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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
Exploratory Various Humans
173/180

Animation History 3

 魔物との海上の戦いの末、海に沈んだ一希。彼を助けたのは、機械たちが過ごす国に居た少年。ボーイと言う少年と共に、機械の国の王を始め、沢山のロボットたちと出会った。

 一希は今、映像に入り込めるという「体験型映画」で魔物と人間の歴史を追体験していた。かつて、人と魔物は区別なく生きていたが、ある日「天啓」が降りてきたという。黄金色のフラミンゴのような鳥が、人間と魔物、双方の住処に降り立ちお互いを殺せ、喰らえと叫んだのだ。同時に人間は魔法に気づき始めた。


 あまりに眩しい月の光が消えると、そこはシアタールームの中だった。座席に寝転がっていたイーが一希のほうを見て手を振る。一希の元にボーイが駆け寄ってくる。

「データの入れ替えタイムだ、まぁフィルムの交換みたいなモンだぜ」

「なぁ、イー、この歴史って...」

 一希は声を出したはいいものの、言葉に詰まった。知らない事実が、なだれ込んでくる。今までに聞かされたことの無い話ばかりだ。

「ビックリ、か?」

 イーは大きな単眼をキラリと光らせ、細めて笑った。

「ま、もうちょっと聞いていけよ。ここからもっと楽しい...いや、この言葉は違うか...ダイナミックになるぜ」

 単眼のロボットは細めた目を戻した。

「ダイナミック?」

「疲れるんだったら、なにも立って見なくてもいいんだぜ」

 そういってイーは自分が寝転んでいる隣の座席に腕を伸ばした。指を伸ばしてトントン、と座席を叩く。

「映画、なんだから座って見てもいいんだぜ。」

 一希が答えに詰まっているうちに、ジーと音が聞こ照明が徐々に暗くなってくる。

「さぁ、再開の時間だ」

 呆気に取られていた彼は、音が聞こえ始めると、いそいでイーの隣の座席についた。部屋が暗闇に閉じる前、正面を見て流れる内容に備えた。




ーさて、天啓を受けた人間と魔物はどうなったでしょうか?

 真っ暗な中、いわば「ナレーション」の穏やかな女性の声が響く。少しずつ、周囲が明るくなってくると、そこは険しい岩山だった。

 人間たちが岩場を駆け抜け3人組で象を追っている。ただの象ではない。額に宝石のようなものをつけ、細長い鼻は3つあった。そう、魔物の象だ。

 彼ら人間たちの様子はさっきとは異なった。彼らは鈍い光を反射する鉄の鎧を身にまとい、剣や槍、そして杖を持っている。

 一人が杖を振ると電気の波が敵に襲いかかる。波をもろに浴びてよろけた魔物に、もう一人が剣を振りかざした。魔物は耳をつんざくような断末魔を上げて倒れる。地響きをさせるようなそれをものともせず、彼らはその体に武器を突き立てた。やがて魔物が動かなくなると、人間たちは額の宝石を剥がし、皮を剥ぎ取る。

 人間たちは戦利品を見つめ、やがて緊張の糸が途切れたように息を吐く。彼らは顔を上げて嬉しそうに会話をしていた。

 次の瞬間、槍を持っていた人間の体が勢いよく持ち上がった。悲鳴は一瞬だけ上がり、苦しさからかすぐに途切れる。大きな鷹のような鳥の魔物が、頭を掴んで人間を持ち上げたのだ。仲間の危機に人間たちは瞬時に反応したが、もう遅い。

 鳥の魔物は高くから人間を放り投げ、岩壁に叩きつけた。電気の魔法や剣をさらりと躱し、ぴくりとも動かない人間を再び掴み、空高く消えていった。あたりに残ったのは2人の人間と、象の魔物の消えつつある亡骸。岩山にあまりに冷たい風が吹き抜けた。観衆の一希には温度は伝わらないはずだが風の冷たさが手に取るように分かった。


ー人間と魔物は必要以上にお互いを「狩る」ようになりました。どちらが最初に始めたかはもうわかりません。

 ナレーションの声は、残酷なまでに穏やかだった。


 一希たちの足元の映像が崩れる。彼は慌てて立ち上がった。

「場面切り替えだよ〜慌てんなって」

 イーの声に、少し恥ずかしくなった一希は平静を装って座り直す。崩れた足元に少しずつ映像が浮かび上がってくる。


 石畳だ。浮かび上がる街並みは、最初に人間たちが過ごしていた原始的な村から大きく進化していることを示していた。石造りの建物。頑丈な城壁。一希が冒険してきた世界によく似た街並み。

ー人間たちは、魔物から戦利品を得てより豊かな生活へと進化してきました。そして魔法を使うようになりました。

 祭りだろうか。軽快な音楽が聞こえてくる。音が降る中、石畳で煌びやかな衣装を着て舞う踊り子。三角帽子をかぶった女性が短いステッキを振ると、空に虹がかかる。それを街の子どもたちが目を輝かせて見ている。

ーしかし、同時にいくつかの困難に突き当たりました。

 映像の主観がぐるりと巡り、城下町の路地裏に入る。路地裏の奥に進むにつれ、音楽は遠くなり、人々の歓声もはるかかなたに聞こえる。代わりに昼間でも暗がりが広がり、あたりには壊れた何かの破片が散らばっていた。

 城下町のはずれで、ぼろぼろの服を来た姉妹が、何かに追われている。二足歩行の豚の魔物。金槌を持ち、鼻息荒く二人の少女を追い回す。途中、破片に躓いた妹を庇うように、姉が魔物との間に入る。

ー一つは格差。もう一つは魔物たちからの更なる侵攻です。

 襲いかかる魔物。目を閉じる少女。次の瞬間、魔物と少女の間に音もなく、しかし明確に稲妻が落ちる。稲妻のあとに、若者が立っていた。暗がりを切り裂くように、輝く剣を持ち、凛とした表情で相手を見据える。

ーそんな中、世界に一人の若者が降り立ちました。彼こそ、後に人々に「勇者」と呼ばれる存在です。

新年あけましておめでとうございます。

今年もどうぞよろしくお願い致します。


次回の更新は2/1 12時となります。

ここまで呼んで頂きありがとうございました。

どうぞよろしくお願い致します。

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