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初恋は俺へ その初恋は偽り

作者: くりゅ~ぐ
掲載日:2026/03/30


春麗ら 桜が咲き そしてそろそろ散り始める時期。

新学期が始まり、新社会人達の新しい生活が始まるそんな季節。


「ねえねえねえお兄さん。次は何時がバイトなの? ねえねえねえ?」


「次は明後日だね」


「ねえママぁ~、明後日もお店に来たい!」


「もう。美羽ちゃんは本当にお兄さんが好きね」


「うん、みうね、みうね大好き! それにね、ここのケーキ屋さんね、ケーキも美味しいし、クッキーも、それとね、それとね、パンもサンドイッチもね美味しいからね、好き。それにねお兄さんも居るしね、みうねお兄さん大好き! エヘヘ」


美羽ちゃんは今年から年長さんになったんだったな? 二年前この子は俺を見て恋に落ちた。俺を初めて見たこの子は、冗談でも大袈裟でも無く、電流が流されたかの様にビビっとし、その後は固まり、俺の事を穴が空く程ジーっと見て来た。

ああ又か、何時ものやつか。この子もか。俺に恋をしたのか。


それだけ聞けば、俺は自意識過剰な痛い奴だとそう思われるのだろう。だがそれは違う。何故ならその気持ちや思いは、嘘偽り無い本当の気持ちであり、言葉にするならば人はそれを初恋と呼ぶのだろう。


俺が転生したこの世界は、前世とほぼ同じ様な似た世界であり、俺が居た日本と丸々一緒と言って良い程に、ほぼほぼ同じ世界だが少し違うのは、俺には初恋を捧げるかの様に、恋をした事が無い子は俺に恋をする。

幼稚園児や小学生の時はまだ良かった。同い年位の子に想われ、好かれていても、ある程度余裕を持ち接していけば良かったからだ。


とは言え人と言うのは罪深き生き物でもある。だがそれは言い換えれば本能とでも言うのだろうか? 俺がモテる事に嫉妬した奴らが突っ掛かって来たりであったり、自分の好きな子が俺を好きだから、嫉妬心から色々とやったりもされたりと、色々あった。


子供のする事。そう思えばあまり腹も立たないが、鬱陶しいものは鬱陶しい。それに子供のする事と思い何もしなければ、事態はどんどんエスカレートして行く。世間ではそれをイジメと言う。

なのできっちり反撃し、二度と突っ掛かって来ないように、そして俺には勝てないと思わせ、逆らわない様に教育した。

俺が前世持ちだと知ってる奴がいれば俺の事を大人げない、とそう思われるだろうが、それらの悪意を黙って受け入れれば、俺の穏やかな人生が乱されるし、何より俺がそれらの悪意を黙って受け入れなければならない理由はない。

だが今にして思えばだが、俺に悪意を持ち接して来た奴等は、俺がやらずとも報いを受けていただろう。何故なら俺の事が好きな女子達にかなり詰められ、責められていたのだから。


女は怒らせたらいけない。ましてや集団となった女子達を怒らせる等、どれだけ恐ろしい目に合うか。奴等はそれを身を持って知る事になったのだから。


そしてそんなこんなで俺はこの世界で生きて来たが、小学校高学年位から少しずつ歪みが出て来た。それは俺がこの世界に転生した時に得た力、能力とでも言えば良いのか、恋をした事が無い子は俺に恋をする。つまり初恋を捧げるかの様に俺に恋をする。


小学校も高学年位になれば、初恋など済ませている子は多い。だが俺が年を取り、年齢が上がって行くにつれ、俺に恋をする子は俺より年下になる子が増えて行く。それでもまだ小学生位までは良かった。だが中学生になり、高校生になって行くにつれ、それは俺に恋をする子の年齢と俺の年齢がかけ離れて行く事でもある。


人に好意を抱かれて嫌な気持ちにはならない。基本的には、だが。

そして俺が歳を重ね、俺に恋をする子達と少しずつ、確実にその子達と歳が離れて行く事でもあり、自分よりも遥かに年下の子に恋をされる事でもある。


異性に恋愛感情を抱かれ、恋をされ好かれる事は、祝福の様な能力だと思われるかも知れないが、俺に言わせればそれは祝福では無く呪いだとしか思えない。


確かに人に好意を持たれるのは良い事だ、それは間違いない。ましてや異性に好意を持たれるのも良い事でもある。基本的にではあるが。

だが俺のこの能力と言っても良い程の力は、祝福とは思えない。どちらかと言えば呪いの(たぐ)いでしかない。


幼稚園、そして小学校の時も俺を取り合い、女の子達は非常にギスギスしていたし、人の嫌な部分、業とも言われる物をこれでもか、と言う程見せつけられ来た。

最も酷かったのが幼稚園や小学校の時であり、それ以降も数こそ減ったが、やはり人の業を見たくも無いのに散々見て来たし、見せつけられる事になる。祝福では無く呪いだと俺が思っても不思議ではないと今でも思う。


だが俺の直接的な周りは少しずつではあるが落ちついて行き、俺に恋した子は中学生の頃は十七人となり、高校生の頃は二人となり、大学生になった今では去年一つ下の十九歳の子が一人だけとなった。今では完全に落ち着き、直接的な俺の周りでは、同い年位の子はここ一年程は居ない。


だが……。


「お兄さん。また明後日来るね。みう来るからね。お兄さんも来てね、絶対だよ」


「うん。病気にならない限り来るよ」


「絶対だよ、絶対来てね。病気になったら嫌だよ。みう来るからね。絶対だよ」


「うん。またね美羽ちゃん」


「わかったー! バイバイお兄さん」


「バイバイ美羽ちゃん」


「ねえ美羽、良いの言わないで?」


「でもぉ……」


どうしたんだろうモジモジして?


