者がいた。彼の願いは虚しく魔王との戦いが始まった。映画はそんな盛り上がる場所で「続編制作中」と呆気ない一言で終わりを迎える。

 時間いつの間にか流れていき、王から指定された時間が近づいてきた。彼らはバスに乗り込み、目的地へ向かう。



「着いたみたいだぜ」

 バスは音も無く静かに止まる。イーの言葉に頷き、一希は下車する。仲間たちも軽い足取りでついてきた。

 足元でコンクリートの音が鳴る。港だ。所々に大きなコンテナが置かれており、眼前には海が広がっている。

 海底にもかかわらず海がある。一希は何度か似たような経験をしてきたので、最初ほどは驚かなくなった。しかし、これも人工的な海面なのだろう。相変わらずとんでもなく精巧だ。

「こっちです!」

 タブレットを持ったボーイが荷物の到着先へ仲間を案内する。しばらく港を進むと深い緑色のコンテナの前に、プラスチックのような素材の縦長の箱がある。縦長の箱はだいたい一希と同じくらいの高さだ。

 ボーイはタブレットに表示された番号と、箱に貼り付けられた伝票の番号を見比べて頷く。

「これだ!」

「なるほど、これか!」

 リローゴは興味深そうに箱を眺めている。イーは近場をうろつき始めた。一希が箱の蓋に触れた瞬間だった。カチリ、ボタンを押した音が聞こえる。

「あ!それ開封ボタン!」

「えっ!」

 ボーイの言葉が終わるのとほぼ同時に、箱から機械音が響き出す。ぽん!と軽快な音が鳴り、大きな投網が飛び出した。海面の上で網はひとりでに広がり、両端の錘からポールが伸びて海底に立った。

「...これは...」

「自動投網だぜ〜」

 呆気に取られている一希をよそに近場を一周してきたイーが説明をする。

「そろそろ時間かな〜」

 ボーイが呟きつつタブレットに表示された時間を見つめる。次の瞬間、大きな音が轟いてき

た。


 海が唸りをあげている。海面に黒い淀みが浮き出ていた。ごぽりと音がして、淀みが盛り上がる。何かが、飛び上がった。魚群だ。淀みの正体は魚群の影だった。

 群れが、飛び上がる。群れには大きな魚から小さな魚まで様々なサイズの魚が居る。飛び上がった群れは網に向かって飛んでいく。

 いや、流れと向きを計算して魚群が突っ込むように網が自動的でセットされたようだ。しかし網目が大きく魚のほとんどがすり抜けていく。すり抜けた魚が再び海面へばちゃばちゃ落ちていく音が聞こえた。

 重い音が聞こえ、網が一瞬で閉じた。網には一際大きな魚がかかっていた。大きな人間の足の生えた巨大なマグロのような姿。網目から足をばたばたとさせ、なんとか出ようと藻掻いている。

「あれが...」

「海底を歩く魔物だね!」

 嬉しそうにリローゴは言う。網がもとに戻り、港のほうに帰ってくる。相変わらず魔物はじたばたし続けている。そして網が再び開き、魔物が落ちてくる。はずだった。


 飛んだのだ。マグロの魔物から白い翼が生え、空を舞った。

「なんだこいつ!」

 叫ぶ一希と目を丸くするボーイをよそにロボットたちは冷静だ。

「そういえばこいつ飛行能力あったなぁ」

「歩くことも泳ぐことも飛ぶこともできるなんてチートっぽいよね!」

 魔物は姿勢を変え、猛スピードでこちらへ真っ直ぐに向かってくる。全員が急いで避けると、コンテナにつっこんだ。大きな衝突音が響き、コンテナに刺さる。

「とまった...?」

 ぶつかっていたらひとたまりもない。コンテナに突き刺さり、再び足と、それに羽をバタつかせているマグロの魔物。ボーイは恐る恐る近づこうとする。

「だめだ!」

 イーがボーイのローブを引っ張り制止した。少年が足を止めた次の瞬間、魔物は翼でコンテナを抑え、刺さった体を引き抜く。そして、再びこちらに視線を向ける。

「くるぞ!」

 魔物は再びこちらに向けて突っ込んでくる。全員がその場を離れる。マグロも先ほどのことを学習したのか、今度は突き刺さる前にぴたりと止まり、形成を整え突進攻撃を繰り返した。

 何度かそれを繰り返しているうちに、気が付けば一希とリローゴはコンテナの前に追いやられていた。

「もしかって、ピンチってやつ!?」

 なぜか目を輝かせて嬉しそうな声を上げるリローゴ。

「そうだよ!」

 一希は目の前の敵がこちらに標準を合わせていることに気づく。まずい。彼はとなりで相変わらず危機感の無いロボットの無い耳に耳打ちをする。

「左右に逃げるぞ」

 返事はない。かわりにロボットは叫んだ。

「イー!やっちゃえ!」

「しょうがないな....できるかわかんねぇぞ」

 マグロの魔物を挟んで反対側にいるイーはため息交じりに答えた。そして手首のパーツに触れる。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

次回投稿は6/1 12時になります。

どうぞよろしくお願い致します

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