2.最初の仕事 追記
あのとき、井出さんが進藤という男に別れを告げる場面に立ち会った。
そのとき、なぜだか、よかったと思ったんだ。
何がよかったのか、なんておれが判断する権利はないけど、おれはどこかほっとした。
おれにも、あんな友達がいたら良かったのに、とも思ってしまった。
そんな奴、どこにもいるわけがないのに。
どうしてだろうな。
「よぉ」
いつの間にか、隣に影が立っていた。
「初仕事、おつかれさん」
「影……か」
「どうだ、悲しいか?」
影の声が、どこか楽しげに聞こえる。だから、おれも楽しそうな声を出そうとしたが、結局はいつもの無愛想な返事しかできなかった。
「いや。ただ、変な感じだ」
「へぇ。どんな風に?」
「どうして、井出さんは死んだのにあんな風に笑ったんだ?」
おれの素朴な疑問に、影は鼻歌でも歌いそうな雰囲気で問い返してくる。おれの聞いたことは、それ程おかしなものだっただろうか。
「コウはどう思う」
質問を質問で返され、少しだけ不機嫌になってしまう。
「……分からないから聞いたんだ」
すると、影はさらに楽しそうに言った。
「それでいい。いつか分かるさ、コウにも」
「その言い方、親父みたいで気に食わない」
「ふん。小童が」
「おれが消えそうなときにはいろいろ考えたのに。井出さんは嬉しそうだった」
「…………」
「井出さんは、死ぬのが怖くなかったのか?」
「さぁ。てめぇで考えな」
「言われなくとも」
そう呟くと、隣の影が楽しそうに笑ったような気がした。
影も、よく分からない奴だな。
このときのおれは、そう思うだけだったんだ。
影がどんな思いでおれに言ったのか、知ろうともしないで。
これで最初のお仕事のお話はおしまいになります。次は普通であることに飽いた女の子の話です。亀ペースの更新なので、ご了承願います。