「今日は言うんでしょ? お家を出る前にいってたじゃないの?」


「うーん……。あのね、あのね……。あかつきお兄さん……。バイバイ……」


「バイバイまたね」


もしかしてお兄さんでは無く、俺の名前を言いたかったのかな?


「はい、良く言えました。じゃあまた来ようね美羽」


「うん!」


俺の名前を言うのが恥ずかしかったのか。少しくすぐったくはある。でも……。


女の子には優しく。これは前世から思っていたし、転生した今でも思い、実践している事。だから苦ではない。とは言えそれが正しいかは未だに分からない。何故なら余計にその子の初恋を拗らせる事になる気がするから。

とは言え嫌われる様な事をあえてやるのも違うし、人に対する優しさや、思いやりは大事な事でもある。だから俺の今のこの接し方は、良いか悪いかの判断が未だにつかない。人生を繰り返しても中々その辺りが上手くやれないが、俺がまだまだ未熟な人間って事なんだろうと実感する。


(あかつき)君相変わらずモテモテね」


「そうですね、小さい子限定ですけど」


「それでも大した物よ。ところで暁君、シフトを増やすって話だけど大丈夫なの? 家庭教師のバイトもあるでしょ?」


「新学期になって、大学に入学した学生がこの時期は増えるので、その分枠が減るんですよ」


「そっか、そう言えば去年もそうだったわね。分かった、了解よ。私としては、凄く助かるから大歓迎よ。暁君働き者だし、暁君が来てる時って売上が良くなるしね。じゃそうするね」


ぶっちゃけ家庭教師の方が遥かに稼げる。だけど俺のこの〝能力〟により色々と問題が出てしまう。

俺に恋をする子が続出し、仕事にならなくなる。

俺はあくまで仕事として、家庭教師として一線を引き教えていても、俺に恋をする子達が勉強に手がつかなくなり、その子の親達から申し訳なさそうにクレームが入るらしい。

なら男の子限定でと、派遣会社はそう思い、男の子を教えていたが、その子の姉妹等が今度は……。となってしまう。

そのせいで行ける所が限定されてしまい、あまり入る事が出来ていない。

クビにはなっていないが、それは俺がきっちり一線を引き、家庭教師として教える事は教え、その上で俺に教えられた子の成績も上がっているからでもある。

そして我が子の成績が上がっているのを、その親達も分かっており、その上で俺が子供との距離も、教師と生徒の線引きをきっちりし、接しているのをその子の親達も見ているからだ。

だからその子の親達も申し訳なさそうに、そして惜しそうに会社に言って来るらしい。そう会社からは聞いている。


会社としても、俺は国立大のトップに在学しており、教え方も良く、恋愛問題は抜きにして考えてると、非常に評判は良い。なので手放したくは無いと言っている。

この様な事があると俺の能力、もしくは力と言うのは、やはり祝福では無く呪いだと改めてそう思う。

本当はもっと家庭教師の仕事はしたいが、初恋を得る呪いのせいであまり出来ない。


この初恋を得る力が呪いであるなら、反面祝福だと言える物も俺は転生して得た。

それは学力がそうだ。前世では可もなく不可もなくの学力であったが、今は非常に勉強が出来る子になり、世間ではギフテッドと言われる物を持って生まれた。

ギフテッドは、学業に関してのギフト持ちが世間一般の思うところだが、実はギフテッドとは多岐にわたる才能持ちで、学業に関してだけでは無いのだが、俺は世間一般が認識する、お勉強に関してのギフト持ちとして転生出来た。それに関しては感謝だ。おかげでこの人生では、学校生活がずいぶん楽に過ごせたのだから。


もし神が居るのなら、祝福と呪いを等しく与え、バランスを取ったのかも知れない。

それにしては呪いの比率が大きく、バランスが悪い気がする。


俺は未だに誰かの事を想っても、そして相手も俺を想ってくれて結ばれたとしても、もしかして初恋なのでは? と、そう思うと踏み出せなくなってしまっている。


この年になり、相手も同じ位の歳であったとしても、そう思うと……。

俺と同じ、この年になる相手が俺が初恋の訳が無い、そう思ってはいるが、初恋の呪いでは無いと言い切れない。そんなバカな事を思えば躊躇ってしまう。


その恋心は偽り。初恋の呪い。そんな事が頭をよぎって、一歩踏み出せない。


相手が二十歳を越え、今までに誰かを好きになっていたとしても、その恋が実は本当に好きでは無く、好きだと思い込んでいただけで、好きだったとそう勘違いしていただけなら、もしそうならどうなるのだろうか? その子は俺に恋を、初恋をするのではないのか? そんな事も考えてしまう。


俺には何故こんな力を与えられたのだろう? そして何故、この力が分かってしまっているのだろうか?

誰かに教えられた訳でも無い。だが何故かこれが与えられた特別な力だと認識し、理解し、知っている。

知らなければ、もしそうならこれは呪いでは無く、祝福として受け入れる事が出来たのだろうか? 答えは未だに出ない。


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