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『気づいたら拉致されてた』2

サブタイトル決まらないのでナンバリングで攻めます。

黒くそびえる玉座、不気味に睨む悪魔像、陰鬱で邪悪な空間。

そんなものはどこか遠くへ消え去り、室内は明るさに満ちていた。

少年が少女に文字通り人生を賭けた告白を行い、それが無事に成功したことが証明されていた。

展開された魔法陣もなければ、陰鬱な空間も無い。

加えるならば、少年の羞恥心もプライドもきれいさっぱり消え去っていた。


「(ああ、言っちまった.......)」


安堵と後悔が入り交じり、複雑な心境だった。


「男の子に告白されちゃった......きゃっ」


少年の気持ちなど他所に自称魔王は頬を赤く染め喜びに浸っていた。


「(まずい、ここからどうする。嘘だとばれたら即終了だぞ......!)」


修羅場は乗り切ったがまだ安心してはいけない。

自分の行動は本心ではなく、生きるための最善策だ。それが相手に悟られでもしたら

ただではすまないであろう。


「(どうする......!どうするんだ!!)」


幾つもの行動とその後のパターンを考える。

考える。

考える。


しかし、出てこない。


「いやー、告白なんてされたの人生でいつ以来だろ?あ、私、魔王だった!」


「........」


「勇者?どうしたの?あ、もしかして結婚式の予定考えてる?」


「........」


「新婚旅行はどうする?私、この世界のハワイって場所に行ってみたいんだよね。本で見たけどすごくキレイだったなぁ。

あ、結婚式もハワイでやっちゃう?」


「........」


「勇者?どうしたの?もしもーし聞いてますかー?」


こちらの心配などお構いなしに話を高速展開する自称魔王。


「あのさ、自称魔王」


「ん?あ、マオでいいよ」


「マオ?それがお前の名前なのか?」


魔王で、マオ。そのままだな。という言葉は胸の内にしまっておく。


「そそそ、マオで魔王。魔王がマオってことで」


「......自分で言っちゃうのかよ」


「えーっとそれで、勇者は何が聞きたいの?」


「あ、俺はユウな。ユウで構わないぞ」


「勇者の勇でユウ。安直すぎ、ぷぷっ」


音の速さで炸裂しそうな拳を全力で抑える。


「えーとな、マオ。お前の返事はオッケーってことでいいんだよな?」


「え?もちろん!オッケーに決まってるでしょ!」


ユウはその言葉にホッと胸を撫で下ろす。

自身に迫る危機が過ぎ去ったわけではないが、この具合ならよほどのことをしなければ消される事はないだろうと安心する。


「そ、そうか。それなら良かった。嬉しいよ」


「さっきから難しい顔してそんなこと考えてたの?」


「ああ、明確な返事は聞いてなかったからな。安心したよ」


「私はてっきり、別のことでも考えてたのかなーと思ったのに......」


そう言って突然顔を赤くしてモジモジしだす。


「別のこと?」


「うん。そ、その、け、けけ結婚初夜のことかなーなんて!えへへっ」


「えへへっじゃねえよ!!お前の中の俺はどうなってんだよ!!」


「そ、そんなの全裸でマウントポジションに決まってるじゃん!!」


「俺は野獣か!!」


「これからメチャクチャにされちゃうのかななんて考えてたらドキドキしてきちゃった......」


「俺は別の意味でドキドキしてるよ.....」


お前のさじ加減で命が消し飛ぶからな、というのは口が裂けても言えない。

マオの反応を見る限り、このまま順調に懐かせてどうにか丸め込ませればこの危険な状況から脱せるかもしれないと

ユウに一筋の希望が見えてくる。


ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ


間の抜けた音が室内に響く。


「ごめん。安心したらお腹空いてきた」


朝から何も食べていなかったので既に空腹は限界を迎え、緊迫感から開放された身体はカロリーを求めていた。


「しょうがないなー。やっぱり人間て不便だね。うん、私もお腹空いた!」


「お前もお腹すくんじゃねえか!!」


「私だってカロリー必要だもん!成長期だもん!」


揺れる胸に思わず視線が行くユウ。


「あ、今おっぱい見てたでしょ。見てたよね!」


マオはにんまりと楽しそうに笑い、両腕で胸を挟んで強調する。

むにゅむにゅと形を変えるその柔らかな動きに視線が釘付けになりそうになるが、

鋼鉄の意志で理性を押さえつける。


「べ、別に―。腹減っただけだし。おっぱいよりもピザだし!」


「むぅ、勇者のくせにナマイキだ!」


唇をとがらせたマオはそのままユウの右腕に抱きつく。


「や、やめろっての。当たってるよ!当たってますからね!」


「当ててるんだもん。ユウのちっぽけな理性をぶっ飛ばしてやるんだから」


右腕に当たっている胸は動くたびに形を変える。


――や、やらけぇ。なんぞこれ?おっぱい最強か??


鋼鉄の意志が容易く折れそうになる。

これはただの脂肪だ、マシュマロみたいな風船が右腕に当たっているだけ。

そうは考えても思春期男子にこれほどまで強力な武器はなかった。


「性欲よりも食欲だから!さっさと家帰せ!ピザ食わせろ!」


欲望を鎖で封印し、消えかけていた食欲を再燃させ最後の抵抗を試みる。


「分かったよ......しょうがないなぁもう」


マオは拗ねた子どものように言うと、ユウの腕から離れ、パチンと指鳴らしをした。


直後、軽い目眩に襲われもう一度目を開くと、そこは見慣れた自室だった。


「え、俺の部屋?なんで!?」


「そりゃ魔王だからね。ワープぐらい朝飯前だよ」


「魔王すげえええええええ!!」


「えへへへ、褒められちゃった」


普通にしていればマオは美少女である。

巨乳で可愛くて尚且つ自分になついている。

これで命の危機がなければユウはこの少女に本気で惚れていただろう。


「普通にしてれば、可愛いんだけどな」


「ん?」


「可愛いのにツッコミどころが満載だなって」


「つ、突っ込みたいの?」


「おい、それ別の意味含まれてるだろ」


「ユウのえっち......」


「.......ピザ食ったら色々聞かせてもらうからな」


ツッコミを入れる気力はもう無かった。


to be continued

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