誰かが苦しんでいるような気がする
④晴美がウィルを好きになり始めて一週間がたったころのこと。ふと彼の曲を聴いて涙が出始めた。❝ウィル君はきっとつらいことをずっと一人で乗り越えてきたに違いない!これは絶対にそうだわ❞その日から晴美はウィルについて長文で自分のブログに投稿し始める。本来晴美が扱うこのSNSは画像をメインにとうこうするものなのだが彼女はいつも長文で投稿していた。どうしても彼関連の写真なども載せたかったのでウィルをタグ付けした。万が一著作権侵害になり訴えられたりしては困ると思ったためだった。その一週間後、彼は久々にブログを更新していた。新しい曲ができたらしい、その宣伝と無料握手会のおしらせだった。❝えー!!うそ!無料!?ウィルってもうメジャーデビューも終わってるしだいぶ有名な人なのに無料?謙虚なひとだな。❞晴美は一瞬行こうとしたのだが交通費がないため行くのをためらった。というか行かない気でいた。❝定員60人までか。私一人行くと一人がウィル君に会えなくなるし、私は別にいいや❞その次の日彼の事務所のスタッフはまた握手会について宣伝していたため晴美はやはりいきたくなり、親に就職先の面接があると嘘をついて母親に交通費を出してもらった。嘘なんてだめだとは思いながら少し気が咎めたが気づいたときには嘘がするすると口から出ていた。それから配信された彼の新しい曲「nextlevel」はまだ聞いていない。