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Hope of Fantoccini  作者: 蒟蒻
Exploratory Various Humans
172/180

Animation History 2

 海の底にある、機械の国に沈んてきた 一希。彼を助けた少年「ボーイ」と、ロボットのロボットの友人であるイーとリローゴと会う。彼らと魔物、人間、ロボットの歴史に関する映画を見に来た。映画がはじまると、あたり一面が森の中に変わった。イー曰く、「体験型映画」という、その場を追体験できる映画のようだった。


穏やかな女性の声でナレーションは歴史を紡いだ。

ーずっと昔、まだ、あらゆる生き物が区別無く生きていたころがありました。

ー生き物たちは、時に協力し、時に喰らっていました。彼らに特別な画策などなく、ただ生きていたのです。

ーいつ頃でしょうか。天啓が人間と魔物の双方に降りてきたのです。



「天啓?」

 一希は声の降る空を眺めた。ぼろ布をまとった映像の子供は蜘蛛の残骸である輝く糸を拾い、走り出した。映像は村に移り変わる。原始的な集落で、人々は耕作を行っていた。限られた土地の耕作では、収穫もわずかで、人々はわずかな食事を分け合う必要があり、決して豊かではなかった。大人は子供に食事を譲り、子供は大人からたくさんのことを学ぶ。雷雨や強風が家や集落を襲うこともあった。しかし、人々は幸せに見えた。

 ある雨の上がった日、天から穏やかな日差しが降りてくる日。村の前に、不思議な鳥が現れた。フラミンゴに似た大きさや姿だが、その体は黄金色に輝いていた。集落の人々がなんだなんだと集まってくる。人々が十分に集まってくると、鳥は翼を大きく広げて声を上げた。

『人よ人の子よ、魔物を殺すのです。魔物たちは、あなたの生活を豊かにするものを与えるでしょう。』

『人よ人の子よ、魔物を殺すのです。魔物たちは、あなたの生活を豊かにするものを与えるでしょう。』

 人々は訝しんでお互いの顔を見合わせる。

『人の子よ、人の子よ......』

『人の子よ、人の子よ......』

 しばらく声を上げ続けると、鳥はすぅっと息を吸い、大声を上げた。

『「魔」をうけいれろ!』

 びくり、と体を動かし、鳥は翼を閉じまっすぐ天に向かって消えていった。

「おい、どういうことだ?」

 大柄な男がいう。隣にいた老人は首を傾げた。

「どういうことじゃろうなぁ」

 その瞬間だった。遠くから悲鳴が聞こえてくる。人々が急いでそこに向かうと、集落の少女が一人が狼に追いかけられていた。狼は8つの目をぎらぎらと光らせ2つに割れた尻尾をまっすぐに伸ばし襲い掛かってくる。

「大変だ、彼女を守れ!」

「でも、どうやって?」

「わかんねぇ、でもやるしかねぇ!」

 集落の大人たちたちが鍬や鋤をもって狼に向かう。狼は多勢に無勢、逃げようとしたが遅かった。武器としての使い方を知らぬ人々の、守ろうとする意志によって却って残酷に引き裂かれていく。

「大丈夫か」

 少女は大人たちに助けられ、大人たちの足元には狼の亡骸が残る。

「うん」

 亡骸は小さくなり、爪と毛皮が残り、その眼は美しい宝石になった。

「なんじゃこれ?」

 男が宝石を持ち上げる、その瞬間男の目に淡い光が宿った。その場にへたりこんでいた少女がふわりと浮き上がる。

「きゃっ!」

「わわ、なんだ?」

 男が驚いて宝石を落とすが、眼の光は残り続け、少女はふわふわ浮かんでいる。男がゆっくり瞬きすると、呼応するように彼女はゆっくりと着地する。

 人々はみな、目を合わせた。


 人々の映像にノイズが走り、場面は移り変わる。夜の岩場だ。ここ一帯は魔物らしき生き物が多く見えた。ムカデとトカゲの混ざったような爬虫類、人が溶けたような姿をしたスライム、飛竜すらいた。一希はやはりほかの生き物たちに干渉できないようで、触れることもできなければ向こうから襲ってくることもしない。これが映画であることを思い出した。

 彼があたりを散策していると、岩屋の奥に狼の巣があった。3匹の子供の狼がいる。彼らはみな、8つの目を持っていた。子供たちは身を寄せ合って、寒さに耐えていた。しばらくすると母親が戻ってきて、子供たちを順番に舐めてやる。

 子供たちはみな、小さくしかし嬉しそうな声をあげた。 その時、岩屋の入り口に金色の鳥が姿を現した。フラミンゴによく似たそれは、人間の集落に現れた鳥と同じ姿であった。

『魔物の子よ。魔の子よ。人の子を喰らうのです、彼らはあなた方に危機と力をもたらす。』

『魔物の子よ。魔の子よ。人の子を喰らうのです、彼らはあなた方に危機と力をもたらす。』

 魔物たちは黙ってその話を聞いている。飛竜は地面におりてきた。巣穴から母親の狼が出てくる。

『魔物の子よ。魔の子よ。』

『魔物の子よ。魔の子よ。』

 しばらく声を上げ続けると、鳥はすぅっと息を吸い、大声を上げた。

『「....」をうけいれろ!』

 一希はうまく言葉が聞き取れなかった。鳥はびくり、と体を動かし、翼を閉じまっすぐ天に向かって消えていった。魔物たちは集まり、天に向かって遠吠えを上げた。一希が声の先、天に目を向けると月の光が眩しかった。光はカーテンのように注ぎ、思わず目を閉じた。


 目を開くと、そこはシアタールームの中だった。どうやら「体験型映画」が一段落したようだ。遠くにボーイとリローゴが見える。座席の上にイーが寝転がっていた。

 ボーイはしばらくあたりをきょろきょろしていたが、一希を見つけると嬉しそうな表情で近寄ってきた。「一希さん、これすごいね!」

 寝転がっていたイーが手を挙げる。

「よぉ、おかえり。休憩タイムだぜ」

ここまで読んでいただきありがとうございました。

次回投稿は1月1日12時となります。


本年もありがとうございました。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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