休みの日には大抵なにかが起こる
「……ふあぁ…………眠い」
ここ数日で歩き慣れてしまった道を、さも当たり前かの如く進んでいく。
なんか、もう…………疲れた。肉体的にも精神的にも。こんなんだったら僕、近いうちに死んじゃうんじゃないかな。
今日は日曜日。神様も休んだ休息日。一般的に仕事がないその日は週に一度の休める日。そう、一般的には。
「掃除が終わってないからしょうがないか…………はぁ……」
二重の疲れもあってか、蛞蝓にも劣らぬスピード(気持ち的に)で学校に向かう。今になって、昨日あの後に終わらせておくべきだったと後悔し始める僕。まあ、特にやることもなかったし、ちゃちゃっと終わらせて帰ろっかな。
玄関の前につくと、体育系部活の掛け声が聞こえてくる。それと同時に自分自身も高校生なのだという実感がわいてくる。ようやく待ちに待った高校生活なんだからね、素晴らしいものにしないと…………あれ、なんか前も言った気がするな。
下駄箱で靴を履き替え、部室棟に向かう。
ピンポンパンポーン
『職員会議がありますので、職員の方は至急職員室へ』
間延びした呼び出し音と共に、アナウンスが入る。これからの会議なのかな。全教員だから、気持ちを入れ換えるっていうのもあるかも。
そんなことを考えつつも、音楽研究部の元へ歩を進める。
◇◆◇◆◇
紙類やガラクタの類いを入り口付近に集めて、ようやく片付けが終わった。なんか、もう動きたくないな。
機器の点検と自分に嘘をついて、発掘した二世代くらい前のステレオの電源を入れ、ラジオをかける。流れてくるオーケストラのメロディがとても心地よくて…………あぁ、癒されるな。ずっとこのままだったらいいのに。
ガチャ バタン!
一連の流動的な動作で長髪の女性が入ってきた。しっかりとドアを閉めて。え、え、こんな早くフラグって成立するもんなの!?
「……ぐすっ、うぅ……」
顔を向けると、今にも泣き出しそうな女性が、壁に体を預けながら俯いて立っていた。
急に入ってきた理由もわからないけど、一応声かけといた方がいいよね。
「あ、あの、大丈夫……ですか?」
正面から窺うようにして見ると、人物像がうっすら見えて……
「き、響子先生……ですよね?」
その声に反応してか、その女性は顔を僕に向けた。そして、おぼろ気な濡れた瞳で僕を見たかと思うと、突然抱き締めてくる。
「え、ちょ、先生!?」
でも、その肩は小さく震え、呼吸が速くなっていて、突き放すどころか守りたくなるようで……。
「……うぅぅ、……ようとぉ…………ぐすっ」
ようと? 聞き返そうとしたが、先生は答えられそうな状況にない。せめて、泣き止んでからの方がよさそうだな。
その後、泣き止んだのだが……
「寝ちゃってるしなぁ……」
最早知る術なし。
……それよりなにより、すぐにでも先生をソファに移動させた方がいいかも。寝てる人を無理矢理立たせるのは良くないだろうし。別に二人分の体重をずっと支えててキツかったとかそう言う訳じゃあないけどねっ。
さすがにこのまま運ぶのは物理的にも精神的にも、僕の体がおかしくなりそうなので、急遽お姫様抱っこでソファまで運ぶ。女性って意外と軽いんだ……。
先生が泣いてた理由と、なにより"ようと"について知ってる人……いないかな。先生と親しくて、側によくいる人……
「あ!」
僕は部室のドアを開く。後ろ手にドアを閉め、本校舎の方へ歩き出す。一人思い当たる人がいた。
丁度その時、こちらに歩いてくる男性教師の姿が見える。
「宮崎先生……」
うん、この人に聞こう。