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初恋は実らない、ジンクスさえ憎い


 気づけば、クソ、と悪態が口からこぼれていた。いつもながら口が悪いが、今日は殊更悪い。なんたって、機嫌がよろしくないからな。


「あー、さみぃ」


 そんな俺に構わず、腑抜けた声で情けないことをほざいた友人に苛立ちが増す。

 なんで、こんな男が。


「お前ふざけんなよ」

「ふざけてないって」



 その苦笑いも腹立たしいったらない。俺は余裕だよって言われているようで腹が立つんだ。

 そんなの被害妄想だって笑われるだろうけど、それこそ知ったこっちゃねぇよ。


「お前、まじでむかつくわ」

「ひどいなー。傷つくわー」


 そんなこと欠片も思ってないくせに。

 こいつはいつもそうだ。適当にあしらって、思ってもないことをさも思ってますよ、と言わんばかりに下手な小芝居をする。それがどんなに残酷かも知らないで。


「よく言うぜ。何が傷つくだよ。まじでふざけんなよ。カス野郎」


 思い付く限り罵ってやろうと吠えていると友人声を出して笑ってから「知ってる」と言い放った。…だから嫌いなんだよ。

 そののんびりとした毒気のない態度にいつも戦意を喪失してしまう。俺の毒気まで吸い取ってくれなくていいのに。想いのまま戦いたいんだ。せめて、それくらいはさせてくれたっていいだろ。こっちは戦わずして負けてんだから。

 このどうしようもなく情けない感情と向き合いたくなくて逃げるように虚勢を張ろうとしたところで、背後のドアが勢いよく開いた。立て付けの悪い鉄のドアからは不気味な高音を放ちながら開かれた。そこから現れた者は悪魔がお似合いだな、と柄にもなくセンチなことを考えていると、現れたのはなんてことない、可愛い小悪魔だった。



「こんなところにいたぁ。もう、探したんだよぉー?」


 頬を膨らまし、文句を言いながらこちらに近づいてきた姿はまさに天使だ。その無駄に美しい容姿に中身が伴っていない堕天使ではあるけれど。

 その美しく殺生なんて出来ないような形をしているが、実際はその真反対なんだからたちの悪い女だ。


「ごめん、ごめん」


 相変わらず嘘くさい笑顔を貼り付けた友人が思ってもないことを軽い言葉で言い放った。

 そんな友人にを特に気にすることもなく堕天使は「べつにいいけどぉー。もう帰れるぅ?」と独特な話し方で聞いた。



「ああ、帰るか。じゃ、ハヤ、俺ら先帰るわ」


 夏の生ぬるい風が頬を撫でる。

 堕天使のなめつくような言葉も友人の残酷な態度も何もかもが馬鹿げてる。

 いや、何よりも馬鹿げてるのは――



「ハヤちゃん、また明日ね」



 ――こいつらが好きだっていう己だ。

 幼馴染なんて厄介な関係にビビって、愛おしいなんておぞましい感情に翻弄され、初恋は実らないというジンクスを間に受けて。

 その間に横から胡散臭い笑顔を貼り付けた男が掻っ攫っていくんだもんな。やってらんねぇよ。まじで。

 間抜けにも程がある。


「…ああ」


 クソ。

 憎たらしいったらないな。

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