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あの生徒会が終わって俺は帰ってる途中、中学の時から通っているたこ焼き屋に寄った。
「おう!ヤー坊」
「オッチャン久しぶり!たこ焼き一つよろしく!」
「あいよ!」
椅子に座って荷物を横に置いて注文する。椅子と言っても屋台の横にあるベンチだ。
一応、俺だって分かるように髪をオールバックにしてメガネを外している。
たこ焼き屋のオッチャンとは小学校の時から知っている。オッチャンはオヤジの相談役をしていたことがあり、組との関係が結構あった。しばらくしてある一件を機にヤクザを辞めた。そっからたこ焼き屋を始め中学から俺の相談役になってくれてる。元ヤクザだがめっちゃいい人だ。
「でっ、どうしたんだしばらく来なかったけどよ」
タコの匂いと生地の焼けてる匂いが漂ってくる。
うまそうな匂いだ。早く食べたい!
「いやー、バイトとか初めて来る時間がなかったから」
「へー、ヤー坊がか?彼女でも出来たんか?」
相変わらずオッチャンは茶化してくる。昔から変わらない性格でほっとする。
「いやいやいや、目指していた高校の受験料をバイトで稼いでたんだ。」
「高校受験?短期バイトとかしたらすぐじゃあねぇか?」
「いや、俺の高校はただの高校じゃあねぇから」
「はー、いくらだあ?」
指を3本上げる。
「3万?」
「30万」
「はあああああ!?30万!?」
オッチャンの大声で少ない周りの人に見られる。
あまり大声で言って欲しくない内容だけど・・・
「な、やべーだろ?」
「おめー、受験料が30万って後の入学金と物の準備金がいるだろう?」
「ああ、成績上位の特待生になって全部無料にしてもらった。」
「はあ、スゲーなー!」
オッチャンがタコ焼きを6個入りの容器に12個入れて渡してくれた!
「ほら、今日は入学祝いだ。やるよ」
「お!まじで!ありがとう!」
やったぜ!オッチャンのアッツアツの出来立てたこ焼きは天下一品だ!
オッチャンは休憩に入ってタバコに火を付けて俺の横に座った。
「そういやー、ゴンさんが心配してたぜ?」
「モグモグ、オヤジが?」
あの頑固者のオヤジが俺の事を心配するなんて珍しい。
「この前ゴンさんと久々に飲みに行ってな。オメーの事を聞いて来たよ」
「・・・オヤジ、何か言ってたか?」
「ああ、オメーさんが居なくて寂しいっさ」
「んだよそれ」
思わず笑ってしまう。俺との縁を切ったくせにさ。
「聞いたぜ?オメーがゴンさんとの縁を切った話をな」
「それで?」
「詳しい話はあまり言えないが、縁を切った理由はな」
思わず食べている手を止めてしまうほど聞きたかった。
「オメーさんをヤクザから縁を切って堅気に戻してやることにだったんだ。」
「は、なんだよそれ・・・」
初めて聞いた理由・・・
そんな簡単な話だった。
「オメーさんがヤクザと関わりを持っていると必ず高校には入れねぇ。幸いにもオメーさんの体にゃ、刺青も傷もねぇキレイな体だ!だから、オメーさんを堅気の高校に行かせるために縁を切ったんだ。」
「・・・」
「しかもなぁ、ヤー坊・・・オメーさんが自分からやりたいって言ったのは初めてだったらしくてなあ、ゴンさんは酒の席で話ながら泣いてたわ。オメーにゃなに一つ親らしい事をしちゃいねぇ。だから、自分からやりたいと言ってくれたことが嬉しかったらしい。」
「だけど、オヤジは組を俺に継がそうとしてたんじゃないのか?」
「いいや、ゴンさんは・・・反対してたんだ。」
「オヤジが・・・反対」
「ああ、反対してた。カスミさんとの約束が合ったからな」
カスミ・・・母さん!
遠山カスミ、旧姓大和カスミ 俺の母親だ。
「母さんが?」
「おっと、こいつぁ言っちゃ行けねかったかな」
焦ってタバコを下に落として火を消す。
「さて、そろそろ帰りな・・・ジイさんが待ってんだろ?」
「・・・ああ」
オッチャンはタコ焼き屋台の片付けを始める。
俺はベンチでしばらく考えていた。
オヤジと母さん、あまり周りから詳しい話は聞かないし聞かされずにいた。
オッチャンにも、オヤジにも・・・
俺はあの日、縁を切った日を思い出した。
「オヤジ!俺5代目継ぐのを辞める!」
あの日、俺は決心をしてオヤジの前でそう宣言をした。
「・・・」
「そして、カタギの高校通って俺は一人で生きてみてぇ!!」
「・・・オメーがか?」
「ああ!!」
オヤジは拳を握って近づいて来て
「ッ!!」
右の頬を殴られた。
殴られた衝撃と威力で後ろにぶっ倒れる。
いてぇ・・・
当たり前だよな、身勝手な俺だ。
だけどよぉ!あの人についていきてぇ!!
立ち上がってオヤジの前に行く
「お願いだぁ!オヤジ!!」
頭を床に擦り付けるように土下座した。
「出ていけ!!この家から!!二度と顔を見せるな!!」
オヤジの怒声を聞いて思わず体が固まる。
「お前との・・・縁を切る」
「!?」
絞り出されるようなかすれた声で言われる。
正直、言われるかもしれない。
だけど、いざ目の前で言われるとやっぱりキツい。
「わかった・・・出ていくよ・・・」
オヤジに背を向けて歩いた。
オヤジに対しての言葉は本当は謝罪だった。
すまねぇ・・・本当にすまねぇオヤジ・・・
「おい、マー坊」
はっ!として俺は思い出した過去から戻される。
「マー坊、俺は屋台引っ張って家に戻るが・・・って、なに泣いてやがる」
オッチャンが俺の顔を覗きこむ。
オッチャンに言われて濡れている頬を触る。
泣いてんのか?俺・・・
俺は袖で涙を拭ってオッチャンに伝える
「すまねぇ、オッチャン・・・オヤジに伝えてくんねぇか?」
オヤジ・・・こんな俺を育ててくれて・・・ありがとうな
今の俺は感謝の気持ちでいっぱいだよ・・・
・・・ってな
「・・・おうよ」
オッチャンは一言そう言って帰っていった。